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生田絵梨花に学ぶ目標達成&早川聖来の場合

乃木坂46メンバーで最も成功しているメンバーを挙げるとしたら誰が浮かぶだろうか。

とすれば「何をもって成功とするのだ」という話になるが、それはちょっと後回しにして、まずは該当するであろうメンバーの名前を挙げたい。

それは生田絵梨花その人であるように思う。

では何故、生田絵梨花が最も成功しているメンバーと言えるのか。

それは彼女が目標を達成し続けているからである。彼女は「目標の達成」に誰よりも成功している。

例えば、彼女は幼少期からミュージカル女優を夢見て、『レ・ミゼラブル』に出演することを志し、その足掛かりの一つとして乃木坂46のオーディションに臨んだ。そして現在、そのどれもを彼女は達成している。

では、彼女が目標を達成することができたのは一体何故か。

歌や演技の勉強を絶えずしてきたから? 才能があるから? 向上心があるから? 真面目に取り組んできたから? 必要なことではあるだろうが、今回はそういう話ではない。

彼女はなぜ目標を達成できたか。

それは、「目標を設定した」からである。

生田絵梨花に学ぶ目標達成

設定した目標があったから「目標の達成」の遂行が可能になった。

「諸君、的当てというものは、まずもって的を用意してこそ初めて当てることが可能になるのだ」という詭弁や屁理屈のようであるが、いや重要な事だ。

「生田絵梨花」「目標」という2語を掛け合わせてみると、ある場面が思い出される。

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これは『乃木坂工事中』2017年1月16日放送回「 新成人をお祝いしよう! 2017」にて、ひめたんこと中元日芽香に向けて放った言葉だ。

言い方の妙から生田ママと称されたことが印象的だが、今回はやはり発言自体に注目したい。彼女は「毎日目標を作って生きる」ことを勧めている。

言葉通り365日間365個の目標を設定しているのかは後述するとして、少なくとも生ちゃんが「目標を持つ」ことを重要に思っていると発言から理解できる。

そこで、つい先日(6月4日)ちょうど参考になる記事がar webさんにて公開された。魅力的な写真からどうにか目線を外し、インタビューの方に着目してみよう。彼女はこんなことを言っていた。

私は年始に目標を立てるんですけど、今年は立てなかったんです。
何があるかわからないご時世だし、いっそのこと期待するのはやめようと。
そう思っていたら、たまたま新しいお仕事をいろいろといただいて。
結果的に今、すごく挑戦してる。
まだ4月ですけど、新しい挑戦はもう十分です(笑)。

生田絵梨花、ar5月号でギンガムチェックのキュートな着こなしを披露♡ | ar(アール)web

この発言、特に1行目に「目標」と現れている。全体としては「2021年はやめた」という趣旨の発言だが、抜き出してみると彼女は「(毎年)年始に目標を立てていた」ことを話している。

「年始に立てる目標」とはおそらく「その1年をかけて(1年の内に)達成すべき目標」であり、彼女は1年間を年始の目標に準じて過ごしているものと考えられる。

具体的には、「年始の目標を達成するために今何をするか」を日々意識しているのではないか(もちろん、その年の始めに掲げた目標だけではないだろう)。

先の発言とも総合してみるに、彼女の言う「毎日目標を作って生きる」とは独立した目標が365個あるのではなく、大きい目標の為、1日においては何を実践するか、といった意味なのではないだろうか。

(一般的な例を挙げてみると、「1年で10kg痩せる」という目標を掲げたならば、毎日xx時間運動をする/○○kcal消費する、とか、一食の摂取カロリーを○○kcal内にする/xxは食べない、とか、1日の行動がおのずと定まるだろう)

生ちゃんは掲げた目標に準じて毎日を過ごしている。であれば、ひめたんに掛けた言葉を彼女自身が実践していたとわかる。ともすれば、彼女の日々の行動を決定する指針として目標がある、とまで言えるかもしれない。

生ちゃんは、日々の行動を決定する指針とするに十分な目標を設定していたのだ。


とはいえ、「毎日目標を作って生きる」ことはそう容易ではない。これは「目標って言われてもそう簡単に思い付かないよね」という話ではなく。

どちらかと言うと「ちゃんと考えないと雑な目標の立て方しちゃいがちだよね」ということだ。

それが雑だと、結果として行動に結びつかない。あるいは、行動まで雑なものになってしまう。そういうことである。

「SMARTの法則」というものがある。コンサルタントのジョージ・T・ドランが論文で用いた、目標設定における一つの考え方だが、まずは概要をウィキペディアから引用してしまおう。

