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社労士とAIについて 2

鹿児島で社労士をしています原田です。

前回はAIのお話の前編でしたが、今回は2回目です。
社労士はAIを超えられるか。

AIが難しいと思われる社労士業務

 それでは事例を挙げてみていきましょう。

1.依頼者の意思が介在するもの
 社会保険に入りたくない、入れたくない、雇用保険も入りたくない、個人の意思や事業主の意思が介在する場合に、労働条件自体を変更する必要がでてきます。
 特に社会保険の加入については、定期的な調査があるので、しっかりとしておかなければいけません。

2.実態をヒアリングしなければ判別できないもの
 特に労災ですが、行方不明もありますし、出産関係の手続きもヒアリングが重要です。退職理由も重要です。

3.どちらにでも解釈できるもの
 社保ギリギリとか、雇用保険ギリギリとかの場合です。遡って喪失させるかどうかの判断材料が必要です。

4.書式があまりにも統一されていないもの
 特に雇用契約書・出勤簿・賃金台帳です。手書きの給与明細しかないケースも少なくありませんし、出勤簿=シフト表のところもまだあります。
改正労基法では出退者の時間を管理する義務はありますが、賃金計算を出退勤の時間でしなければならない義務は今のところ発生していません。

5.定められたルールの範囲では不可能なもの
 週30時間未満の短時間正社員、65歳超の定年再雇用のような就業規則の改正を含むもの等

これらもAIでできるようになるでしょう

 AIとしてこれらを網羅して、判断できない場合に質問が出せるシステムを組むことは可能です。

 ほとんどのケースに対して、AIから適正な質問を返すようにすることで、回答を得ることができるようになるでしょう。むしろ全てに網羅するより一部の手続き業務に特化したラーニングなので、早期に実現可能となる可能性は高いです。

 社労士を何人もバイトでお願いし、様々なパターンをラーニングに使えば、それなりのデータが取れます。開業したての社労士なら、喜んで協力する人はいるでしょう。

ただし判断材料を見出すために、会社が行うのは、
・雇用契約書を読み込ませる
・出勤簿を読み込ませる
・賃金台帳や給与明細を読み込ませる
・履歴書を読み込ませる
・マイナンバーを読み込ませる
といった行為が必要になります。読み込み間違いがあれば、AIは正しい判断ができないので、都度修正が必要です。

 AIが判断した結果が、事業主の予定したものと異なる場合は、AIに対してアクションを起こす必要があります。

 これで社労士の手続き業務を網羅することができます。

これがきちんとできる会社なら、AI使わなくても自分で書類作成や電子申請できんじゃね?と思ったりしますが、そこは気にしない事にします。

次の問題は法改正

 社労士やってて一番大変なのは、法改正です。こんなに頻繁に大幅に変わることなど他の士業であるのでしょうか?

 「○月○日から変わります。」といった制度変更は非常に多いです。定例でも最低賃金や社会保険料等があります。

 過去のデータから判断するディープラーニングにとって、苦手な部分になりますが、厚労省が出すQ&Aを読み込むことと、一定のアルゴリズムをラーニングさせれば、ある程度対応できるようになります。

なんとなく社労士がやばい感じになってきました。

最大の問題は、最初の体験

 どんな問題でも、繰り返しラーニングする事で、精度を上げて行くことが可能になります。社労士の手続き業務は限りなく減るかもしれません。

最大の問題は、AIが判断できないものや、事業主が回答できない事象に当たった時です。

 AIがラーニングしていないものは、回答できません。AIが回答できない場合に、AIに頼る企業はどうするでしょう。

頼ってしまうと、頼れない事態に対応できくなります。更にAIが間違ったことをラーニングしたり、複数の回答がありえることを理解して、それを提示した場合に、それを事業主は適正に判断できるのでしょうか?

法律通りでない説明ができるかが鍵

 人間として社労士ができるのは、正しいとは言えない説明力かもしれません。法律に照らすと正しくないのですが、おおむね正しい話です。

 例えば社会保険に入るのは週30時間以上 というのは、法律的には間違いです。通常の労働者の4分の3以上の労働時間ですよね。週40時間が上限で、それで定める企業が多いから30時間と言ってるだけです。

 AIが30時間だと言うと、社労士や良く知っている人は、「AIが間違った」と非難するでしょう。しかも適用拡大等の例外や、高齢者の場合や、二事業勤務まで書かないと怒る人まで出かねません。(10年ほど前に記事を書いていて、ざっくり説明したら、炎上した経験があります。)

 正しく言うとわからなくなる話があります。だから正しくないけど、その場だけなら限定的に正しい話を説明できるのが重要でしょう。そこまでAIが判断できるのは、かなり時間が必要かもしれません。

 でもそんなことも、そのうちできるようになるかもしれません。しまいには不明点を行政に電話して聞いたり、判断基準の公文書開示請求までAIがやってしまうかもしれません。

 AIより社労士に頼んだ方が安いという屈辱的な地位にならないように、手続き以外も頑張らないといけませんね。

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