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『アンダーライブ2021』とは、つまりこういうことだったんじゃないか

2021年5月26日に開催された『アンダーライブ2021』。いやーめちゃめちゃ良かった。

卒業を発表していた伊藤純奈ちゃん、渡辺みり愛ちゃんが最後のライブ出演ということもあって、感傷的になってしまう部分もあり。当日の個人的なスケジュールとしては、アンダラ→→日向坂46ヒット祈願生配信→→アンダラリピート配信という1日だったので、それはもう心がブインブインに動く夜でした。

しかし、2人の卒業は大きなトピックの一つでこそあったものの、実際行われたライブの内容的にはその比重は大きくなかった。よく考えてみれば、発表されたのはライブの一週間前、「リクエスト募集」も締め切られた後であったりと、このバランスは最初から想定されていたものであろうことが察せられる。

そんな今回のアンダーライブ。2月の9thバスラ本編を皮切りに、3月末~5月初旬に期別ライブが行われ、そこから割と短いスパンで実施された。4期ラ、3期ラと同様有観客ライブの予定だったものの無観客・配信ライブになってしまった、と山崎怜奈ちゃんがパーソナリティを務めるラジオ番組『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』で明かしていた。

そんな諸々を踏まえた"アンダーライブ"として、今回は非常に意義のあるものだったと! そう言いたい! 配信メインになったことで、良くも悪くも見逃すことなくしっかり堪能出来た訳ですが、その実際の内容にとにかくテンションが上がりまして。テンション上がっている様子が以下。

そしてそれは、ひいては「アンダーライブとは何か」を再定義する行為でさえあったように思えた。何を隠そうSing Out!起源論者、今回のアンダーライブが非常に『Sing Out!』であり、「はなれてたって、ぼくらはいっしょ」であり、「~Always beside you~」であったと、そう強く感じた。

結局どういうことか。大きく分けて「センター:山崎怜奈」×「リクエスト募集」の2点がキモである。×(かける)で繋いだように、無論これらは連動している。

ライブは、ラジオ番組を模した『山崎怜奈のアンダラで話したかったこと』のオープニングから開始された。

今回の大きなポイントの一つが、上に書いたようにセンター・座長を務めたメンバーがれなちさんであるということだ。ライブ前の期間には『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』内で「誰かに話したくなる乃木坂46アンダー」というコーナーが4週に渡って執り行われた。

『TOKYO FM+』の該当回レポートでは、番組内でのパーソナリティ・れなちさんによる説明を基に、「選抜メンバー」「アンダーメンバー」の違いについて以下のように記されている。

アイドルグループ・乃木坂46は、表題曲を歌う“選抜メンバー”と、それに属さない“アンダーメンバー”に分かれています。シングルをリリースするごとに選抜発表があり、毎回、選抜メンバーとアンダーメンバーの構成が入れ変わるため、「(シングルの)楽曲によって歌唱メンバーが変わると思っていただければ」とれなち。

歌番組に出演するのは、おもに表題曲を歌う選抜メンバーですが「アンダーメンバーだけで独自に活動することもある」と言います。例えば、アンダーメンバーだけで歌うカップリングの楽曲や、アンダーメンバーだけが出演するアンダーライブなどがあります。

またコメント紹介されたドランクドラゴン鈴木拓氏は、アンダーメンバーについて以下のように熱く語った。一部を抜粋しつつ載せる。

「アンダーっていうのは、ちょっと陰があるんですよね。僕はみんなスターだと思っているんですけど、その陰をどこかに引きずっているんです」と語ります。

そして、元格闘家のミルコ・“クロコップ”・フィリポビッチを引き合いに、「彼はめちゃめちゃ強かったんですけど、人間味がなかったんですよ。(中略)負けたときに初めて、負けを知っているからこそ奥が深く感じるようになったんですね。アンダーの人たちに、僕はそれと同じことを感じているんです(中略)

自身のことをドランクドラゴンの「塚地(武雅)じゃないほう」と言い、「私がアンダーなんですね。だから挫折した人や会社でつらかった人とか、そういう人がアンダーのことを見てください! すごく気持ちがわかるし、“俺も頑張ろう!”っていう気持ちになりますから」と太鼓判を押していました。

それぞれ的を射ている部分もありつつ、あくまで「ある一部分」でもあるような。結局のところ、その定義は一つに定め切れないと言えそうである。個人的には、選抜メンバーは「メディア担当」、アンダーメンバーは「ライブ担当」という役割が(一つの側面として)あるように思う。

それこそ「アンダーライブ」という文化が確立されてからは長く、2015年発売のドキュメンタリー本『乃木坂46物語』でも、2014年の幕張メッセ握手会での初開催から2015年末・武道館2daysライブ決定までの様子が、参加したメンバーの声と共に大きく取り上げられた。

当初は1000人程のキャパシティの会場で行われていたアンダーライブだったが、逆にそうした規模からスタートしたこと、そして少しずつ熱(と動員数)を増していく様を指して、メンバーとファンとの「距離の近さ」「一体感」という言葉が用いられることもこれまでに度々あった。