SMARTは、プロジェクトマネジメント、従業員の業績管理、能力開発などの領域における目標設定の基準を示す頭字語(アクロニム)である。ビジネスシーンでは、KPIなどの目標を効果的に設定する方法を示したフレームワークとして使われる。(中略)通常、SはSpecific(具体的)、MはMeasurable(測定可能)を意味する。AはAchievableまたはAttainable(達成可能)、RはRelevant(関連性のある)、TはTime-bound(期限のある)を意味することが多い。
SMART (マネジメント) - Wikipedia

要は、目標を設定するにあたって、あるいは目標達成のための行動を取るにあたって、これを満たすべきだというポイントを挙げたものだ。

そのポイントが、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、AchievableまたはAttainable(達成可能)、Relevant(関連性のある)、Time-bound(期限のある)、の5つである。

※この割り当ては変動し得るが、一般的に上記が多く用いられる。

上で例に挙げたダイエットならば、もし立てた目標が「痩せるし!」だけであったら、何をもって痩せたと結論付けるか(目標を達成したと言えるか)が曖昧である。

体重? 体脂肪率? 昔のジーンズがまた履けるようになった? 目指すところが定まらなければ、取るべき行動も食事制限なのか筋トレなのか脂肪吸引なのか決めあぐねてしまう。

「1年で10kg痩せる」であれば、字面だけ見ても具体的、測定可能、期限のあるを満たしている(数字で測るのは大事だ)。この目標に従えば、おのずと行動は「時間をかけて体重を落とす」ことに効果的なものに絞られてくるだろう。


で、生ちゃんである。

他者に対して「フワッと生きちゃダメよアンタ!」と自信を持って言えるくらいであり、また別の発言と併せて推測した限り、彼女は確かに「毎日目標を作って生きる」を実践しているようである。

では彼女が立てた目標とは何だろうか? 先に明かしてしまえば、年始に~の内容や、それによる毎日の行動についてはわかりかねる。どこかで発言しているかもしれないが、ここでは特定できるまでには至っていない。

しかし、生ちゃんのこれまでの経歴を振り返ってみると、彼女が長く持つ目標やそれから導かれた行動は見出すことが出来る。

例えば『レ・ミゼラブル』に関することだ。

改めるまでもないが、彼女は繰り返し同作のコゼット役を「目標である」と語ってきた。以下のインタビューは、『レミゼ』2017年上演に際し、初出演が決定(発表)されたばかりである2016年当時のもの。

――オーディションを受けた理由と、オーディションでのエピソードを教えてください。
初めて作品を観た小4ぐらいの時は、まだ自分があのステージに立つという想像は全くしていなくて、本当に雲の上のような存在でした。中学生ぐらいからコゼット役に心が動くようになって、私もいつか演じたいと思って声楽を習い始め、「夢」から「目標」にして取り組んできました。
ハイツェーにも感情をのせて歌いたい~『レ・ミゼラブル』新キャストインタビュー 生田絵梨花(コゼット役)編~

別の媒体でのインタビューも同様に語っているものがある。こちらは2017年上演時の東京公演中、8月に実施された。

Q:コゼット役をやりたかった?
最初はコゼットを目標にしていました。自分も子供でしたし(笑)。もともと私は引っ込み思案なところがあって、それがコゼットに注目するきっかけになって、一番魅かれたのかなって。今でこそグループでいろんな人とお会いして、ちょっと積極的な性格になりましたけど。でも今は、稽古を重ねて本番で観れば観るほど、エポニーヌもやってみたいし、ファンテーヌもって、どんどん目標が先に生まれています。今はまだ力はないかもしれないけれど、時間をかけて。たぶん「レ・ミゼ」は、今後もずっと目標になっていくんじゃないかなと思います。
生田絵梨花、夢だった「レ・ミゼ」にコゼット役で初参加【1】|ウォーカープラス

彼女は2017年に加えて2019年上演版でも同じくコゼットを演じ、また2021年にはエポニーヌを演じている。「たぶん「レ・ミゼ」は、今後もずっと目標になっていくんじゃないかなと思います。」をはじめとした発言を踏まえると、更に他のことも想像できる。

それは、『レ・ミゼラブル』(や他のミュージカル作品)に関わる何かしらが、出演が叶う前はもちろん叶って以降も、常に彼女の内に目標としてあった/ある、ということだ。

それこそ『レミゼ』に関すれば、日本での初演時から毎回「全役オーディション」が伝統として現在まで続いている。

2021年版を見てみると上演から1年半ほど前の2019年内から実施されており(参考)(他の年もおよそ同様だろう)、2019年版に出演していた生ちゃんからしてみれば、上演を終えてすぐに次のことを考える状況にあったのではないか。前後するが、2019年版も前回からコゼット続投という形ではあったが、それも実質ゼロからの挑戦であったと言える。

