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#14 ブームについて考える

日本人はブームを作ることが非常に上手です。それはマスコミが作る戦略的なものだったり、世間がつくる自然発生的なものだったり。しかし、ことスポーツにおいてブームが文化にならないパターンは多く見られます。
はたして、スポーツにおいて、ブームとは何か。ブームが起きた時、そしてその後にどんなことが必要なのか。スポーツが文化となるためにブームとの付き合い方を考えます。


ブームと文化の違い

そもそも、ブームと文化はどこが違うのか。
ブームの意味を改めて調べると、

ある物が一時的に盛んになること。急に熱狂的な人気の対象となること。
急に需要が増して価格が急騰すること。にわか景気。

とあります。つまり「急に」ということがポイントですね。

そして、文化とは。

人間の生活様式の全体。人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体。

いきなり難しいですね。もう少し簡単に言うと、

人間が形成している生活全ての事。

んー改めて調べると文化の解釈は本当に難しいです。つまり、生活に根付いたものや、一部になりうるもの。
例えば日本でいうと、お米を食べることだったり、毎年開催される祭りだったり。
特別なものではなくて、当たり前に存在するもの、とも言えますね。

ともかく、ブームとは対極にあるものが文化という感じです。
例えばこれを頭に入れて、
「サッカーブーム」と、「サッカー文化」と聞いたとき、全く別の意味で聞こえてくると思います。


ブームが文化になった事例

日本人はブームを巻き起こすのが本当にうまい。そしてそのブームが文化として根付いた例も多々あります。

例えば音楽フェス。
フジロックくらいだったフェスが、いまではたくさんの地域で開催され、若者を中心に「夏といえばフェス」という文化が根付きつつあります。
スポーツでいうと、夏の甲子園。
これまた夏の話題ですが、夏=甲子園というイメージを沢山の人が共有しています。

これらの共通点は長く続けること、そしてコンセプトが揺るがないことなどがあると思いますが、やはり大事なのは、「ブームでは終わらせない」という信念があるかどうか、という点でしょう。


そのプロモーションに愛はあるか

スポーツに関していえば、ブームは起こしやすい分野ともいえます。
大きな大会で、注目選手がいる。実力もそこそこで、良い成績を残せそう。
これだけのコンテンツが揃えば、あとはプロモーションのプロに任せればいいのです。
しかし、ここで大きな問題が。

そのプロモーションに、愛はあるのか?という点。
スポーツに対して、その競技に対して愛はあるのか。視聴率や、売り上げは大事です。しかし、愛が先にあってこその視聴率や売り上げでなければ、それはきっとブームで終わります。
申し訳ないんですが、そう感じてしまうプロモーションがスポーツには多い。
そこに、「ブームを起こそう」で終わるのか、「文化にしよう」で終わるのかの分岐点があるように思えてなりません。

例えばJリーグは開幕当初、選手をまるでタレントのようにプロモーションし、選手の一部もそれによって勘違いをしていたように見えました。結果、ブームは去り、残されたのはサッカーという競技だけ。そこからJリーグは変わっていった気がします。いや、変わったのではなく、そもそもの姿に戻っていった。地域との関係を深め、よりサッカーが、よりクラブが地域から愛される施策を打ち出した。マスコミがブーム終焉で離れていったので、余計な声もなくなり、とてもスマートな姿になりました。そして現在はブーム時の爆発力はなくても、着実に地域との関係を各クラブが築き上げ、日本プロスポーツ界の新たな文化になりつつあります。

スポーツや競技に愛があれば、そんな見せ方はしない、そんな伝え方はしない、といった報道やプロモーションは文化を生まない。それどころか、ブームはやがて去ります。その去ったあとまで、責任を持ってはくれない。だからこそ、ブームには愛が必要なのだと思います。


ブームは悪ではなく味方

なんだかブームは悪いことのように書いてしまいましたが、決してそうではないのです。
もともとは全てはマイナーな競技からスタートし、認知され、メジャーになっていく。
文化になるためにはまずこの過程を踏まなければいけないわけで、マイナーからメジャーへのジャンプに最も効果的なのはブームを巻き起こすことです。
先に書いたJリーグの例でも、もちろん最初は競技にあまり関係のない所で巻き起こってしまったブームかもしれません。でも、そこで獲得したファンの何パーセントが、後にサポーターとなり、今でもJを支えていることを考えると、決して無駄なブームではなかったはずです。
また、わたしはラグビーに対してあまり詳しくなかった。それでも、先の五郎丸ブーム時に、ルールを覚えました。選手のこと、チーム、競技のこと。そうやってブームは知る機会、知りたい動機付けにはうってつけなのです。

だからブームとうまく付き合う事、
もっと言えば、ブームが去ったあと、どう対応するか、が大事だと思います。
ブームで獲得したファンを、今度は本物のファンに変えていく施策がないと、それこそブームで終わってしまいます。


伝える側の意識も大事

とはいえ、競技団体だけが意識を高く持っていても駄目で、伝える側、マスコミ関係者の意識も重要になってきます。
いや、むしろ、こっちのほうが問題だとわたしは思っています。

例えば、現在行われいるW杯のテレビ放送に関して、元サッカー日本代表の解説者がこんな事を言っていました。

CS放送と民放では視聴者のサッカーリテラシーが違う。だからCSではより深い話を、民放では、よりわかりやすい話をするように使い分けている。でも民放で「イケメン選手特集」みたいな企画をされた時は、それはどうなんだろう、と。もっと伝えられることがあるんじゃないかと思った。

一語一句あってはいないですが、こんなことを言っていたのを聞いて、そうだよなぁと。
W杯にはもっと沢山の魅力があり、たとえサッカーを知らないライト層であっても、サッカーとは全く関係のない「イケメン」というコンテンツで興味を引くのかと。
もちろん入り口はさまざまで、イケメンから興味を持ってくれてもいいと思います。ただし、その人が4年後、自然とW杯を見てくれるのか、そこは疑問です。
わたしの周りにはサッカーにあまり興味がなかった人でも、日本対ベルギーを見て、「感動した、悔しかった、サッカーって面白い!」という感想を聞きました。
サッカーという競技そのものに魅力は沢山あります。イケメン特集があってもいいとは思いますが、それはサッカーじゃなくてもいいコンテンツだと思います。仮にイケメンだとしても、凄いフリーキックを蹴る、代表キャプテン、で、ついでにイケメン、くらいな感じです。

女性視聴者を獲得するための施策なんでしょうが、あまりにも知恵を絞らなすぎではないかと思ってしまいます。
W杯は既にブランドが確立された大会です。
だからまだいいかなと思いますが、これがこれからメジャーになりたい!と思っているマイナースポーツだとしたら、競技の魅力など、微塵も伝わらないでしょう。致命傷です。


ブームの先を考える

最初に書いたとおり、日本人はブームが大好きだし、起こすのが上手です。
SNSが発達した現在、スピードも早くなりました。
スポーツは本質が伝わってこそのコンテンツです。そこに魅力を感じた人がファンとして根付いていくと思うのです。
ただし、最初はみんなライト層だし、ミーハーだったはず。そういった層を巻き込む時、ブームは最大級の威力を発揮します。
しかしそれで終わってしまっては、打ち上げ花火と同じ。消えて無くなります。
問題はその後、どうするのか。

スポーツが文化になるための、ブームとのうまい付き合い方のポイント。

それは、ブームが去ったあとを考える事にあるのかもしれません。

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