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2020年、乃木坂46第2部・完 導かれし者たち

2020年3月に『しあわせの保護色』発売、そして10月に『NOGIZAKA46 Mai Shiraishi Graduation Concert ~Always beside you~』が開催して、白石麻衣さんが乃木坂46を卒業してしまいましたね。

それは誰が見てもわかるように、乃木坂46のグループとしての大きな区切りであることは間違いないと思いますが、この区切りをもって「乃木坂46 第2部・完」と言わせていただきたい。

「第2部?1部はいつよ?」と思った方は是非こちら↓をお読みいただければ。

こちらでは「2015年は乃木坂46のそれまでの活動を総括する一年だった(総括に当たる発表やリリースが立て続いた)」としている。

そして紅白歌合戦初出場をもってひと区切りし、そこまでが乃木坂46の第1部であったと書かせていただいた。

そして2020年、単に「グループのエースであったまいやんが卒業すること」だけが区切りだと言うわけではない。

それは広く意味を含んだ「1期生時代の終焉」。

この区切りを以て、グループ内で明確な世代交代が実行されている。

そもそも、第2部のはじまりとなった2016年、それは当時グループの中核を担っていた一人・聖母こと深川麻衣の卒業発表から始まった。

更に言えばその直前の2015年12月にはアンダーメンバーの中心であった仏の永さん永島聖羅が卒業発表しており、2016年はメンバーを精神的にも支える心のよりどころであったメンバーが揃ってグループを去ることから幕上げされたと言える。

その後は現在までメンバーの卒業が断続的に続いている。

その締めくくりとして今年のまいやんの卒業があるわけだが、グループ誕生から成熟を重ねていった第1部と違い、第2部は成熟したメンバー達がグループを巣立っていく、かなりの「変革」の期間だったと言える。

また前後して、当時頭角を現し始めていた齋藤飛鳥ちゃんがセンター抜擢&以降本格的にグループの中心として台頭し、更に3期生・4期生も順次加入しては存在感が強まっていることもその一角だ。

そして、1期生から始まった組織に起きる変革と連動するように、特に第2部終盤となる2019年、2020年は、第1部の同じように総括を感じる活動や動きがたびたびあった。

まずはそれをざっと挙げてみたい。

『乃木坂46 Artworks だいたい全部展』開催(1月11日~5月31日)

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年が明けてすぐに開始されたイベント『だいたい全部展』。これは言うまでもなく、総括そのもの。

とりわけ、展示された各種アートワーク、アイテム、衣装、映像はいずれも結成当時からのものが充実していた。それは「歴史を振り返る」性質を特に持っていたように思うが、これも紛れもなく「1期生の」が頭に着くだろう。

個人的に印象に残っているのは、開催が決定された時の3期生メンバーの「先輩たちの歴史を改めて見ることが出来て……」といった言葉。やはり彼女達としてもまだ歴の浅い自分たちの振り返りである認識はそこまで厚くはなかったように取れる。

もちろん2期生は振り返るに十分な歴史を持っているが、それにしても1期生と比べて加入まで一年強のラグがある。

グループ全体の振り返りであることは間違いないが、特にその「当事者」であったのは1期生と言っていいように思う。

23rdシングル『Sing Out!』発売(5月29日)

ここでは楽曲自体の話になるが、これは非常に重要である。

『Sing Out!』は乃木坂46の一つの到達点だ。

乃木坂46は『君の名は希望』で<僕>が<君>に1対1で救われる世界を描き(そして乃木坂46自身が<僕>であり<君>であった)、『シンクロニシティ』で目の前の1対1の関係を超えた<すれ違う見ず知らずの人><遠くの><他人>の幸せをひっそりと願った。

もし君が振り向かなくても
その微笑みを僕は忘れない
どんな時も君がいることを
信じて まっすぐ歩いて行こう

泣いてる人のために
僕もどこかで
何も気づかず そっと涙流したい

そうした形で、他の曲も含め、段階を踏んで少しずつ手を差し伸べる範囲を広げてきた。

その想いが結実したのが『Sing Out!』である。

この想い届け Clap your hands
風に乗って飛んで行け 愛の歌

<僕>と<君>の世界から徐々に積み立ててきた彼女達のメッセージが究極的なものとして形になった『Sing Out!』、これはさながら「1期生ストーリー」の壮大なゴールである。