であれば、まず一つ分かりやすいものとして、「オーディション合格(出演権の獲得)」は毎年において目標としてあったことが想像に難くないわけである。少なくとも、常にそれに挑んでいる状態にあったのは事実だろう。

だが実情は、むしろ役が決まって以降、または稽古が始まってからの方が、詳細な、具体的な課題≒小目標が浮き上がってくるものではないか。おそらくそうであろうことが、以下の2021年4月のインタビューから汲み取れる。一つの例であるが見てみよう。

「私は天才ではないので、挫折しそうになったり、自信を失いそうになる瞬間もあります。今日もこの後にレミゼの初稽古を控えているのですが、緊張で震えていて……。

今回は慣れ親しんだコゼットではなくヒロインのエポニーヌに挑戦させていただくので、歌の音域でも自分の限界を突破しないといけません。でも、不安よりも自分を成長させる挑戦ができることにワクワクしています。単純に、私は頑張っている自分が好きなのかも(笑)」
乃木坂46·生田絵梨花のマイルール「ただただ規則を守ることだけが正解ではない」 #おしゃれOLさんのスキルアップ - with online - 講談社公式 -

不安な心持ちを明かす一方で、エポニーヌの低い音域の楽曲を歌うにあたって「限界を突破しないと」と語っている。併せて、上にも貼った2016年当時のインタビューから別部を抜粋しよう。こちらはコゼット役に求められる高い音域が十分でなかったと語る。

――ではコゼット役について、少し具体的な部分についてもお聞きできればと思います。ものすごい高音が含まれる、歌についての印象はいかがですか?
高いですよね…(笑)。声楽のレッスンに通って、なんとか出せる状態にしてからオーディションに臨んだのですが、ただ出るだけではダメなのだと実感しました。もちろん技術は大切ですが、役として歌うためにはそれを越えて、プラスアルファが必要なんですよね。今はまだ、ハイツェー(highC。高いドの音)とかを出す前には緊張してしまうので、まずは緊張しないで出せるようにして、本番では感じたままに歌うことが理想。もっともっと、努力しないといけないと思っています。
ハイツェーにも感情をのせて歌いたい~『レ・ミゼラブル』新キャストインタビュー 生田絵梨花(コゼット役)編~

2017年版、2021年版への出演に当たっての当時の課題、小目標として、それぞれに音域の拡大があったということだ。「声楽のレッスンに通って」と、彼女が目標達成のためにの行動に移っていることも見受けられる。

ここで急に「SMARTの法則」に戻るが、これらの時の彼女の目標はちょうど5つのポイントを満たしている。

「音域の拡大」は言うまでもなく具体的であり、測定可能である。また2016年時点はこの段階で「highCをなんとか出せる状態」であったようなので、目指すところも達成可能な領域であった。それぞれの最終的な大目標は、前者は出演が決まっているので「舞台の完遂」や「上質化」、後者は「オーディション合格」などとしていいだろうから、音域の拡大は関連性のある小目標。上演、オーディション実施までという、達成には期限のある状態だった。

上でダイエットを例に挙げたように、目標が明確であれば、その配下となる小目標や、達成のために取るべき行動がまた明確になる。

目標が明確であればあるほど、達成するには足りない部分、クリアすべき課題が正確にわかるからだ。『レミゼ』の場合は、作中で歌う曲やオーディションの課題曲があり、自身の音域を強化する必要があると彼女は知ったのだ。

このケースは楽曲という分かりやすい指標があったため、彼女は課題が音域の部分にあると見定めることがすぐに出来ただろう。

しかし、一般的に課題を、またその達成を見定める上で重要なのはフィードバックである。

現時点での目標との距離、あるいは取り組んだ上でどれだけ進歩したのか、それをフィードバックによって測る必要がある。

生ちゃんの場合、稽古に入ってからは外からのフィードバックを受けることが出来る。舞台出演(稽古)というものを普通に考えてもそうであるだろうし、『レミゼ』の場合はより深掘りできる仕組みがある。

『レミゼ』では日本版初演当時から現在までに渡って、キャストが決定した頃に「エコール」と呼ばれるプログラムが実施される。

直訳すれば、「レ・ミゼラブル学校」といった感じ。要するに、『レ・ミゼラブル』のキャストたちが、歌やダンス、演技の技術を磨き、また作品について深く知るための「学校」である。
帝国劇場 ミュージカル『レ・ミゼラブル』

