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介護休業は介護をするための休業ではありません ~育児介護休業法に基づく両立支援制度、あなたはご存じですか?~

社会保険労務士の山地です。

前回は急速に少子高齢化が進む日本において、75歳以上になると要介護になる人が増えること、家族の介護に直面する人は40代後半から50代の人に多く、その日はある日突然やってくること、介護に直面したからといって安易な退職はハイリスクであることなどをご説明しました。

退職せずに仕事と介護を両立しながら働き続けるために必要なものは「両立支援制度」と「介護保険」の知識です。

両立支援制度のなかで実際に利用したことはなくても、聞いたことはあるというものの代表格が「介護休業」でしょう。

介護休業の対象になる家族は、介護保険の「要介護2」以上である次の家族です。

配偶者・子・父母(配偶者の父母を含む)・孫・祖父母・兄弟姉妹 です。

要介護認定を受けていない場合は、常時介護を必要とする状態に関する判断基準」を参照してください。

対象家族1人につき通算93日間まで、3回まで取得することが可能です。休業期間中は多くの企業では無給が一般的です。この場合の生活保障として、一定の要件を満たしていれば雇用保険から「介護休業給付金」が賃金日額の67%を受給できます。

この介護休業ですがあなたは「介護休業」というくらいだから、介護をするための休業だと思っていませんか?

もちろん介護をしてもいいのですが、実態として介護できるとは思わないほうが無難です。

平均的な介護期間は一般的に4~5年と言われています。長い人だと10年以上介護している人もいます。それなのに、介護休業は93日間までしか認められていません。介護休業が介護するためのものであるなら、足りないことは明らかです。

介護はかつて家族が担うものとされていました。そこへ2000年に登場したのが介護保険です。介護保険は介護を社会化するために生まれました。

私は社会保険労務士になる前は総合病院の医療福祉相談室に勤務していました。高齢の患者さんの多くは病気や骨折、大けがなどで入院・治療し、それらがきっかけで要介護状態になられることが多々ありました。

共働きが当たり前の現代において、家族がつきっきりで介護に専念することは困難です。そんなご家族に介護保険のしくみや要介護認定の申請のしかたなどをご説明し、介護保険サービスを利用するためにはケアプランを立てる必要があるため、ケアマネージャーさんを探さなければいけません。

実際にどのようなサービスを利用するかをケアマネージャーさんと相談していただき、必要とあれば施設見学をし、家族間で協力して誰がどのように役割分担するかなども決めなければいけません。

介護が始まっても要介護者の急変(病状の悪化により緊急入院など)や要介護度が重くなり利用するサービスを変更するなど、様々な変化に随時対応する必要に迫られます。

介護休業期間中にやるべきことは介護ではなく介護するための体制を構築する、またはその時々の状況の変化に対応することなのです。

長くなりましたので、その他の制度については次回ご説明します。(*^_^*)

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