その後のシングル曲『夜明けまで強がらなくてもいい』『しあわせの保護色』は、『Sing Out!』の辿った道の先にあるものとは言えないだろう(しかしながら、奇しくもこの情勢により『世界中の隣人よ』という形でそれは更新されている)。

というより、続く『夜明けまで強がらなくてもいい』はその視点が『Sing Out!』とは異なっており、むしろここに明確な区切りが見い出せる(これに関しては後述)。

といった感じで、『Sing Out!』は単独の曲としてもその壮大なメッセージは語るべくものであるが、乃木坂楽曲を通して見ても「区切り」として取り上げるべき曲と言える。

『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』公開(7月5日)

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続くこれはわかりやすいだろう。

一連の活動を映像としてまとめる役割であるドキュメンタリー映画の第二弾が2019年に公開された。

前回の『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』公開は第1部最終年である2015年であり、ある意味ドキュメンタリー映画の公開を各部を締める目安として見ることもできる。

そうでなくても、区切りのための作品であることは容易に見い出せる。

作中で大きく切り取られたのは、グループの中心人物であったなぁちゃんこと西野七瀬の卒業。『乃木坂46 7th Year Birthday Live』での卒業コンサートの様子も取り上げられ、彼女との別れを惜しむ同期・後輩メンバーの姿も多くあった。

それと前後して『シンクロニシティ』で乃木坂46が第60回日本レコード大賞を受賞する様子も映像にあったが、一つ大きな結果を残し、そして卒業していくという一連をパッケージングすることで「(1期生の)終幕」としての姿を演出している。

関係の深かった与田との交流(ないし、与田個人が西野を想い語る姿)もたびたび見られたが、そこまで含めて「去るものと残されるもの」の姿として、世代交代の一つと見ることもできるかもしれない。

秋元真夏・2代目キャプテンに就任(9月2日)

large_秋元真夏_桜井玲香

こちらも大きな出来事だ。3rdの頃に初代キャプテンに就任以来、グループを暖かく緩やかにしかし信頼厚く支えてきた桜井玲香キャプテンが9月に卒業、それに際して次いでその役目を担うのが秋元真夏さんになることが発表された。

玲香ちゃんの卒業自体もさることながら、キャプテンの代替わりもまた衝撃的なことだった。

様々な悲喜こもごもの込められたざわつきを経て、多くの予想を大胆に超える真夏さんという人選。ある種「そこは大きな代替わりしねえんだ」と誰もが(おそらくメンバー、本人でさえも)驚いたことだろう。

しかし逆に言うと、ここに書いたように、広く世代交代の色が強くなってきたこの時期の乃木坂46の活動の中で、キャプテンという重要なポジションを任されたのが1期生・真夏さんであることがまたグループの方向性をよく表していると言えるだろう。

「色」として守られるものがあることは最早言うまでもない。また「変化すること」に下手に執着しないその選択は乃木坂46への信頼をより高めるものであるし、また真夏さんがキャプテンになるということは、変化する乃木坂46から1期生を不用意に排除しない、「世代交代」という言葉が若い新世代メンバーの台頭のみを指すことでは無いと、このことからわかるのだ。

キャプテンが玲香ちゃんから真夏さんに代わるこの事実が、乃木坂46に起きる大きな「変化」と同時に、「変化しないこと」をまた切り取っており、それが2021年以降の乃木坂46にもまた大いなる期待を抱いてしまう想いにさせてくれる。

「Sing Out!」発売記念ライブ開催(5月24、25、26日)

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順序が入れ子になってしまったが、このライブもグループのこの時期として印象的なものだった。

到達点である楽曲『Sing Out!』を彩るものとして、また、ちょうどこの時期グループを去る伊藤かりん・斉藤優里を贈るためのものとしての側面もあった選抜ライブ・アンダーライブだが、そこに並んで4期生ライブが行われたことがまた大きい。

要は、組織内チームとして4期生が一つ独立して括られたわけだ。もちろん本来的に同列ではないだろうが、としても4期生の存在をアピールするものとしてこのライブを単独で行ったことは(しかもこのタイミングで)、今後の彼女らの辿る道筋を示すものとしては十分だろう。