ライブを行うエリアも会場の規模も徐々に広げていき、2016年からは『アンダーライブ全国ツアー』と銘打って各地を回るようになる(現在在籍する後輩メンバー達からは、当時その眼でライブ鑑賞したとの証言も多く挙がっている)。

その後、3期生の合流もありつつ更にライブの規模を拡大しながら現在に至る訳だが、一方で乃木坂46的にも「ライブ」を行う機会は年々増えていった。

それこそ3期生加入時は3期生12人のみでの単独ライブがあり、また4期生も同様である。さらには選抜メンバーの単独公演も少なからず実施されるようになり(『Merry X'mas Show 2016』、『「Sing Out!」発売記念ライブ』など)、加えてメンバーのグループ卒業に際しては様々な形で特別公演が行われた。2018年からは海外公演も開催されている。

そして迎えた2021年の9th year Birthday Liveである。全員参加の本編にしても、各期に分かれた期別ライブにしても、「選抜/アンダー」という切り分けを絶対としない形でのライブが長期にわたって実施された。

つまり、「ライブ」を活躍の場の一つとしてきたアンダーメンバーだったが、ここ何年かを経て、その境が曖昧になりつつあったと言える。ましてこの1年強は、昨今の情勢もあり、言葉通りの「距離の近さ」は諦めざるを得ない状態であった。

ってな感じの背景を踏まえた『アンダーライブ2021』。

結論から言えば、この情勢を加味した上での最大限の「距離の近さ」を実現したライブであったと強く感じた。それを叶える最大要素がこそ、「センター:山崎怜奈」×「リクエスト募集」である。

思えば、直近の4期生ライブ、3期生ライブのセットリストは、明確なストーリーテリングを感じる完成度の高いものであった。それぞれ、10年目を迎えた乃木坂46において彼女達がどんな存在であるかを示したストーリー性、メッセージ性の強いものであった。

(参考)

対して今回のアンダーライブ。セットリストだけとってみれば、ストーリー性を感じるものではなかった。しかしそれは何かに対して劣っているとかそういう事では全くない。

何故ならリクエスト企画を基にしたものだからである。正直、予想を超えるほどに、ほぼ全編がファンからのリクエストありきであった。そうでない選曲でさえも「メンバー自身のリクエスト」という形を取っていた。

この形が示す意味こそ、「距離の近さ」の実現ではないか。

乃木坂46を愛するファンの声を密に取り込んだ今回のライブ。言ってしまえば「こちらの見たいもの」に最大限に応えた形と言えるのではないか。当然、実際のリクエストは一つ残らず「こういうのが見たい」の集合体であった。

卒業する伊藤純奈・渡辺みり愛の2人による『ショパンの嘘つき』なんて、卒業という角度においても、彼女らの本懐である歌・ダンスという角度においても「こういうのが見たい」でしかない。

グループ屈指の歌メンでありながら意外と披露の機会が少なかった中村麗乃ちゃんの(憧れのメンバーとして度々名前を挙げていた齋藤飛鳥ちゃんのソロ曲)『硬い殻のように抱きしめたい』の歌唱もまた「こういうのが見たい」でしかない。

今回参加した3期生5名のみで3期生ライブから地続きの熱を背負った『僕の衝動』、オフ時の風貌がとびきりアレでありながら実際はめちゃくちゃ可愛い向井葉月ちゃんをファッションリーダー寺田蘭世ちゃんがコーディネイトした『13日の金曜日』、みんな大好き「宇宙兄弟」による『まあいいか?』、冒頭と終盤に配置されライブ全体を挟んだアンダー曲ラッシュなど、ひたすらに「こういうのが見たい」でしかなかった。

そんなファンによるリクエストを、『山崎怜奈のアンダラで話したかったこと』というラジオ番組の形をもって紹介しながら(更にはライブ中にリアルタイムで集まったメッセージの紹介も交えながら)、今回のライブは組み上げられていた。

単なるリクエスト企画でも成立し得ただろうが、しかしこの形で(「センター:山崎怜奈」によるラジオ番組という縦軸を用意しながら)実施されたことは、まさに「距離の近さ」の実現のための大いなる一要素であったように思う。

『ダレハナ』において「誰かに話したくなる乃木坂46アンダー」が実施された一方で、彼女はライブ直前に更新したブログにて以下のように想いを打ち明けていた。

顔が見えない、嘘のない文化だからこそ、
ただのラジオが好きな人として
リスナーさんたちとの関係を築いたほうが、
お互いに自然体でいられると思っています。

職歴や所属といった情報は
ひとつの武器でもあるけれど、
フラットな関係を作りづらくなってしまうこともある。

だから半年以上、
あまり身内の話をせずにやってきました。
無理をしていたわけではなく、
リスナーさん誰一人として、
置いけぼりにはしたくないんです。
https://blog.nogizaka46.com/rena.yamazaki/2021/05/061635.php

