聞くべきであった忠告

渡米前の事だ。こちらの友人が1つ忠告をくれた。

「NYには日本人コミュニティが幾つか有ります。中にはおかしな日本人のコミュニティーもあり、閉鎖的で小さい世界を作っています。私はお勧めしないので、うっかり入らないように気をつけてくださいね。」

2016年の夏のことだ。私はすっかり、忘れていたのである。

そんなある日、日本人集団のパーティに行くことになった。
名刺を交換し、何しているの?などと雑談をする。

するとある一人の瘦せこけたヒロトシと言う小僧が、キイキイした声で

「僕はぁ、弁護士なんですよぅ。こっちの事務所はぁ、研修出来てるんですよぅ。名刺とかぁだから貰っていないんですよう。あ、日本のはぁありまーす。」

アニメのキャラみたいだな…。会話を続けてみよう。

「私ね、今弁護士さん探してるんです。色々聞きたいことがあって。」

即座に返してくる。早い。
「あー小さい会社っぽいですね。うちの事務所大手なんでぇ、相手しないと思いますぅ。」
  
カチーン。一生忘れねえぞ。てめぇ。
研修でこっちに来て、お前まだ弁護士でも無いじゃ無いか。

気を取り直す。すると、偶然にも友人の会社の人間が居た。おお!
直前の不快も吹き飛ぶ。友人の話で盛り上がる。まさかの偶然である。

すると、司会に指摘される。
あのーそこのお二人、盛り上がっているみたいなんですけどぉ、参加者同士の自己紹介をする会が始まるので、席についてください。

それから2時間はあろうことか。なんと、司会と司会の嫁の馴初め話を冗談交じりに聞かされることになる。あとは有名人に出会った話。要らないなあ。
それ、本当に要らないなあ。

参加者の自己紹介でもなんでも無い。そして、素人のウケ狙いの話と、芸能人にあった自慢と言うほど、この世の中に苦痛なものは無い。そうか、私はここにボランティアに来ていたんだっけ?

この流れで言えば、当然と言えば当然なのであるが 、司会の馴れ初めが押しに押し、参加者の懇談会が省かれることとなったのは言うまでも無い。頭が狂いそうになった時、開場はお開きとなった。

今更ながら彼女の忠告を思い出す。
アメリカ人と連もう。固く固く心に誓った1ヶ月目の夜である。




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