そしてそのライブも実際のところ、はっきり言って成功だったと言うほかない。マジ楽しかった(行った)。

全メンバーセンター企画からは「過去の曲の更新」といった性質も見い出せる。良い意味で「楽曲をストーリーから解き放つ行為」というわけだ。さながらディケイド。

「世代交代」のタームにおけるこの新メンバーのみの単独ライブ(と、その成功)は、ひいてはグループの未来を予感させるものと言っていいだろう。

海外単独公演開催(2018年12月1日、2019年1月27日、10月25日~26日)

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初開催は2018年だが、乃木坂46は単独海外公演の機会も増えてきた。2019年においてもたびたび開催を重ね、10月には上海で2days行われた。

深く意味を掘るまでもなく、これはグループの活動の幅が大きく広がっていることの一つの証明だ。さすがに現地まで観に行くことは中々叶わなかったが、各種メディアでライブの成功は耳にしている。

海の向こうまでその活躍が伝わっていることは、『Sing Out!』で描かれたメッセージと通ずるとも捉えられ、それもまたここまでの活動で辿り着いた到達点。

かつては日本国内でも地方ライブなんかは会場が埋まらないこともあったとメンバーが語っていたことを想うと、その達成感は計り知れないものだ。

これも9年間の活動があったから。紛れもなくこの乃木坂46第2部の時期であるからこそ叶えられたライブだろう。

『第70回NHK紅白歌合戦』欅坂46、日向坂46との合同ステージで『シンクロニシティ』披露

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賛否両論激しくあったこの回の紅白歌合戦での3坂道による『シンクロニシティ』の披露。これは坂道グループ長女としての乃木坂46のストーリー上にあるものだ。

そもそも3グループのはじまりの存在であり、更に後輩グループ・欅坂46※現・櫻坂46、日向坂46のメンバーが乃木坂46への(グループに対しても、個人メンバーに対しても)憧れを口にすることは度々見られる。

そういう意味では、この2グループが乃木坂46の影響下にあることは間違いない(所詮は2番手、と言う意味では決してない)。

3グループは緩やかに繋がっており、それぞれが先輩・後輩の意識を当初から持っている。4期生らは合同オーディションもあってグループの垣根を超えた同期の絆も芽生えているように見受けられる。

そうした3組の歴史が結実したパフォーマンスとしての『シンクロニシティ』。選曲としても他にないだろう。

それはまた乃木坂46がここまで大きくなったから。そして、欅坂46※現・櫻坂46、日向坂46がそれぞれの力でここまで大きくなったから。

乃木坂46単独の話では全くないが、しかし乃木坂46結成からここまでのストーリーにおいて辿り着いた一つの着地点と言っていいように思う。

200曲目の楽曲・『しあわせの保護色』(2月24日)

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そして年が明けて、開催された『乃木坂46 8th Year Birthday  Live』で披露された(当時)最新曲である『しあわせの保護色』。

現場のモニターでも示されたが、乃木坂46で楽曲がこの『しあわせの保護色』ついに200曲目に達した。

実際のところ偶然の要素が大きいとも思えるが、しかしながら、そう簡単には叶わなでいあろう「200」という数字をちょうどこのタイミングで迎えられたことが運命的である。

またその「200」という数字を印象的に用いることが出来たことがまた、この区切りを一層印象付ける。

25thシングル『しあわせの保護色』発売(3月25日)

