私と父は周りから見れば已己巳己らしいが、とてもそうは思えなかった。

母が「あんたは本当にお父さんに似とる」とため息をつくたび私は憤った。父は頑固で気が早くわがままで全然似てないしどこを見ているのだ、と反論する私に、母はそういうところ、と笑うのだった。

父と私は、特に旅行になると、己とＳのように真反対であった。

父は食べるのが大好きで、旅先の名物を一つも食い逃すまいと「行き先＋名店」でひたすら検索していた。一方私はＢ級スポットが好きで、旅先の変わり種を一つも見逃すまいと「行き先＋面白」でひたすら検索していた。

家族で長野県の松本に行った時も、父と私は決裂した。父は蕎麦の名店を巡りたがり、私は世界中の「秤」を集めた博物館に行きたがった。決断は早かった。

おのおの別行動、16時に集合。

母はいつの間にか、別行動が決まった途端に私と父が一目散に走り出す様子を動画に撮っていて、やっぱり似ている、と笑うのだった。