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『これなら語れるGP』久保ちゃんの「歌声が好き」みたいな「演奏が好き」コーナーを勝手にやってみた

前回こういうものを書いた。

このnoteといい、元にした『乃木坂工事中』といい、楽曲におけるメンバーの歌声(歌い方含む)のみに注目していたワケだが、当然ほかにも聴きどころは沢山ある!ということで、今回は歌声以外に注目する形で第2弾としたい。

ただし、楽器に関しても、コードやら何やら音楽理論に関しても、素人のかじりかけレベルの知識しかないことをあらかじめ断っておきたい。なるべくボロが出ないよう、わかりやすい部分をピックアップしていく所存である。

また、テキストで楽器の演奏を書き出すということを行う都合、大変まぬけな仕上がりになること、歌詞の乗らない部分を取り上げる以上、今まで以上に主観によるニュアンスの話になることをあらかじめご理解いただきたい。

ジコチューで行こう!

わかりやすいところから書いていく。まずは昨年の夏シングル『ジコチューで行こう!』から。夏曲でもかなり派手な演奏やダイレクトな歌詞が特徴的な激しいこの曲、その中でも、さりげないながら曲全体を支える箇所に注目したい。0:20からの1番Aメロを見てみよう。

坂を駆け上がって肩で息しながら(Wow)
強い日差しの中 入り江の向こうに広がる海原

Aメロを追いかけるアコースティックギターのティルルティルットゥールリッティルルーというフレーズ。これがこの曲の要と言ってもいい。

上に書いたように、乃木坂のレパートリーの中でも激しい演奏が目立つ曲。派手なシンセに激しいドラム、歪んだギターとなかなかギラついたサウンドで終始している。

そんな中の、このアコギの存在感!他に合わせてジャカジャカかき鳴らすわけでもなく、ポロンポロンとしっとりさせすぎることもなく、激しいばかりじゃなく爽やかにサウンドを足してくれている。

これらのフレーズのおかげで、ただ暑苦しいだけの曲にならず、爽やかな風を感じさせる夏らしさを演出しているのだ。このサウンドがこの曲に存る意図がハッキリとわかる大切なポイント。

せっかちなかたつむり

わかりやすいであろうところをもう一つ挙げてみよう。ユニット曲の代表とも言える『せっかちなかたつむり』。不可思議な男声コーラスと不可思議な各楽器の演奏でなんとも不可思議な深みをかもしだすこの楽曲。そんな曲で注目したいのは、ある箇所にだけ現れるフレーズ(?)。2番Aメロの繰り返し2回目、3:07から。

ホントはもっとそう時間を掛けて
仲良くなれば恋になるかもなのに

ハイわかりますね。歌メロの裏で鳴っているピアノのテテテテテテテテ…という音。これです。同じ単音が2小節鳴り続けているこのフレーズ(?)、これがあるのとないのとではかなり印象が変わる。

全体的にうねるベースとアコーディオンっぽいシンセ、奇妙なコーラスなどが絡み合って柔らかい印象というかぐにゃぐにゃした感じというか、そんなイメージがこの曲にはあるように思う。

そこにこのテテテテテテテテ…というピアノの音。このパキッとした硬い音が2番後半のAメロでさらっと現れると、曲調が特徴的な分、耳に残りすぎて飽きてしまいかねないところを締めてくれる。

それでいて、単音、というか一つの鍵盤をテテテテテテテテ…とただ叩き続けている画を思い浮かべると、なんだかばかっぽくてこの曲の雰囲気にも合っているようにも思う。下手にオシャレでメロディアスなピアノを足すより、こういう極端なことをしちゃってもいいんだと気付かせてくれるフレーズ(?)と言える。

生まれたままで

引き続き「ある箇所にだけ入っているフレーズ」に注目してみよう。8thシングルアンダー曲『生まれたままで』、ビックバンド的な豪華な演奏とサビのユニゾン感が気持ちいいこの曲、ある箇所に「何コレ?」というサウンドが入っている。目立つところなので周知のものかもしれないが、まず聞いてみよう。2番のAメロ、2:14から。

連なった飲み屋のその一角に帰ろう

<帰ろう>の後に入るプルルルルーィという謎の音。リップロールに聞こえるので、人声なのだろうか。それともやっぱりなんらかの電子音なのだろうか。ともかくやたら特徴的な音が急に鳴り、強烈な印象を残して去っていく。