決定したキャストらは「エコール」を通して横並びで基礎からレッスンを受ける。作品理解を深める為の講座なども同じく執り行われるようだ。

レッスンの内容は多岐に渡った。まずは、ミュージカル俳優の基礎となる、ヴォイス・トレーニング、歌唱指導、ダンス、演技などのクラス。『レミゼ』の難曲を歌い役を演じるための、当然のレッスン。また、ヴィクトル・ユゴーの原作研究や、当時のフランス社会や文学についての講座。ミュージカルの時代背景を理解し、登場人物に息を吹き込むための教養授業である。さらには、整体の時間も。ハードなロングランの間、体調を万全に保つためだ。
帝国劇場 ミュージカル『レ・ミゼラブル』

ここまで徹底しているケースはそうないだろう。基礎から学ぶ機会が設けられていることで、「出来ている」と思っていた部分が問い直され、見落としていた課題を再発見できる。当然、演出家や歌唱指導者など、それを直接指摘してくれる存在もそこにいるはずだ。

生ちゃんもまた、その環境を有効に活用していたであろう。ひときわ忙しい彼女だが、裏を返せば、TV出演など表に出る仕事以外にもこういった機会をスルーせず参加しているからこそ、と想像できる。

更に生ちゃんは、自らでも課題の発見に取り組む習慣がある。

「明るそう」と言われることが多いけど、いつでもポジティブというわけには、残念ながらいかないもの。だから、自分の心と向き合うことは大切にしています。今の状況や気持ちを携帯のメモにつづって、客観視するようになりました。自分を受け入れることで、前向きになれる気がします。過去にとらわれず、常に自分の本音と向き合いながら、メモを日々更新中です!
生田絵梨花(乃木坂46)のキレイの理由まとめ! いくちゃんの秘密を徹底解剖! | non-no Web

ここで彼女は「今の状況や気持ちを携帯のメモにつづって、客観視するようになりました。」「自分を受け入れることで、前向きになれる気がします。」と語っている。

ネガティブと向き合い、ポジティブをイメージするこの作業は、心理学教授ガブリエル・エッティンゲンの唱えた「メンタル・コントラスト」と呼ばれる思考法に近い。「目標を達成するために必要なこと」を意識化し、「足りないもの」「すべきこと」を自覚することができる。

そこから発展した「WOOPの法則」でもエッティンゲンは広く知られている。こちらは、Wish(実現したい望み)、Outcome(それによって得られる結果)、Obstacle(実現を妨げる障害)をイメージし、Plan(障害を取り除く計画・アクション)を立てる作業だ。

生ちゃんがこの通りにしているか定かではないが、似た結果が得られているのではないか。大きな目標を掲げている彼女にとって、今の状況や気持ちをメモにつづる現状把握は、目標までの距離を測り、自身の理想や障害を把握する自己フィードバックとして有効である。

また彼女の「今の状況」「過去にとらわれず」との発言には、「これから」に視点が向いた良い考え方が現れている。目標に対する「これまで思考」と「これから思考」の2つの視点を、シカゴ大学の心理学者ミンジョン・クーとアエレット・フィッシュバックが研究で明らかにしている。

「これまで思考」に傾いてしまうと、早い段階で達成感を得てしまって気が緩み、モチベーションが下がってしまう。また、ある程度やり遂げたと思ってしまうと他の目標に目が映り、一つに対して十分なアクションが取れなくなる場合もある。

「これからやるべきこと」に向いた「これから思考」は、「目標までの距離」を意識する考え方である。ゴールまでの距離を測り、あとどれだけやらなくてはいけないかを意識することで、目標達成までのモチベーションの持続に繋がるのだ。

ここまで目標・課題への取り組みの部分を取り上げてきたが、逆に大であれ小であれ、目標を達成している様子もインタビューから伺うことが出来る。生ちゃんは課題のクリアも確かに積み重ねている。

2021年版、エポニーヌとしての出演を控えた取材時にて、まさにフィードバックによってそれを実感したことを彼女は語っていた。

今まで同公演で演じてきたコゼットから、エポニーヌの役に初挑戦することについて生田は、「今までずっと、コゼットっぽいと言って頂いていて。それはすごくうれしくて光栄な事なのですが、特にそのイメージがある分“自分はどんなエポニーヌが出来るのか”という不安はありました」と振り返り、「でも、稽古場でキャストの方々が『エポニーヌもいいね』『最初からやってた?』と言って頂いたので、この方向でいいんだと進める勇気をもらえた感じがします」と笑顔を見せた。
乃木坂46生田絵梨花「レ・ミゼラブル」初エポニーヌ役を森公美子が絶賛「どこで勉強したの?」 - モデルプレス

