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佐藤泰志原作 映画「そこのみて光輝く」

 インディーズ作家を応援する月刊「群雛」8月号に不遇の作家、佐藤泰志について書いた。インディーズムーブメント、セルフパブリッシングという文脈から作家 佐藤泰志をとらえてみたかったからである。

『月刊群雛 (GunSu) 2014年 08月号 』http://bccks.jp/bcck/124757

 佐藤泰志は五回芥川賞の候補となりながらも落選し続け、失意の中、1990年に自死した。そんな佐藤泰志の存在を知ったのは映画「海炭市叙景」だった。大好きなミュージシャンである竹原ピストルが役者として出演しているので注目して観たのだった。私自身が函館生まれだということもあり、佐藤泰志が描く世界観に強く引き込まれた。

 今年4月に呉美保(オ・ミポ)監督が佐藤泰志唯一の長編小説「そこのみて光輝く」を映画化し、公開された。9月になってこの作品がモントリオール世界映画祭の最優秀監督賞を受賞、さらに米アカデミー賞の外国語映画賞部門の日本代表作品に選ばれたのを機にアンコール上映が続いている。
受賞の際の呉監督のコメントに胸が熱くなった。
「この映画の原作を書かれた作家・佐藤泰志さんは芥川賞候補に何度もノミネートしながらも賞に恵まれず、不遇の死をとげました。この賞を獲得し佐藤さんが報われたかなと感じています。佐藤泰志さんにおめでとうございます!!」
また2010年に公開された熊切和嘉監督の「海炭市叙景」の映画化の際も資金面やエキストラ出演などで函館市民の有志が多大な力を発揮したが、今回の「そこのみて光輝く」でも函館市民有志らが再び奔走し、4年がかりで公開にこぎ着けた渾身の作品であった。佐藤泰志という作家の再発見も市民の力であったし、映画化もまさに市民の、ソーシャルの力が結集されたのである。そんな作品が力を持たないはずはない。
モントリオール世界映画祭で受賞したトロフィーは函館市民が持ち帰り、佐藤氏の墓前に供えるそうである。


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