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「スポーツエージェント」と「キャリアコンサルタント」の視点

自己紹介

はじめまして、ナガタコウタロウと申します。

ナガタの漢字は「長田」なのですが、近頃は「オサダ」が勢力を増していて、昔に比べて「オサダ」と呼ばれることが増えました。「ナガタオサダ論争」です。そのため、いっそのことフルネームを「ナガタコウタロウ」とカタカナ表記にしています。

職業は「スポーツエージェント」です。選手の現役生活をいかにより良くするか、が仕事です。またあわせて「キャリアコンサルタント」「アスリートキャリアコーディネーター」の資格を持っていることから、選手の現役生活を含む「人生」をいかにより良くするかも仕事です。

「スポーツエージェント」はスポーツ人の専門家
「キャリアコンサルタント」はキャリアの専門家

であることから、「スポーツ特化のキャリアデザイン」を専門としています。

アスリートのキャリア

現役生活の目標はまだ話せても、現役引退後の目標は話せない選手たち

スポーツエージェントを始めて10年になります。この10年間で、スポーツ人と呼ばれる人たちと数多く接して来ました。スポーツ人とは、選手以外の指導者やトレーナー、ビジネスサイドの方も含みます。

その中でも、主な仕事対象が「プロアスリート」なので、彼らとは定期的に「どのような現役生活を描きたいか」「現役引退後はどのような人生を歩みたいか」といった目標の話をします。

彼らは、現役生活での目標は「まだ」比較的イメージを持っているようで、よく話をしてもらえます。しかし、現役引退後の生活、いわゆるセカンドキャリアに関しては話ができる選手は本当に限られています。そして、その事実がそのままスポーツ業界全体の問題となっています。

競技以外でしたい事が見つからない

「アスリートのキャリア」の中でも「セカンドキャリア」という言葉は、スポーツ業界の人はよく耳にすると思います。最近では、プロ野球選手の戦力外通告後の進路を追った番組もあるので、スポーツ業界以外の人でも知っているかもしれません。

その番組では、プロ野球選手が所属先からクビ(契約満了)になって、次のキャリアを探す際の苦悩が見られます。

「次の所属先が見つかるのか、見つからなければ現役を引退するのか、現役を引退してから何をするのか、何かをするにしてもしたい事が見つからない。」

現役引退後の人生に悩むこと、困ることを一般的に「アスリートのセカンドキャリア問題」と言います。

キャリア研修をしても、問題は何も解決していないという事実

セカンドキャリア問題の原因の第一位は、
「(自分の)スポーツ以外に関わる機会がなかったし、今もない。」
だと私は考えています。
これは、私以外でもそう考えている人が多いと思います。

原因がわかっているのなら、
「(自分の)スポーツ以外の人と関われば解決するじゃん。」
と単純に思いますよね。
私もそう思っている時期がありました。

その結果、「(セカンド)キャリア研修」として、元アスリートで今セカンドキャリアで活躍している人を講師に招いて話を聞いたり、オフ期間を利用しての一般企業でのインターンシップをスポーツ業界では行うようになりました。

そのような取り組みを始めて、それなりに時間が経ったと思います。どれだけ少なく見積もっても10年はなるのではないでしょうか。でも、一向に問題解決の兆しがありません。少なくとも私はそう感じています。

それらのキャリア研修をしているにも関わらず、解決に向けて何も進展がない理由は色々あると思います。

例えば、
「そもそも選手が研修を求めていない(今じゃない)」
「単発で研修をしても、響くのその時だけで何も残らない」
が挙げられます。

また、
「研修の講師が、本当の意味でアスリートの気持ちを理解していない」
「研修の企画者自身が、スポーツ以外の事を知らない」
もあると思います。

でも私は、キャリア問題が解決しない理由は、もっと根本にあると思っています。そこで私はこのように仮説を立てました。

仮説:
問題が解決しない理由は、解決の手段が悪いわけではなく、問題をそもそも取り違えているからである。

セカンドキャリア問題の「キャリア」とは

セカンドキャリアを分解してみる

「セカンドキャリア」=「セカンド」+「キャリア」に分解されます。

「セカンド」は「二番目の」という意味なので、アスリートの現役生活を「一番目」とした時の「二番目」、つまり現役引退後が「二番目」という意味です。

では、次は「キャリア」についてです。
本当に言いたい事はここからです。

皆さんは、「キャリア」の本当の意味を知っていますか?

