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刹那のピエール・エテックス / 〈特集上映:ピエール・エテックス レトロスペクティブ〉

皆さまこんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。

私はと言いますと、3年秋学期の期末試験に全力投球をしていたのも過去のお話。

全レポートを提出し、残すは試験ラスト1つというところで完全燃え尽き、全く試験勉強が手に付かなくなってしまいました。ので、諦めて本文のタイピングに勤しんでいる今日この頃です。
(いや、諦めるなよ。)(はいスミマセン、明朝早起きします。)

ということで、依然、試験期間中のわたくしではございますが、テスト勉強はさて置き、今月中頃にシアター・イメージフォーラムにて鑑賞した〈特集上映:ピエール・エテックス レトロスペクティブ〉について綴りたいと思います。





私が本特集上映で鑑賞したのは、2上映4作品でした。

以下がタイトルになります。
・『破局』(1961)
・『恋する男』(1962)
・『幸福な結婚記念日』(1962)
・『大恋愛』(1969)

2023年1月 マチルダ撮影


ピエール・エテックス、みなさんはご存知だったでしょうか。
私は、今回の特集上映のプロモーションを目にしたとき、初めて彼の存在を知りました。


1928年、フランスに生まれたエテックスは、ジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇』(この作品はなんとも秀逸な作品ですよね。)に感銘を受け、タチに芸の助言を求めたのがきっかけで『ぼくの伯父さん』の製図家、アシスタントを務めることになったそう。

今回私が鑑賞した、短編2作目の『幸福な結婚記念日』ではアカデミー賞最優秀短編実写映画賞を受賞しました。また、監督としての活躍を見せながら、役者としてもとしてもブレッソン『スリ』やルイ・マルの『パリの大泥棒』、フェリーニの『フェリーニの道化師』、大島渚の『マックス、モン・アムール』、アキ・カウリスマキの『ル・アーヴルの靴みがき』などに出演しています。

いやぁ、恐ろしいほどのビッグネーム達が陳列されていますね…。大島渚を除いて、私の好きな映画作家のオンパレードです。

大島渚作品に関しては、『戦場のメリークリスマス』は日本映画においても大切な1作だと私も思います。とても好きな作品です。しかしながら『愛のコリーダ』のトラウマが…。

おっと話が逸れてしまいました。戻りましょう。



映画監督、俳優、イラストレーター、道化師など、幾多の顔をもつマルチアーティスト ピエール・エテックス。
アメリカの映画人 ジュリー・ルイスはこのような言葉を残しました。

「私は人生で2度"天才"という言葉の意味を理解した。1度目は辞書でその意味を調べたとき、2度目はピエール・エテックスに出会ったときだ。」

ジュリー・ルイス

今回初めてエテックス映画を鑑賞した私は、この言葉に大きく頷かずにはいられませんでした。




エテックスの作品は、サイレントか、サイレントに近いほど言葉数の少ない映画です。そして、エテックス演じる主人公の男はいつも、不器用が不器用を呼び、不運が不運を呼ぶという運命にあります。

しかし、その姿を捉えた映像はとても上質で、気品があり、美しい。私たちの目は、心は、スクリーンに掴まれて離れることが出来ません。


私が最も気に入った作品は、彼の監督デビュー作
『破局(RUPTURE)』(1961)でした。
12分間の短編で、タチを介して出会ったエテックスとカリエールによる作品です。

ストーリーを大まかにご説明いたしますと、
ある日、男は恋人から別れを告げる手紙を受け取りました。するとその中には、真っ二つに引き裂かれた自分の写真が入っているではありませんか。「そっちがその気ならこっちもその気だ」と言わんばかりに、返信の手紙を書こうとする男でしたが、PTAの『マグノリア』の空から降ってくるカエルばりに、あれやこれやと大量の小さな障害にぶち当たります。
そして極め付けはラストシーン。あっさりと、ロメール映画に出てくる細身のデニムを履いた男達のように本当にあっさりと、窓枠から消え去ります。


私はこれに、なんだか心を軽くしてもらった気がします。
小さな落とし穴に、一つも漏らすことなくズブズブとハマっていく男の姿に、私たちは「ふふっ」と笑ってしまいます。人が笑えるぐらいの小さな不幸の連鎖。しかし、そんな作品の終末には”死”がありました。


"死"とは、生きとし生けるものにとって何よりも大切なものなのかも知れません。しかし、私たちは今生きています。

大切なのは、"死"を避けることでは無く、"生"を歩むことなのではないでしょうか。物事を、どんな時も深くシリアスに考えなくたっていいではありませんか。

ただ面白ければいい。ただ人生を楽しめばいい。

エテックスの映画が、そう言っているように感じられました。






今回はこんなところにいたします。
最後まで読んでくれた方がいらっしゃいましたら、車道を走るベッドの上で共に眠りたいほど嬉しいです。

ありがとうございました。


【参考】



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