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チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35
バイオリン独奏:ジャニーヌ・ヤンセン
指揮:パーボ・ヤルヴィ
演奏:パリ管弦楽団   
録画:2015年1月26日  演奏時間:35分23秒

交響曲第1番「冬の日の幻想」(作品13)を発表してから、12年経ち、チャイコフスキーは38歳になっていました。
この年、モスクワ音楽院を辞職し、約10年間の、フィレンツェやパリ・ナポリなどヨーロッパ周辺を転々とする生活に入ります。

富豪の未亡人ナジェジダ・フォン・メックからの資金援助を受け始めたり、トルストイなど、時の教養人たちとの交流が始まっていたとはいえ、37歳で結婚したアントニナ・イワノヴナとの結婚生活は悲惨なものであったらしく、わずか6週間で完全に終わりを迎えた共同生活の苦悩は、チャイコフスキーをしてモスクワ川で自殺を図らせます。

音楽院で教鞭をとり始めた年に発病した「鬱病」にも悩みつつ、異郷での単身生活に救いを求めた日々が続いていたのでしょう。

そんな折、ジュネーブ湖畔の彼を訪ねてきた、エドゥアール・ラロの
「スペイン交響曲」に刺激を受け、少しばかり作曲への意欲を書きたてられた彼が作曲したのが「バイオリン協奏曲 ニ長調」。

同じ年1878年に発表されたブラームスのヴァイオリン協奏曲と並び、重音
奏法など、超絶技巧をヴァイオリニストに要求する難曲です。

当時、大きな盛り上がりを見せていた国民楽派の音楽に非常に似た、
民族的色彩の濃い、ロシアン・アダージョに満ちた曲。
現在では、4大ヴァイオリン協奏曲の一つとして愛される名曲です。

チャイコフスキーの心にのしかかった苦悩は、さらに10年を経過して、
1891年、51歳になり、バレエ『くるみ割り人形』を持ってアメリカに旅し、カーネギー・ホールのこけら落としに出演する頃まで続いたと思われます。

本日ご紹介するのは、パリ管弦楽団をパーボ・ヤルヴィさんが指揮し、
オランダ出身の円熟のバイオリニスト、ジャニーヌ・ヤンセンさんを
独奏者に迎えて演奏されたものです。

ちなみに、ヤンセンさんのご愛用のバイオリンは、1727年製のストラディヴァリウスで、愛称:Barrere(バレール) とのこと。

良い音色がいたします! 

第3楽章に差し掛かり、ヤンセンさんの奥に座るバイオリンパートの
お三方が、なんとも楽しそうに、”Nice Performance!”とでも目配せ
しながら伴奏されているのが印象的です。

見事で、息もピッタリの演奏です。お楽しみの程を!

⇒ 続いて、ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23 へ参りたいと
  存じます。


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