また1994年から同作に出演し、今年で24年目になる森は生田について「『前にコゼットをやっていたよね?』と分からなくなるくらい全然違うキャラクターを押し出してきて。しかも声も全部地声のグワっと張ったやつでビックリしました。どこで勉強したの?ってくらいに」と絶賛。
乃木坂46生田絵梨花「レ・ミゼラブル」初エポニーヌ役を森公美子が絶賛「どこで勉強したの?」 - モデルプレス

新たな役を演じることに少なからず不安を感じていた彼女だが、共演者から複数に渡ってポジティブな言葉を受けたことを語っている。

森公美子さんに至っては、取材の場という公衆の面前で改めて太鼓判を押しているほどだ。それこそ歌(音域)に関しては、生ちゃん本人が課題であると認識していたのは先に取り上げた通りだが、その課題がクリアされたことを森さんもまた感じたことがわかる。

生田は「今まで高い音域だったので、地を這うようなエポニーヌの音色を出せるようにトレーニングは重ねてきました」とエポニーヌを演じるにあたって発声を変えた事を明かした。
乃木坂46生田絵梨花「レ・ミゼラブル」初エポニーヌ役を森公美子が絶賛「どこで勉強したの?」 - モデルプレス

もちろん、それも本人による課題の理解と目標達成に向けた行動があってこそであった。

一般的に、上級者ほど習熟度(上達具合)を測るのは困難な場合が多い。

故に、目標に正しく向かっているか、また行動の成果が出ているか把握しにくくなってしまうことがあるが、そうした場合は周囲からのフィードバックが有効になる。

特に『レミゼ』の環境は、掛けられる言葉にも信頼が置ける人達に囲まれていることだろう。なにせ実力者ぞろいである。貰った評価が正しいと思える相手であれば、尚更有効であるのだ。

こうして生ちゃんは課題のクリア・目標の達成、その実感を重ねてきたと考えられる。彼女は『レミゼ』への想い自体も並々ならぬものがあるが、それだけではなく、課題をクリアし、またそれを逐一実感したからこそ、『レミゼ』に挑むにあたってのモチベーションの維持・向上をしてきたと言えそうだ。

ここまで『レ・ミゼラブル』を主に取り上げてしまったが、他にも生ちゃんの目標達成への取り組み方が見えるものがある。余談としてざっと挙げてみよう。

彼女の人生において、大きく目標として挙がったであろうこととして、例えば「乃木坂46のオーディション」「音大の受験」が思い浮かぶ。

どちらも彼女の人生におけるターニングポイントと言えそうだが、注目したいのは、実はどちらも彼女にとっては、ミュージカル女優としての道を歩む上でのステップに過ぎないという事だ。

乃木坂に関しては、その動機として「ステージに立つという共通点があって~」との考えがあったと各所で明かしているが、まさに一つのヒントとして乃木坂46への道を選んだのだ。音大はステップそのものである。実際、そこで声楽科に入って学んでいることが時折語られている。

つまりこの2つもまた、大きな目標に対する小目標と言える。

ひいては、それぞれ「合格」という形で良い結果を迎えたことが、目標を追うにあたっての段階的な達成、成長の実感を重ねてきた一部ではないか。

とりわけ乃木坂46の活動においては、歌唱力、ピアノ演奏、演技力など元から培っていた要素を個性や長所としてフィーチャーされたこと、またリアルタイムのオーディション形式を伴う『16人のプリンシパル』での好成績などが、彼女にとってポジティブなフィードバックたりえた、と見ることも出来る。

上で引用した2016年当時のインタビューによれば、本格的にミュージカル(『レミゼ』コゼット役)を目標に定めたのは中学生頃だそう。再掲する。

――オーディションを受けた理由と、オーディションでのエピソードを教えてください。
初めて作品を観た小4ぐらいの時は、まだ自分があのステージに立つという想像は全くしていなくて、本当に雲の上のような存在でした。中学生ぐらいからコゼット役に心が動くようになって、私もいつか演じたいと思って声楽を習い始め、「夢」から「目標」にして取り組んできました。
ハイツェーにも感情をのせて歌いたい~『レ・ミゼラブル』新キャストインタビュー 生田絵梨花(コゼット役)編~

それが中学1年生の頃だとしても、実現するにはそこから更に20歳を迎えるまでの7年の時間を要した。

しかし、急がば回れ的に乃木坂46の活動を経た事で、むしろ着実に課題のクリア・目標の達成を積み重ねることができ、万全の状態で臨めたのではないだろうか。

また仮の話として、2017年版以前に『レミゼ』のオーディションを受験、落選することがあったかもしれない。その間のモチベーションの維持がまた、乃木坂46の活動を通して行われていたと想像できる。

