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今週のリフレクション【罰ゲーム化する管理職(小林祐児氏)】

今週は小林祐児さん著「罰ゲーム化する管理職」を振り返ります。ざっくり3点で要約すると・・

1.管理職の役割は、①情報、②仕事、③人、④ルールのコントロール。管理職になるとは、自らの仕事人生を贈与する者として位置づけなおすこと。しかし、管理職の52.5%は業務量の増加を感じ、部下マネジメントの負担感に加え、評価・トラブル対応が心理的負担、はみ出し仕事のフォローアップが業務量的負担を上げている。その背景には、リソース不足の上に、部下マネジメントの困難やダイバーシティ対応などの新しい組織課題がのりかかっている構造がある。加えて、組織フラット化で管理職ポストの減少し、管理職と一般職の賃金差の減少。結果、優秀な若手が辞めていき、日本では、一般職より管理職のほうが死亡率が高い。

2.こういった管理職の罰ゲーム化の背景には、①経済の長期停滞と人手不足、②成果主義とフラット化によるプレイング・マネジャー化、③ダイバーシティとハラスメントがある。働き方改革が労働時間管理の対象であるメンバー層に限定したけとも、管理職の負荷が上昇につながった。①人事の個別対処ループ、②現場のマネジメントループ、③管理職人材不足ループが回り続け、次々とバグを生んで管理職の負荷が上がり続けている。日本の昇進はオプトアウト方式。管理職はジョブではないため、市場価値が低下する。そして、役職定年や早期退職で強制的に降ろされる。世代間の相互対話がないため、問題が放置されている。

3.管理職の罰ゲーム化を修正するには4つのアプローチがある。①フォロワーシップ・アプローチ。中堅以上のメンバー層へのピープル・マネジメントのトレーニング。脱リーダーシップ偏重。②ワークシェアリング・アプローチ。エンパワーメントとデリゲーション。ベースとなるのはポスト増設と働き方改革のアップデート。③ネットワーク・アプローチ。タテ、ヨコ、社外のネットワークを構築。自発性を発揮するスキマをデザイン。④キャリア・アプローチ。健全なえこひいき(早期抜擢)と専門領域の管理職ポスト。マネジメントスキルが足りないという筋トレ発想は罠。増えていく研修が負担になり、管理職へのハードルがますます高くなっていく。

人材育成の仕事をしていると、「マネージャーの育成をしたい」という要望によく出会います。経営レイヤーの視座がない、メンバーを育成しようとするマインドがない、プレイヤーの延長で仕事をしている等々。そんな課題感から「研修をやりたい」という声につながります。

確かに、プレイヤーとマネージャーにはモードチェンジが必要で、パラダイムを変換する必要があります。その意味で、マネージャーになるタイミングで研修をすることには意味があると思います。では、先程の課題はマネージャーの役割を知らないことが原因なのでしょうか?恐らく、多くの場合は違うと思います。

では、なぜ先程のような課題が表出してしまうのか。それは、書籍に書かれているような構造の問題です。マネージャー個人による属人的な問題ではなく、社会や組織の構造が根本的が問題になっています。その状態で個人にスポットを当てた研修をしても、残念ながらほとんど効果はありません。

研修は多くの場合、足し算です。新しい知識やスキルや心構えをインプットして積み上げます。しかし、同時に引き算も必要です。新しい行動を始めるためには、何かを減らさないと。その引き算を個人に求めることもできますが、限界があります。組織として、引き算をすることが必要です。これが、研修とその他の人事施策を並行して推進する意味の1つだと思っています。

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