平日昼間の帯ラジオ番組という性質を鑑みて、これまで番組内で乃木坂46の話題を自ら発することを極力避けてきた。その真意がどういうことであったか、上記のように綴った。

当然「乃木坂46」の話題を話したくない訳ではなかったということだが、逆転して、彼女が「乃木坂46」の話題が通じる相手にはどう接するべきであると考えているか、なんとなく見えてくるようにも思う。

その答えを敢えて決め付けることはここではしないが、しかし一つの回答として『山崎怜奈のアンダラで話したかったこと』があるのではないか。

彼女の「ラジオ」という文化に対する向き合い方は上記の通りだ。パーソナリティとしてはもちろん、リスナーとしてラジオを愛していることも何度も語ってきているし、ならばこそ、彼女がラジオを軽んじていないことがわかる。

その上で『山崎怜奈のアンダラで話したかったこと』という形が実現したことは、並々ならぬ想いがあったのでは、と想像できる。山崎怜奈という人間は、「なんか面白そうだから」という程度ではそれを良しとしないだろう。

(ラジオ番組の形を取るにあたって該当するリクエストが紹介されていたが、仮にリクエストが無かったとしても同じ形を取っていたのでは、と個人的に見ている)

「リクエスト企画」を密に受け止めた上での達成、それこそが『アンダーライブ2021』で行うべき事だと彼女は認識していたのではないか。もう少しわかりやすく紐解くならば「ファンの声に応える」がその真意ではないか。

では「ファンの声に応える」とは何か。

もちろん色々な回答、色々な解釈を用意しうる言葉だが、乃木坂46においては一つ見出せる。

それこそが『Sing Out!』である。また同時に「はなれてたって、ぼくらはいっしょ」であり、「~Always beside you~」である。

かいつまめば「愛」だ。『君の名は希望』、『シンクロニシティ』を通してもじっくりと示してきた「愛」、それが最高潮に達した『Sing Out!』。この情勢において乃木坂46が示した「愛」は『世界中の隣人よ』という形を取ることもあったが、いやむしろ、それこそが今回のアンダーライブで示した本質だ。

それは本編最後を飾った楽曲が『誰よりそばにいたい』であったことで、それがまるで回答編・ネタバラシとでも言うかのように、すべて理解できた。

<誰よりそばにいたい>というフレーズは、紛れもなく<隣人よ/そこにいて>に他ならない。楽曲を通したメッセージだけでも、あまりにも本質を突いたものであるが、それを「リクエスト企画」という"殻"をもって示したのが今回のアンダーライブではないか。

それを届けることが出来るのは、「ラジオ番組」という場をもってワントゥワンで相手に声を掛けることを積み重ねてきた山崎怜奈その人こそ、誰よりふさわしい。当然、それは彼女が声を聞く側の気持ちもわかるからこそだ。

むしろ配信ライブという電波を通した形になったことで、それはより真に迫ったようにも思う。そんなの、もう、「はなれてたって、ぼくらはいっしょ」でしかないじゃないか。乃木坂46が本質的に示してきたメッセージを、他ならぬアンダーライブで、「距離の近さ」「一体感」をこれまでも魅せてきたアンダーライブで、真に提示してしまった。

これ何が凄いって、アンダーライブの意義を何も更新していないことだ。実は今回で変わったことが一つとして無い。

当初から与えてくれていた「距離の近さ」「一体感」を、単純に、改めて再確認しただけなのだ。だからこそ凄い。緩やかに変化していったグループの現状も、今まで通りでないこの情勢も、全部取り込んだ上で当初からの「アンダーライブの意義」をシンプルな形で再提示してくれた。

全編のラストを飾った『乃木坂の詩』は、9thバスラ期別ライブのどれでも披露されなかったことを含め、非常に大きな意義を持つように思う。彼女達が掲げてきた「ライブ」を締めくくるに、実にふさわしいものだったように思う。<乃木坂の詩/僕らの詩>というフレーズがまさにそれだ。

「アンダーライブとは何か」「乃木坂46のライブとは何か」それを示したのが、今回の『アンダーライブ2021』であったと言いたい。

そんな今回のアンダーライブのテーマソングと言える楽曲が『錆びたコンパス』であることがまた象徴的である。あまりにもシンプル、あまりにも前向きな歌詞を携えたこの楽曲、逆に解釈の余地が広くもあるが、いやむしろストレートに受け取っていいのではないか。

『誰よりそばにいたい』を補助線に考えるならばなおさらだ。『錆びたコンパス』がたくましく掲げるのは、傍に寄り添い応援してくれる、ひたすら力強い言葉である。MVに見られるメンバー同士の関係性の透けた姿がまたそれを推す。

センター・山崎怜奈の「誰一人として、置いてけぼりにはしたくない」という言葉がまた、ここで強く作用している。それこそこの楽曲の、そして今回のライブの大きなメッセージではないか。

いちリスナーとして<Break a leg!>を受け取りながら、ひとまずはこの情勢を切り抜けることに尽力したい。なぜなら、彼女達が、誰よりそばにいるからだ!

以上。



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