そして出演が叶った時期、彼女はグループを続けるか悩み、その際に乃木坂46スタッフからフィードバックを受けている。

20歳になった頃、アイドルと舞台、どっちつかずになることが不安という私の真剣な相談に、スタッフさんも真正面から向き合ってくださって、その中で『乃木坂46でいろんな経験をしながら舞台などやりたいことに挑戦すればいい、両方やればいいじゃないか。生田ならどっちも手を抜かずにやりきれる、生田はそれができる人だと思う』という言葉が私に響きました。それで私は手を抜かずに両方やってやる、と火がついて“続ける”ことを選びました。
生田絵梨花が語る、これまでの“選択”「乃木坂46を続ける選択をして本当に良かった」 - モデルプレス

そこで示された内容、そしてそれを受けた彼女の意気込みは、ペンシルバニア大学教授のアンジェラ・リー・ダックワースが提唱した「グリット(GRIT)」そのものである。

「やり抜く力」「粘る力」とも定義されるが、これは「生まれ持った才能や知性ではなく、努力を重ねることで身に着けた、物事をやり抜く力が重要である」とする理論で、これはスタンフォード大学のキャロル・ドゥエックによる「固定的知能観」「拡張的知能観」とも意味を近しくする。

固定的~は「能力は生まれ持ったもので決まる」、拡張的~は「能力は経験や努力で高めることが出来る」とする考え方であり、一般に人間はこのどちらか一方の考え方が強いとされている。

多くの研究から「拡張的知能観」の考え方こそ正しいと明らかにされており、「グリット(GRIT)」はこちらに通ずる意味合いを持っている。Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)を指し、これらが成功のための重要な要素であると言われている。

生ちゃんの場合、「乃木坂46の活動と舞台出演の両立」という困難を前にした逆境が、彼女の中のグリットを高めたのではないか。やり抜くことを宣言していることから、それが感じられるのだ。

このように、生ちゃんが目標達成するにあたっては、それを可能とした背景に多くの要素が見られた。それらは、既に数々の研究で証明、あるいは提唱された理論と重なることがまま見られたというわけだ。

SMARTを満たした目標設定をはじめ、彼女がそれを達成できていたのには理由があった。満たしていたからOKということではなく、それだけ彼女は正確に課題や目標を把握していたということである。

かつ、モチベーションを維持・向上させる作業も自ら行ってきたし、実際に目標を段階的に達成していくことがまたそれに繋がった。先天的な才能や知性に頼らないグリットも有している。

生ちゃんは「天才」と称されることがあるが、一方で、先のインタビューでは「私は天才ではないので、挫折しそうになったり、自信を失いそうになる瞬間もあります。」と語った。

実際のところ、彼女が何をもって今に至るまでの結果を残してきたか、少しばかり明らかにできたのではないだろうか。

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早川聖来の場合

さて、ここまで、サムネにもタイトルにもこれ見よがしに取り上げておきながら、まだ名前すら挙げていなかった早川聖来ちゃんの話をようやくしよう。

先に断っておくと、早川ちゃんが目標達成を全然出来ていないだとか、やり抜く力が無いだとか、そういうことを主張したいわけでは全くない

いやむしろ逆に、目標を達成する力も、やり抜く力も、本来的には強く持っているはずだ。彼女の実績を見ていれば、そりゃもうわかることだ。

でも彼女自身がそう感じられていないのではないか。

早川聖来ちゃんは自己評価が低すぎやしないか、ということが言いたいのだ。


これを読んだ。舞台『スマホを落としただけなのに』出演に当たって実施されたインタビューであるが、その中で、5月に行われた4期生ライブでの早川ちゃんの様子――終演時に1人激しく涙を流していた姿について取り上げられ、本人もそれについて語っていた。

確かに、あの号泣する様子は気になってソワソワしたものだ(同時に、隣で戸惑いながらも早川ちゃんの背中をさすさすしていた佐藤璃果ちゃんの姿にもキュンとしたわけですが)。

ハッキリ言って、個人的にはあの様子に違和感を感じた。

何故なら、あれほどまでに涙を流す理由がわからないくらいにはライブに満足したからだ。もちろんそれは早川ちゃん個人に対してもそうだ。4期生ライブを思い返した時すぐに浮かぶのは、異様な完成度を誇った『ごめんねスムージー』である。もちろん『Out of the blue』披露時の眩しい笑顔はほかに代えがたい。