「キャリア」とは「人生」そのもの

今では「キャリア」といえば、就職や出世、現在の仕事といった「点」や「結果」を指すことが多いです。しかし、もともと「キャリア(career)」とは中世ラテン語の「車道」「轍」を起源としていることから、人間のこれまでの「継続的な過程」、つまり「人生(生き方)」そのものを指す言葉なのです。

実際に、厚生労働省が提唱しているキャリアの概念は、「時間的持続性ないしは継続性を持った概念」として定義されていて、どこにも「キャリア=仕事」とはありません。これはキャリア論を学んだ方なら、誰もが知っている知識です。

スポーツ界での「キャリア」の意味

もう私の言いたいことを理解している方もいるでしょう。

スポーツ界で問題となっている「セカンドキャリア」の「キャリア」とは、仕事の部分のみを指しています。

セカンドキャリア問題と言う時は、「現役引退後(セカンド)」にどのような「仕事(キャリア)」に就くか。
「指導者になる」「会社に就職する」etc. という話のみに終始しています。

ただ、今話したように「キャリア」とは、何も「仕事」のみを指すものではありません。もっと大きく、その人の「人生」そのものを指すのです。

「セカンドキャリア」と言って、「現役引退後の仕事」の話ばかりしているから何も解決しないのです。「キャリア」を「仕事」としか捉えていないので、いつまでもセカンド問題解決に向けて、ビジネスマンの講演やインターンシップをしているのだと思います。

まとめ :  「キャリア」の本当の意味

「キャリア」とは「人生」のことです。

「人生」の中には当然「仕事」も含まれます。でも、「人生」って「仕事」だけではないですよね?

普段の生活で何に時間を使っているのかを考えると、学生であれば「勉強」が一番かもしれません。社会人だと「仕事」以外に「趣味」だったり、「家庭」だったりするかもしれません。「友人」に時間を使う人もいれば、「健康」に使っているという人もいると思います。

今挙げたものは過去から現在の人生ですが、将来的に家庭を持って、マイホームを買って、子どもが巣立って、老人ホームに入って、どのように死ぬかといった未来のこともあなたの人生です。

そこまでをキャリアとして捉えていない、アスリートのキャリア問題は解決しないでしょう。

言われてみれば「確かになー。」くらいで、特に難しいことは言っていないと思います。ただ、どれだけキャリアについて真剣に取り組んでいるか、学んでいるかが問われています。

「キャリア」の意味を取り違え、仕事としか捉えきれていないので、ほとんどのアスリートは自分の「人生」を考えられていません。

私は、「仕事」より大きな「人生」を考えることから、スポーツキャリアを
デザインしていきます。

その「人生」の考え方は、また別の機会にお話しします。

長田 康太郎(Kotaro Nagata)
・スポーツエージェント(Footrans / フットランス)

 対象:サッカー・野球・ラグビーなど球技を中心にスポーツ全般
   FIFA(国際サッカー連盟)フットボールエージェント
   公益財団法人日本ラグビーフットボール協会登録代理人
   海外野球代理人
・国家資格キャリアコンサルタント
・SCSCアスリートキャリアコーディネーター

・スポーツ人材向けTOEICコーチ
現役のスポーツエージェントとして、Jリーガーをはじめとする様々なスポーツ選手の競技生活をサポート。またキャリアコンサルタントとして、プロアスリートだけではなく、学生アスリートや競技者以外のスポーツ人材のキャリアサポートも行う。
日本5都市(福岡・岡山・愛知・大阪・東京)、海外3カ国(カナダ・オランダ・ドイツ)での生活の中で、会社員(日系・外資系・海外現地法人)、個人事業主(日本・海外)、ワーキングホリデー留学と従来のスポーツエージェント・キャリアコンサルタントには無い、経験の幅を強みとしている。

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