#06 地域密着を考える

スポーツが日本の文化として根付くために、
どんなことが必要か、考えてきましたが、
その前に、地域に文化として根付くために必要なことを考えなければ、と思いました。
ということで、今回のテーマは地域密着について。
最近よく耳にする地域密着。
はたして、それはどんなものなのか。考えてみようと思います。

アイデンティティとなる

地域密着が最高潮に達した状態。
それは、そのプロチームが街のアイデンティティとなっている状態をいうのではないでしょうか。

新大阪駅のお土産屋さんには、タイガース関連のお菓子がズラっと並びます。
同じような光景は広島空港でも見かけました。
街を代表するお菓子のなかに、プロチーム関連のものがある。
これこそ、地域のアイデンティティと化している証拠です。

そう考えると、やはり、日本においては、
プロ野球が一歩リードしているように感じます。

同時に後から仲間に加わるチームは苦労するだろうなという事実も感じます。

やはり、広島にはカープがあり、あとから仲間に加わったサンフレッチェは苦労するし、ガンバやセレッソも同じ。
より地域密着をうたっているJリーグのクラブは悔しいでしょうけど、
こればかりは歴史がものをいってしまうと思います。

逆に元々何もなかった地域のチームは、
自分たちがアイデンティティとなれるチャンスが大いにある、ということです。
これから、アイデンティティとなれれば、
自分たちが、阪神や広島になれる、ということ。これはチャンスですよね。

ホームとは

アイデンティティとして、地域密着を果たすということは、時としてチームが大きくなることが弊害となってしまうケースもあります。

例えば、浦和レッズ。

レッズのホームスタジアムは埼玉スタジアムですが、以前は駒場スタジアムを使用していました。
埼玉スタジアムはアジアを代表するサッカー専用スタジアムで、収容人数は約6万人。
たいして、駒場スタジアムは、トラックがあるスタジアムで、収容人数は約2万人。
これだけ聞けば埼スタをホームにしてしまいそうですが、実際どうなのでしょうか。

埼スタは埼玉高速鉄道の浦和美園駅から徒歩20分、バスで約10分ほどでたどり着きます。
道すがらケータリングのトラックが軒を連ね、
試合終了後にはアフターバーがオープン。
なんといってもサッカー専用スタジアムの臨場感が売りでしょう。

一方の駒場スタジアム。
お世辞にも見やすいとはいえないスタンドで、
2万人ほどの収容なのでチケットも取りにくい。

しかし、駒場スタジアムの重要なポイントは、その立地にあると思うのです。

駒場は、浦和駅から徒歩で約20分のところにありますが、その道すがら、サポーターたちは、浦和の商店街を抜けて歩くことになります。
当然、帰りも同じなわけです。
試合終了とともに、浦和サポーターが、街に繰り出し、勝利の美酒を、敗戦の憂さ晴らしを、浦和の街で済ませます。
つまり、周辺の店の売り上げにも多大な貢献をしてきたのです。
店側としても、そうなればレッズを応援したくなる。
ノボリを出したり、ポスターを貼ってアピールします。
すると、街全体が赤くなるわけです。
どちらにとっても幸せな地域密着がそこにはありました。

それが今、試合後、浦和の街に行く人は減り、
人々の意識は、
浦和のレッズ、から、浦和美園のレッズへと、変わってしまう恐れがあるのです。

浦和駅と浦和美園駅は30分でいける距離にありますが、やはり浦和の人々にとって、駒場は大切なホームスタジアムで、駒場開催がもたらす街への貢献は大きいのです。

確かにチケット売り上げは、埼スタのキャパに比べれば駒場は少ない。
しかし、埼スタがフルハウスになる試合は少なくなっています。
全ての試合を埼スタで開催するのではなく、
何試合かは駒場で開催しても良いのではと思うのです。

それこそが、決して浦和の街を忘れない、というメッセージにもなると思いますし、
アイデンティティを継続していくために、必要なことだと思います。

最近は、スタジアムを試合以外でどう活用するかや、スタジアムでのサービスなどが、
色々なところで議論されています。
もちろんそれらも大事です。
しかし、真の地域密着を目指すためには、
スタジアムだけではなく、
その周辺の街にも目を向けなければならないと思います。
ホームスタジアムは、やはり、
ホームタウンがあってこそ、だと思うのです。

街と共に

俺たちの街のチームだから、応援する。
ファン個人はそんなところにアイデンティティを感じ、自分とチームを結びつけるでしょう。

しかし、街がチームを応援しなければ、
街とチームがつながらなければ、
本物の地域密着を果たしているとは言えないのではないでしょうか。

チームが街を置いてけぼりにするような、
そんな状態は、あまり良くない。
常に街と共にあるチーム。
街を助け、街に助けられるチーム。
そして、街のシンボルとなるチーム。

それが達成できるために、
どんな努力が必要か。

発展や拡大に目が行き過ぎると、
大事な何かを忘れてしまうかもしれません。

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