実際に彼女が語った涙の理由を、記事内からごっそり引用しよう。

「今回のライブは、私の中ですごく壁のように感じてしまっていたんです。ここ最近、27枚目シングル「ごめんねFingers crossed」の選抜メンバーに選んでいただけたり、ありがたいことに4期生だけで歌番組やバラエティ番組に出演させていただけたりしているのですが、その環境に自分の実力が追いついていけていないと思っていて…。これまで乃木坂46を築き上げてきた先輩たちがどんどん卒業していく中で、前回のシングル「僕は僕を好きになる」でも、4期生楽曲の「Out of the blue」でセンターを務めさせていただいたこともであって、しっかりできていないと『乃木坂46の4期生はこんなもんなんだ』と思われるんじゃないかとか、いろいろとネガティブなことを考えて、プレッシャーを感じてしまっていました。

思うように表現ができなくなったり、自分の体と気持ちがバラバラになったりして、リハーサルでも思うようにパフォーマンスができなくなってしまったんです。リハーサルの映像を見て、自分のそんな姿にショックだったし、周りのみんなにも心配をかけてしまったので、本番はちゃんとパフォーマンスができていたかすごく不安でした」


4期生にとって大切な楽曲「4番目の光」披露時には、号泣のあまり、メンバーに支えられる場面も──。

「どうしてあの時あんなに涙が出たのか…自分でもわからないんです。でも本番直前まで泣いてしまっていたので、あの曲で泣いてしまったというよりは、あそこまでよく耐えたなという感じかもしれない…。でもそういうプレッシャーがあるからこそ成長できる部分もあるし、ほかのメンバーも、ライブが終わってから『もっとできたのに』と反省している子もいたので、着実に成長していく姿をこれからの4期生は見せられるんじゃないかなと思えたライブでした。今まではライブや舞台の前はすごく緊張して不安な気持ちばかりだったのですが、今はネガティブな気持ちになったら不安を乗り越えた先に今があると考えるようにしています」
乃木坂46早川聖来のステージに立つ覚悟 4期生ライブ号泣の理由は<舞台「スマホを落としただけなのに」インタビュー> - モデルプレス

やはり「ネガティブなことを考えた」「プレッシャーを感じた」など自信のない発言が目立つ内容である。

パフォーマンスにしても何にしても、基礎的な能力はむしろ群を抜いて高いうちの一人であると思っていたので、そんな彼女は、実際の(外からの)評価に対して自己評価はやはり低いのではないかと思う。

その原因を探るにあたって取り上げたいのが、上で1万字強も書いちゃった生ちゃんの話だ。生ちゃんの、というより、彼女を題材にしていくつか挙げた目標達成に関わる部分である。

早川ちゃんもそうあれば良いのではないか、という事が今回言いたいのだ。

上級者ほど習熟度(上達具合)を測るのは困難な場合が多い、とも書いたが、早川ちゃんの状況においてそれが一つあるのかもしれない。

彼女は、グループ加入前から市が主催する市民ミュージカルに出演した経験があった。乃木坂46加入直後の『3人のプリンシパル』や、その後のミュージカル『美少女戦士セーラームーン』においても、彼女の活躍は目覚ましいものだった。

つまり早川聖来と言う人は、当初から少なからぬ経験、高いスキルを有していた。しかし、なまじ高い能力を有しているがゆえに、成長を実感し切れていないのではないか。現時点での、達成していること、残っている課題、それらが正確に把握できていないのではないか。

例えば、音程が全く取れない人がドレミファソラシドに合わせることが出来るようになったら、それは間違いなく成長である。「音程が全然取れない」と言う課題があり、クリアしたのだ。

しかし早川ちゃんは当然そんなレベルではない。歌唱ひとつとっても高いスキルを持っているために、逆に「足りない部分」がどこか、能力が高いだけに容易には測りきれない状態と言える。

上で引用したインタビューでは、選抜メンバーに選ばれたことや、歌番組に出演することといった環境について「自分の実力が追いついていけていないと思っていて…。」と語っている。しかし、この発言において、”環境”にしても"自分の実力"にしても、そもそも基準が明確じゃないように思える。

そこで「SMARTの法則」に再びご登場いただこう。

繰り返しになるが、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、AchievableまたはAttainable(達成可能)、Relevant(関連性のある)、Time-bound(期限のある)、の5つである。

彼女の中の自己評価の基準において、これらが必要なのではないか。少なくとも現在は、何をもって成功であるかが厳密に定まっておらず、そのために成功した実感が無く、何をしても失敗した感覚になってしまっているのかもしれない。

また、「しっかりできていないと」との表現も気になる。これは果たして、何をもって満たされるものなのか。

社会心理学者ハイディ・グラント・​ハルバーソンは、目標は「証明ゴール」「成長ゴール」の2タイプがあるとしている。それぞれ、「私にはこれをする能力があることを証明する」、「今までできなかったことをできるようにする」に焦点を当てた目標の設定し方だ。