アタック音になっているとか、季節感を演出するとか、そういった目的が読めないこのプルルルルーィという音(あえて想像するならば、音数が少ない部分であり、繰り返しの2回目でもあるので、変化を付ける目的だろうか)。

キャッチ―とかフックといった言い方があるように、音楽において聴き手の意識を掴むことは重要である。耳馴染みの良いメロディだったり、印象的なフレーズだったり、プルルルルーィだったりでグッと曲に引き込むこと、またそのための仕掛けを用意することは、作曲・編曲に際して頭に置いておかなくてはいけないことのようにも思う。事実、これだけ執着させてしまっているのだから、その目論見は成功していると言えるだろう。

気づいたら片想い

ここら辺から徐々にわかりにくいものを挙げていく。『生まれたままで』収録シングルの表題曲である『気づいたら片想い』。歌謡曲チックなサビのメロディ、AkiraらしいA・Bのメロラップ、切なさを盛り上げるストリングス中心のアレンジと見どころたっぷりなこの楽曲。挙げたこれらの要素はさておき、気になるのはある箇所のドラム。少し手前の1サビの頭、1:14に針を落としてみよう。

気づいたら片想い いつのまにか好きだった
あなたを思うその度 何だか切なくて…
気づいたら片想い

そう!そこ。サビは<気づいたら片想い>から始まるパートが2回繰り返される作りになっているが、2回目の入りで鳴るドロドドンドタン!タン!これがとても良い。こういう間をつなぐドラムのタム回しは、普通に考えればフロアタムまで叩いてドロドドンドドコドコになってもおかしくないところ、スネアでタン!タン!このキレが非常に良い。

ドロドドンドドコドコだと音が低くなっていくために収束していくように感じる可能性がある。しかし実際はサビの繰り返しが行われるわけで、そのための盛り上げとしてタン!タン!。上に書いたようにセオリー通りではないスネアが登場すること、また高めのアタック音がいきなり鳴ることで聴き手をハッとさせ、サビに再び引き込む。そういった効果を生む、非常に気が利いたアレンジである。

君の名は希望

ドラムに注目すると、こちらも良い。5thシングル『君の名は希望』。最早説明不要の乃木坂46代表曲にして珠玉の名曲であるが、この曲を名曲たらしめる要素のうち一つに注目したい。歌詞においては、青春時代の淡い恋のはじまりを起点として自己肯定に行き着く様が描かれている。曲もそんな歌詞の世界観を巧みに表し、また補強している。それが特に感じられるのは2番、Bメロの2:23から。

孤独より居心地がいい
愛のそばで幸せを感じた

注目すべきはドラムパターン、スネアの部分である。ウン、タン、ウン、タンという一般的な8ビートで2,4拍目を叩くのではなく、タタッタタッ…タッ…タッタタンッという独自のパターンになっている(厳密には1番Bメロもパターンは同じだが、鳴らす音が違う。各Aメロも少し変形しているだけで近いパターン)。

打数が多く、また裏拍にもグイグイ入ってくるので、聴いていると、なんだか急かされてるような感覚になる。心臓の鼓動がどんどん早くなっていくような、ざわざわした焦燥感を表現したものに思えるのだ。

そんな焦燥感と、細かく切り込むストリングスが生む緊張感が重なることで、あのキラキラしたサビに辿り着いたときのカタルシス、目の前がぱーっと開けるような解放感が、いっそう強くなる。そんな効果を、特にBメロに注目して感じた次第だ。

ぐるぐるカーテン

ドラム、ではなくリズムパターンに着目すると、おっという曲がある。それが1st表題曲『ぐるぐるカーテン』。曲全体の基本的なリズムパターンは、タン、タン、タン、タンという古き良き4つ打ち。そんな4つ打ちのリズムパターンをひっそりと補強する音がサビで鳴っている。説明の前に、一度曲の冒頭を聴いてほしい。しょっぱな00:00から。

カーテンの中 太陽と彼女と私

今聴いた記憶を保ったまま、次はそのまま進んで1サビを聴いていただこう。00:58から。

カーテンの中 そよ風と花の香りと

違いがおわかりいただけただろうか。歌詞はパートが変わる以上違うものになるとして、歌のメロディは同じ、演奏もおおよそ同じ。その演奏の中に、一点明らかに違う部分がある。それがタンバリンの音である。曲冒頭のサビのみチャッ、チャッ、チャッ、チャッという4つ打ちに合わせて鳴らされているのに対し、以降のサビではチャンチャカチャンチャカチャンチャカチャンチャカと16分で刻まれている。