そうした形で発表された新曲『しあわせの保護色』。これこそは先に書いた「1期生時代の終焉」を最後に彩る楽曲である。

この曲の選抜メンバーには、発表当時在籍していた11人全員が選ばれ、かつ全員が福神メンバー。1列目、2列目のポジションを担う事となった。

それはセンターであり卒業を発表していた白石麻衣を中央に配する陣形が1期生で構成され、MVでも彼女を皆で囲って贈り出すような様が見られた。

これは、彼女の卒業をアイコンにして、グループ結成から続いて来たストーリーのフィナーレを飾るものとしての一つの演出だろう。

先の『Sing Out!』の項でもちょろっと書いたが、これまでの乃木坂楽曲(シングル表題曲)は1期生の視点で描かれてきた。

「僕」と「君」を乃木坂46とファンの距離感になぞらえて、時系列に合わせて順を追って少しずつ描いて来た『ぐるぐるカーテン』から『君の名は希望』。

その系譜に通ずる『今、話したい誰かがいる』や『いつかできるから今日できる』、『シンクロニシティ』、『Sing Out!』などの楽曲。

そして特に、2期生、3期生、4期生の後輩たちがセンターを務めた楽曲を取り上げると分かりやすい。

『バレッタ』ではまだその素性がよくわからない新メンバー・2期生への懐疑的な視線を、<僕>が遠目から<君>をチラ見する様子に投影して描いた。

『逃げ水』には、3期生・大園桃子、与田祐希を中心に据えながらも、そのまっさらな新メンバー達の姿を見せつける形で、経歴を重ねてきた1期生達に向けられた<目指して来たのに/どこへ行った?あの夢>というメッセージが潜んでいる。

そして『夜明けまで強がらなくてもいい』は、視点自体は新メンバー・4期生のものではあるのだが、そんな彼女達の目指す先に1期生という<光>があるとして、憧れられる存在たる1期生自体のことも表した楽曲であった。

それらの楽曲と比べ、CDTV等歌番組での披露があり、発売が今かと待たれる『僕は僕を好きになる』は、明確にその視点が異なっている。

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少なくとも、この楽曲の歌詞中における<僕>は他ならぬ自分自身と戦っており、1期生が当てはまる存在を追うことはしていない。

友達なんかいらないって思ってたずっと
許せない嘘や誤解が招いた孤独
生きにくくしてる張本人は僕だ
居心地の悪い視線なんか気にしないで
今の場所 受け入れればいい そんなに嫌な人はいない
やっとわかったんだ 一番嫌いなのは自分ってこと

僕は僕を好きになる

<僕>が<僕>と向き合った、特に<今一番 嫌いな人><一番嫌いなのは自分ってこと>と逡巡を重ねて、最後に<僕は僕を好きになる>とゼロに戻り、希望ある未来を暗示させる地点に辿り着いたその歌詞は、『Sing Out!』のように他者へと強い想いを訴えるものとはまた違う。

むしろこれは『君の名は希望』において<君>に救われた<僕>のようでもあり、並べてみると25thまでとそのまま地続きでないことがよくわかる。

もちろん、センターを務めるのが3期生・山下美月であることも象徴的だ。

グループ全体の活動において既に彼女の存在感が強いのは知っての通りだが、それまで彼女はあくまで「1期生に対する新世代」という役割だったように思う。

しかし今回は紛れもなく主役である。

両脇を支える梅澤美波、久保史緒里、また他のポジションに立つ3、4期生たちもまた同様だ。

その中に1、2期生メンバー達が自然と混ざることの意味は真夏さんキャプテン就任の項で書いた通りだが、今回からは間違いなく3、4期生が主となった布陣である。

<僕は僕を好きになる>というこれからの未来を示す歌詞は、ひいては乃木坂46の新たな未来を示すもの。

『Sing Out!』『世界中の隣人よ』でこれまで伝えてきたメッセージの頂点に達し、『しあわせの保護色』で1期生時代の大団円を迎えた乃木坂46は、新たな世代を中心に据えて『僕は僕を好きになる』と共に新たなステージへと向かっていく。

まとめ

なんかざっくりした羅列に収まってしまいました。次何書こうか迷ってTwitterのアンケート機能まで使ってみたのですが、結果なんかこんな感じでよかったのかという気持ちに。うーんすみません。

まあいっか!あくまで記録としてね!

本当に、『しあわせの保護色』とまいやん卒業ライブを経て、すごく区切りのタイミングだなと感じているわけです。むしろ、ここからの乃木坂46(やメンバー達)のことは絶対に見逃すわけにはいかないな、と。

先日の4期生16人による配信ライブの成功もまた新時代の到来を示すものだと思います。新4期生がここで正式に合流した感じとか。でも絶対に「新4期生」と呼び続けたい(追加戦士みたいでエモいから)。

今年はこれで終わりです!ありがとうございました!

あ、念のため断っておくと乃木中アンケートの企画はもうやりません!

明日飲むコーヒーを少し良いやつにしたい。良かったら↓。