見出し画像

#11 観客動員数を考える

第10回から、かなり間があいてしまいました。

10回目というキリのいい回を終えて、なんだか落ち着いてしまっていました。
そんな中、スタジアムなどの現場に行ったり、色々な人からのお話を聞いたりして、いやいや、まだまだスポーツが文化になるために考えたい事は山ほどあるぞ、と思いまして。
というわけで、この連載もシレっと再開です。「スポーツを考える人 第2章」のスタートです。

再開一発目は、観客動員数について。

観客動員数とは、その競技を観戦に訪れた人たちの人数。つまりお客さんの数。
競技団体によって公開する人数の制度やレベルに差があったりします。
その昔は動員数を水増ししたことが事件にもなったりしましたね。
では、何故そんな事件が起きるのか。
理由は様々ですが、ひとつはスポンサーにいいカッコしたいという事が考えられます。
「ウチのチームは、こんなに人気あるんですよ。ね、価値あるでしょ?」
といういいカッコしいですね。他にもリーグ規定に引っかかりたくないから、とか、ファンにいいカッコしたいから、とか、様々でしょう。
そんなこともあってJリーグは人数を結構細かく提示しています。

観客動員数がもたらす事

それにしても、この観客動員数ってどこまで信用していいんでしょうか。そして、観客動員数はチームの何を表す指数なんでしょうか。

例えば埼スタでサッカー日本代表の試合があって、メディアに6万大観衆と書かれていたとします。それを見て我々はどう思うか。

「すごい人気だね〜」とか、大体こんな具合でしょうか。
6万くれば、サッカー協会としては大満足。
スポンサーさんたちにも面目躍如でしょう。
ここで見えてくるのは、観客動員数=売上げという図式。招待券などの客を差し引いたとして、一試合における売上げが観客動員数からなんとなく試算できる。
つまり、観客動員数とは、チームが一試合でどれだけ売上げてるかがなーんとなくわかる数字、という感じな気がします。
売上げの内訳はグッズなどもあるわけで、なーんとなくわかる、ということです。
ほかの効果として、毎試合多くのお客さんが来ているチームは、それだけ多くの人にリーチするチャンスがある、ということで、スポンサーにとってもメリットは大きい。
閑古鳥がないているチームとどっちがスポンサーがつきやすいか。つまり観客動員数は営業面でも影響がある数字ともいえます。


観客動員数と熱狂度

しかし、動員数でネックになるのがハコとなるスタジアムの大きさです。
埼スタは6万入るけど、どんだけ頑張っても2万人しか入らないスタジアムだってあります。
そうなったら小さなスタジアムしかないチームは負けなのか。これは全然違うと思います。

観客動員数とは別に満員率という考え方があります。キャパに対してどれだけの割合の席が埋まっているかという指数です。

参考記事としてJ1の2016シーズン満員率を調べたものがありましたので、引用させていただきます。

満員率の一位は、ジュビロ。
ジュビロのホームの収容人数は約15000人。埼スタの半分以下です。対して埼スタをホームにもつレッズはというと9位。
これをどう見るか。おそらく観客動員数でみたらレッズのほうが上です。
しかし、そのスタジアムがどれだけ盛り上がっているか、というと話は別な気がします。
人数はいるのにスカスカなスタジアムと、人数は少なくても毎試合パンパンになったスタジアム。仮にテレビ放送されていたとしても、絵的にはパンパンに膨れ上がったスタジアムのほうがいい印象ですよね。
「盛り上がってんねー!」と。

こういう感覚って、熱狂度といってもいいかもしれません。
例えばミュージシャンで「でかい所でやるよりも、ライブハウスが好きだ」なんていう人ってたまにいますけど、あれもつまりは、人数ではなく熱狂度を求めてるのでは、と。
つまり、観客動員数ではわからない、スタジアムの熱狂度をはかるとしたら、満員率のほうが断然、重要だと思うのです。


多けりゃいいってものではない

実は観客動員数って、我々エンドユーザーにとっては、あまり意味もないんですね。
先にも書いたとおり、観客動員数が意味するもの、効果を発揮する場面は、営業面なんです。

でも、人数的にはそんなに多くなくても、毎回、満員率=熱狂度が高いチームの方が魅力と感じるスポンサーもいるはずです。

そういう意味では、段々と観客動員数よりも、満員率が重視されている気がします。

例えば6万大観衆、といわれても、そのスタジアムが10万人収容だとしたら、結構スカスカだね、という印象になるのです。

更にいうと、満員率が高いということはリピーターを確実に獲得していることになります。初めてくる人もいるでしょうが、スポーツの場合、観客動員に貢献しているのは大半がリピーターです。これも、かなり重要です。なぜなら、スタジアムを盛り上げるのは、彼らリピーターだからです。初めての人は盛り上がり方も知らない。リピーターはその辺を熟知しています。満員率=熱狂度という意味はここにあります。
つまり盛り上がり度の高い2万人と、盛り上がりを知らない6万人だとしたら、スタジアムが醸す熱狂的な雰囲気は断然前者だし、それがまたリピーターを産むわけです。多ければいい、ということではないのです。


数で全ては測れない

おそらく理想は6万人のスタジアムが6万人で埋まることです。
営業面でも文句無し。

しかし。最後にこの動画を。

Bリーグ 栃木ブレックスの試合。

ブレックスのホーム、ブレックスアリーナ宇都宮での試合。

ブレックスアリーナの収容人数は、
2900人。

6万人に負けていない。

スポーツが文化となるには、観客動員数というものがもつ価値というものを、チームの運営側も、ファンもメディアも再確認する必要があるのかもしれません。


「スポーツを考える人」バックナンバー

#コラム #スポーツ #観客動員数 #満員率 #スポーツビジネス #スポーツマーケティング #スポーツを文化に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?