ソラ소라

文筆業兼写真家 be a 映画音楽

ソラ소라

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最近の記事

現実を生きたい。

障子のすき間を吹き抜けていく風のような人間に会った。留まることを知らず、孤独も愛も同じ味がすると言うような雰囲気だ。その人の、霧の中をぬって歩く声が私の耳に届くたび、メガネの額縁が黒光りしている。 その人は言う。誰にも見せていない原稿が山ほどあると。生きるために書いている側の人間の言葉だ。他人からの評価も、言葉をお金に変えることも、生きることに比べたらどうだっていいのだ。 見せてはくれないその人の世界は、混沌としてるのだろうか。その人は「あのときに死んでもよかった話」をし

    • ティーンエイジャーを被って破る日々

      大人になった。華のseventeenをむかえブレザーを着て短いスカートをひらひらさせていた頃は、記憶の遠い宝箱の奥にあるおもちゃのように感じる。 6歳の自分を思い出すのも、17歳の自分を思い出すのもそうたいして変わらないようだ。香りも色も触感も同じで、鮮明に思い出そうとすればするほど、夢心地のような雰囲気にのまれていく。 ランドセルを背負っていた私も、下駄箱にローファーをしまっていた私も、もちろん私のはずではあるが、記憶の底から掘り起こした小さな女の子は本当に私なのだろう

      • だから何でも教えてあげようと思ってしまうんよ。

        祖母が栗の渋皮煮を送ってきてくれた。ジップロックにぱんぱんに詰まった2袋の祖母の味だ。栗の皮むきを考えると、祖母の愛情の深さがうかがえる。甘くて美味しくて世界がとろけるような味がした。 祖母に栗の美味しさと感謝の気持ちを伝えると「食べ過ぎたらいけんよ」と言う。喜んでいる私の言葉を聞いても祖母は嬉しそうではなく、ただ心配そうに言う。 祖母は私が小さい頃によく海外へ旅行していた。イギリスの紅茶や、トルコの先のとがったスリッパ。ガラスの猫の置物、木でできた魔女の操り人形。祖母が

        • アルコールを分解するまで。

          頭の血管1本1本に何かが詰まって、体が前に傾いていく。息が浅くなって詰まる喉に意識を向けていないと、無感覚な世界に落ちて行ってしまう。 どうして。いつから。ふわふわ身体が浮くような感覚はどこに消えてしまったのだろう。友人のくだらない話にも大笑いして、なんだかそのあとは涙がでてくる。今、目の前の幸せに泣くのだ。 映画の主人公になったような気分で席を立ち、お化粧を直して。まっすぐ歩けない自分にも笑って。お酒に頼って失敗して、記憶が飛んだ。 なぜか隣人が最寄り駅に迎えに来てい

        現実を生きたい。

          Paris in Tokyo

          上京してまるっと3年が経とうとしている。社会人になって倒れて病人になったり、ニートになってオーストラリアに行き不機嫌に過ごしたり。朝が怖くて仕方がない毎日が当たり前になり、散々だった。 一念発起して再就職を目指し、ことごとく英文事務の仕事に落ち続けた。何を仕事にしたいのか皆目見当がつかない中、好きだから書いて、好きだから撮ってと学生のころから続けていたことが、いつの間にか仕事になっていた。 一口に言って、運がよかった。「どうして動かないの?また言い訳してる」と、年収が1,

          Paris in Tokyo

          フランス語で怒ってみよう「ぴたーん!!!(怒)」本当にかわいい。

          学問とは、まず気持ちを高めるところから。ときに苦しく孤独なフランス語学習に耐えうる強い意志を支えるもの、私の確固たるモチベーションを始めにご紹介します。 それは「フランスのモデル兼俳優のMaxence Danet-Fauvelが同じ世界軸で存命している事実」です。Maxence---!!!今日も生きてくれてアリガトウー!! 茶色のふわふわな髪の毛、エメラルドグリーンの宝石みたいな瞳、181㎝のモデルスタイル、少し高めの優しい声、そして見て。「愛嬌で国が動く」と感じたほどの

          フランス語で怒ってみよう「ぴたーん!!!(怒)」本当にかわいい。

          泣き出しそうなのは、チキンカレーだ。

          彼女はその日「とてもお腹がすく期間なの」と言っていた。細身であるのに昔から、割と食べる人ではあった。 彼女が頼んだのがチキンカレー、私が頼んだのは日替わりカレーだった。写真付きのメニューはなく、入り口で食券を買う店だったので、店員さんに聞かない限りどんなカレーが出てくるかはお楽しみだ。 カウンターの席に座り、わくわくしながらカレーを待った。「日替わりカレーの方」と呼ばれ、私が受け取ったのはドライカレーだった。 お主~!ドライなカレーだったのか~!!さらさらしているカレー

          泣き出しそうなのは、チキンカレーだ。