月のない夜に

「Fly me to the moon
Let me play among the stars…」

「またそれ?しかも同じとこばっかり何回も何回も…」

ため息と共に、私は少し呆れ気味に言う。

「だってこの先知らないんだもん」

彼女は不貞腐れたように言う。

私を月に連れていって。意味を知って歌っているのだろうか。


『自分が汚く思えて無価値に思えて仕方なくなったら、空とか宇宙とか星とかそういうこと考えちゃだめ。だって上を向かないといけなくなるじゃない。明るく眩しい手の届かないものに手を伸ばしても虚しいだけよ。私は海を思い浮かべるの。自分の身体をどんどん沈めていくの。周りが真っ暗で、もう光も届かない。ここが一番深いところかなって思って止まるんだけど、すぐ底ではないことに気づくのね。それに、こんなところで生きているものがいるなんて思わないじゃない。でも、いるの。どこまで降りて行っても。姿を変え形を変えて。』

ねえ、私達みたいでしょ?彼女はそういって笑った。


今日はどこまで行こうか。

私達の旅は続く。


最後まで読んでいただけたこと、本当に嬉しいです。 ありがとうございます。