『ぐるぐる~』の4つ打ちは、以前別のnoteに書いた通り、1stシングルとしての「わかりやすさ」「とっつきやすさ」を重視した故の選択かと思う。それはまた単調とも取られかねないところを、こうした工夫で解消しているわけです。

ミドルテンポな曲調に細かく刻むリズムパターンを重ねることで、実際以上のスピード感を感じたり、A-Bメロからサビまで4つ打ちのままほぼ変わらないところに、サビだけこうした音を入れることで変化を作ったり(サビとしてより盛り上げる効果も生んでいる)、やんわりとしながらも大きな役目をタンバリンのこのチャンチャカチャンチャカチャンチャカチャンチャカが果たしているように思う。

扇風機

そろそろ、ただただ好きなだけのものを挙げていく。まずは6thシングルアンダー曲の『扇風機』。ギターの音であろう不思議なイントロから始まり、サビではシンセで出している管楽器が歌メロの裏をガンガン補強している、一聴すると、どのジャンルの曲?という気持ちになるちょっと変わった曲。そんな変わっている感を横に置いて、Aメロを聴くことでジャンルを特定できる。00:34から。

いろんなことが一度にあり過ぎて考えがまとまらない
感情のキャパシティー 超えているんだ

そう。ッチャッチャッチャッチャラーラという裏に入ってくるギターのカッティング、合間で鳴るカラカンカンカンというスネアかパーカッションかの音。これは完全にレゲエ。むしろ、わかりやすいくらいに「こういうことをすればレゲエ」ということをやっているにも関わらず、色々やっているサビやイントロに惑わされてしまい、長いこと気付けていなかったんですが、これはレゲエ。

それはむしろアイドルポップスとして馴染みやすくした結果かと思われる。ライブなどで披露されることも考慮すると、以下にもな漢字でじっくりトリップさせるわけにもいかないと思われるので、必然的に盛り上がるポイントが作られたように思う。

その分、Aメロで一旦曲のテンションが落ち着き、音数が減ることで根っこの要素が現われるようになり、「実はレゲエですよ」と感じさせてくれる。本当にありがたい。

スカイダイビング

最後は3rdアルバム『生まれてから初めて見た夢』のリード曲『スカイダイビング』。シンプルなバンドサウンドで爽やかな夏らしさを演出している名曲。個人的にはサビのコーラスが風が吹き抜けるような身体で受けているような様をうまく表現しているようで好きだが、それよりも今回注目したいのはイントロ。早速冒頭、00:00から聴いてみよう。

※イントロなので歌詞引用割愛

完全にBUMP OF CHICKENの『オンリーロンリーグローリー』。ジャカジャカジャンジャカジャカジャンとギター掻き鳴らすところから始まり、ドラムがツクツーとハイハットを鳴らすのと同時にドゥウーンとベースも参加する。冒頭の流れがほぼ同じで、乃木坂とBUMPどちらのファンでもある身としてはとても楽しい。

これはパクリだと言いたいわけではなく、ある種の定石に倣ったため、使われている楽器が同じ(ギター、ベース、ドラムという基本的なバンドセット)、どちらも疾走感のあるギターロックな曲調、といったそもそもの共通点がある故に、自然とこの類似したイントロに辿り着いたと言えるだろう。

こうなってくると、ジャカジャカジャンジャカジャカジャンと鳴り出すと<そしてっそっの身っを~>と歌える気がするし、<いつの間ぁ~にか~>と歌える気がする。実際は音程やテンポが違うのでアレだけど、歌える気がする。それがなんかとても楽しいのです。

まとめ

雑な上に長くなってしまったので、一旦以上とする。本当は、『白米様』のイントロのカウベルとか、『行くあてのない僕たち』でBメロだけ現れるギターのカッティングとか、まだまだ語りたいポイントがあるのだけど、それはまた次の機会に。

と言いつつ、本当はただ久保ちゃんのキャプ画を連発したかっただけというのが前回から通していい加減伝わっていることと思う。

なんにせよ、歌声だけじゃなく演奏にも注目すると「ここがいい!」というポイントはいっぱいある、という話でした。


明日飲むコーヒーを少し良いやつにしたい。良かったら↓。