この内「証明ゴール」は、未知の課題や困難な課題を前にしたとき逆効果になる可能性があるとされている。

ハルバーソンが行った研究によれば、意図的に困難に作ったテストに対し、「証明ゴール」タイプの学生(自分の能力を証明したいと考える学生)は、「成長ゴール」タイプの学生(テストは新たな問題解決の仕方を学ぶ機会だと思っている学生)と比べて、一様に成績が下がったという。

「証明ゴール」タイプの場合「完璧にやらなければ」と考える傾向にあり、対して「成長ゴール」タイプの場合「失敗しても良い(そこに学びがある)」と考える傾向にある。その違いが、困難を前にした際のモチベーションの維持に顕著に現われたという結果である。

今回参考にしたハルバーソンの著書に良い言葉が書いてあった。

『成長を実感する充実感は「完璧」を目指す緊張感とは、まったく別のものです。』

この言葉が、今の早川ちゃんに届くといいのかもしれない。

おそらく彼女は"「完璧」を目指す緊張感"に囚われている。あくまで個人的に見ての感覚に過ぎないが、でも彼女のことを考えた時、"緊張感"という言葉がなんだか腑に落ちてしまったのだ。

そしてまた、彼女の中の「完璧」も漠然としたものではないか。何を満たせばいいのか明確化しなければ、正しく測ることが出来ない。もし「完璧」を求めるのだとしたら、必要項目を揃えたチェックリストを用意しなければ。

先に挙げた「グリット(GRIT)」のResilience(復元力)は、「失敗しても諦めずに続ける」を意味している。

いや、早川ちゃんが失敗したらすぐ諦めると言いたいわけではない。

成功か失敗かが明確にわかる目標設定、それが今の彼女に必要ではないかという事だ。それこそ「成長ゴール」である。失敗は課題の明確化に繋がる。もちろん、成功した時の充実感もまた更なるチャレンジへのモチベーションになるはずだ。

そういった意味では、例えば「選抜メンバー」は目標としてあまりふさわしくない。なんせ基準が明確じゃない。基準が明確じゃないために、メンバー自身としても、主体的な取り組みでコントロールし切れない領域となっている。事実、早川ちゃんはそれによって充実感を得てはいない。

だから今彼女にふさわしい目標はこれだ……と挙げられたらよかったのだけど、それは野暮なので今回は割愛する。

少なくとも、Measurable(測定可能)は重要だ。数字など明らかな方法で測定できれば、本人が何をどう受け止めようとも、いやおうにも成功が突き付けられるのだ。

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と、調子よく書いたは良いが、このnoteを思い付いてから今回完成に至るまでの間に、舞台『スマホを落としただけなのに』の上演がスタートして、千秋楽を終え、更に2週間ほど経っている。気付けば約1ヶ月だ(サムネに使ったアー写も新しいのに変わってしまった)。

大きな経験を経た早川ちゃんにとっては、もしかしたら、もうここまでの内容は不要な状態にあるかもしれない。

『スマ落と』のパンフレットを読んでみると、この舞台に出演した経緯は「演技なら彼女で!」との推薦があったからであるそうだ。つまりこの舞台出演決定自体が一つの実力に対するフィードバックであった。実際、舞台上での彼女は、そう言われるにふさわしい存在であったと素人目から見ても分かった。

また、演出を務められた横内謙介氏は自身のツイッターで重ねて彼女を評価している。同様の言葉が、稽古場をはじめとした場でも直接伝えられていることだろう。

とは言え、目標が必要ないことはないだろう。乃木坂46における活動(特に個人の)においては、どうしても基準が曖昧なものが多いのは事実。なんでも数値化できるものではないので、致し方ない部分でもある。

プロセスとして細かな成功・成長の実感を得るためにも、目標の設定や課題の見定めはやって損はない。それには何をやっても良いのだ。幅の広い乃木坂46の活動を鑑みれば、直接関係しないことなんてよっぽどじゃない限り無いはず(Relevant(関連性のある))。

これからのグループにおける大きな一角を担うであろう彼女が、どうか自己評価高く、晴れ晴れと活動していってほしいという、ささやかな願い(Fingers crossed)でした。

まとめ

ということで、思い付いた内容を気さくに書き始めてみたら、こんな感じになってしまいました。何かを強く提示したかったわけではなく、もっともらしく書きたかっただけなので、深く考えないでいただければ幸いです。

次回は、毎週水曜深夜25時にメンバーとの1on1ミーティングを実施している2期生メンバー『新内眞衣さんの優れたマネジメント術』でお会いしましょう(嘘)。

以上。



(参考書籍)





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