100日怪談 100日目

「ここはどこだろう」
ふと僕は目をやると別な学校の屋上、そう、フェンスの向こう側にいた。
「あぁ、そうか僕はこれから飛び降りるのだろう」
視線を校庭に目をやると左端の木陰から誰かが覗いている。
その子はじっと僕のことを見つめている。
「この苦しい現状から逃れるのはこの方法しかないのか?」
近くに居る黒猫は問いかける。
「お前誰だよ。」
黒猫はすかさず僕の方を頭から舐めるような視線で睨む。
「俺は死神、お前の魂を貰う。」
死神と名乗ったその黒猫は僕を見て何か言いたげな様子である。
「待ってくれ、俺にはやり残したことがあるんだ。」
「なんだよ、それならそう言えよ」
黒猫は彼を睨みながら話す。
僕はおどけた様子で黒猫に問う
「な、なんで僕なんかに死神がついてんだよ」
「俺か?俺はお前には用はないんだけどな、と云うより、お前の魂をさっさと狩ってしまった方が早い。」
木陰から覗いている人がさっきからチラチラと視界に入る。
「なぁ、それよりさっきから木陰の方に人がいるんだけど、あれ誰?」
黒猫は鋭い視線を木陰の後ろにいる人に向ける。
「あいつは地縛霊、あいつはお前の事を手招いている。いいのか?やり残したことが出来ずお前はあいつにひきずられる。」
僕は驚いた。黒猫の事をきっと睨みつけボソボソとつぶやく。
「ああはなりなくない、だったらさっさと目を覚ませ。」
はっ、と僕は驚きジリジリ鳴る目覚まし時計に目をやり、すっかり目を覚ます。
「なぁんだ、夢か。」
今日は引越しの日だった。カレンダーには丸がつけられ、下の階にいる母親に声を掛けられる。
「さっさと起きて、引越しの準備手伝って」
僕は言われるがまま、パジャマから洋服に着替え、自分の荷物をダンボールに詰める。
「あれはなんだったのだろう。」
僕はまだ夢の中にいる様な心地ではあったが、引越し業者のトラックに荷物を詰め、育ち慣れた故郷を離れる。
「そろそろ行くぞ」
父親の声が聞こえ、車に乗る。
2時間から3時間離れた街に引っ越す事を考えるとずっと不安だった。そして、その不安は現実となってしまった。
「え、あれって…」
車の中から見えたのは彼が行く学校の校舎はまるで夢に出てきた校舎と一緒で人は居ないものの、黒猫が手招いているかの様に僕には目に映って見えた。
そして、木陰に人がぶら下がっており、にやりと不気味な笑顔を僕に向けながら僕の乗っている車は通り過ぎた。

100日怪談 100日目終了。

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