Sports Techスタートアップへの投資トレンド(VRはスポーツ産業をどこまで変えるか?)

SSACレポート第8段の今回はSports Techスタートアップへの投資トレンドである。アメリカではSports Techへの投資は今ホットになっている分野の一つであり、2015年時点で年間10億ドル規模の投資が集まっている(引用元:TechCrunch)。この金額規模はFinTechスタートアップへの投資額15億ドルと近いレベルでその注目度の高さが伺える。

USにおいてSports Techへの投資が急成長している背景には、1)従来スポーツの基幹収入であったTVメディアによる収入が、Streaming放送やコンテンツ産業の多様化によって減少している中、オーディエンスの多く集まるソーシャルやオンラインメディア使ってどうスポーツをマネタイズして行くかという点に危機意識から注目が集まっていること、2)ソーシャルの特徴として話題性のあるコンテンツは勝手にソーシャルシェアによって拡散されて行くので、スポーツという筋書きのないドラマを生むコンテンツはソーシャルメディアやテクノロジーと相性が良いこと、があげられる。

こうしたトレンドの表れとして、最近ではプロスポーツ球団(例えばLosAngels DodgersはDodgers Acceleratorという自前のスタートアップ育成プログラムを提供している)やプロスポーツ選手(元ヤンキースのデレク・ジーター選手はTribuneというスポーツ選手専用のメディアプラットフォームのファウンダーでもあるし、スタートアップ投資も積極的に行なっている)がスポーツテックの直接関わるケースも増えて来ている。日本でも最近ではサッカーの本田選手がスタートアップへのエンジェル投資やサッカーチームへの投資を行って話題になっているが、こうした動きがアメリカではかなり一般的になりつつある。

今回のSSACでもスポーツテックスタートアップへの投資を専門にしているVCやスポーツxVR領域のスタートアップ関係者等が多く登壇していた。その中で興味深かった点をいくつかまとめてみたい。

・これから注目が集まるスポーツテック領域の一つにアスリートのフィジカルデータの取得があげられる。各種センサーの小型化や解析アルゴリズムの発達によりアスリートの練習や試合での動き、トレーニングや睡眠・栄養等のデータ等多くの取得・解析ができるようになって来ているが、アスリートはそのコンディショニングに非常に長けているため、これらのデータ解析は一般人やヘルスケア等の分野への応用が可能な宝の山である。

・スポーツテックは地方創生に役に立つ。普通のIT系のテクノロジースタートアップと違うのは、スポーツはそのコンテンツがある地元に根ざしているケースが強いため、新たなテクノロジーを導入するにしても、コンテンツクリエーターやファンがいるそれぞれの地方都市に赴き、どうしたらより体験が良いものになるか、一緒になって考えて行く必要がある。実際にスポーツテックのスタートアップは必ずしもシリコンバレーではなく、アメリカの地方都市から生まれることも多いのが実情。

・スポーツテックスタートアップにとって初期の資金調達は難しい。なぜならスポーツ自体がMust have(どうしても生活等に必要)なものではないので、まだ顧客から収入が多く上がっていない段階で、コンセプトだけでこのアイディアは確実に行けます、と証明しづらいため。その点、プロスポーツチームと初期にパートナーを組むのは非常に相性が良い。プロスポーツチームは既存のファン顧客を持っているし、選手等からテクノロジーを使ってもらい貴重なフィードバックを得ることもできる。広報が重要なスタートアップにとって、プロスポーツチームと組むことで強い宣伝効果も生み出せるので、こうしたトレンドはどんどん進化して行くと思う。

・VR(Virtual Reality) xスポーツテックスタートアップのトレンド:現在、実際にプロダクトができつつあるVR x スポーツテックのサービスモデルは大きく2種類。1つは、VRを使って自宅のリビングにいながらまるでスタジアムにいるような体験ができるタイプのVR sports streamingサービス。もう1つは、VRを使ってプロ・アマスポーツ選手が実際のプレーのシミュレーションができるVR sports simulationサービス。前者の筆頭スタートアップとしてNextVRLiveLike。後者の筆頭がSTRIVR Labs(日本ではNTT Dataも同様の製品を発表している)というところがある。まずVR sports streamingの方はすでに今年のスーパーボウルでもFox sportsとVRスタートアップが組んでVRデバイスを使ったLiveStreamingサービスを提供していた。私も実際に使ってみたが、360視点で試合が観戦でき、また自由視点(見たいカメラ位置を自分で指定して試合を見ることができる)なので、今までにないよりImmersiveな体験ができる点はよりスポーツ視聴をexcitingにするものになり得ると感じた。

VR sports streamingの課題としては、ソーシャルインタラクションの創出方法とコンテンツクリエーションの2点。ソーシャルインタラクションについては、要はスポーツを視聴している人は、友人や家族と色々と話をしながら見るのが楽しい、という観点で、今のVRデバイスではそう行ったインタラクションが難しい。例えばVRの世界の中にバーチャルなアバターを登場させられるようにして、そこで友人や家族と(物理的にはリモートにいても)同じスポーツの映像を見ながらインタラクとできるようになると面白い、ということで、実際にLiveLikeはそうしたサービスを開発中とのこと。コンテンツクリエーションの方は、要は今までのスポーツ放送のカメラは二次元の端末で試合を観戦することを前提とした二次元の動画をカメラで撮っていたので、VRのように360°での視聴が可能となると根本的なカメラの機能(360°対応)やカメラの設置位置(例えばバスケットのゴールの下や野球のフィールドの中等、より臨場感が増すカメラ位置)等を根本的に変える必要がある。こうすることで2Dのデバイスでは得られなかった、より臨場感のある面白いコンテンツを提供できるようになる。ここは360°対応のデバイスの普及が先か、コンテンツへの投資が先かChicken and Eggなところはあるが、コンテンツクリエーター側も徐々にこうしたことをテストしつつある点はポジティブ。

(画像引用元:LiveLikeVR

VR sports simulationについては、現在進んでいるのはアメリカンフットボールと野球。アメリカンフットボールは激しいコンタクトスポーツでそもそも練習で怪我をする可能性もある中、シミュレーションソフトを使って試合の状況判断を(怪我するリスクゼロで)練習できるのは非常に重宝されているポイント。あとはアメフトのように一旦皆が止まった状態からプレーが動き始めるのもVRシミュレーションと相性が良い。野球の打者が投球をシミュレーションでトレーニングするのも同様。バスケットやサッカーは常に動きのあるスポーツなので、現時点のVR技術ではシミュレーションを正確にするのが難しいが、例えばPKの練習には使いやすい。VRシミュレーションのメリットとしては、練習中の怪我のリスク低減の他にも、同じ状況を繰り返し練習できること、同じ映像を複数の人間で共有できるので、コーチからのフィードバック等もしやすいこと等が挙げられる。実際にNFLやMLB、さらには大学のフットボールチームがすでにSTRI VRの商品を使い始めており、反応も上々とのこと。

(画像引用元:STRI VR Labs


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SatoshiYamada

MIT SSAC訪問レポート

全米最大のSports Analytics Conferenceである、MIT Sloan Sports Analytics Conference 2017の訪問レポートです。Sports x Techに興味のある人に是非見て頂ければと思っています!
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