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海中時計 『TEENAGED』 感想

こんにちは!
文フリで買った本全部に感想を書こうのコーナー、第4弾です!

これは去年の秋文フリで買ってるのでまだ許される……気がしてます……読んでなくてごめんなさい……。

五月女十也さま 『オパールの海』

解釈違いだったら申し訳ないのですが、横田に主人公への恋愛感情が一切感じられないところがポイント高いなぁと思いました。別に特別な理由があって死にたいわけではないけれど、将来に希望があるわけでもないから死にたい、っていうのすごくよく分かります。たまにそういう気持ちに襲われて、計画を立てて、でも大体うまく行かないんですよね。海が死に場所として選ばれるのは現実というより小説内においてよくあることと思うのですが、これまで海をオパールのようだ、と形容した人には出会ったことが無かったので、素敵な表現だと思いました。

七星さま 『桜流し』

死体と凶器を食べちゃう顔の良い男、やばいですねえ……。結構性癖どストライクです。
そんな自己申告はさておき、人が死んでも巡り巡って、僕たちの口に胃に体内に返ってくるかもしれない、という発想がとても好きでした。トウテツが妹を殺した男だけは巡り巡ってはいけない、と死体を食べるシーンがエロティックで、でもそれは彼なりの美学に基づいた行動で、そとても美しく思いました。あと、トウテツって饕餮なことですかね??漢字だったら絶対読めないやつだ……。

酔歌さま 『Rove』

愛とは何か。あれも違う、これも間違った、と悩んでいる青年が教授からの言葉を“愛”と捉えるところに面白さがあると思いました。恋愛って、反対語を二つ続けているのか、類義語を二つ続けているのか、考えることがあるのですが、それと近しいものがあったりするのでしょうか。個人的にはラキスト愛用者なので、そこでちょっとテンション上がりました。感想書き終わったら一本吸ってきます。

此田さま 『アフターエピローグ』

マスカラの伏線が好きです。いろんなひとが世の中にいて、いろんな悩みがあって、普通じゃないと思っていたことが普通になれるかもしれない、別に普通だと思ってもいいのだ、というラストがとても好きだなぁと思いました。妹へのコンプレックスが服やメイクの趣味や似合う似合わないで表現されてるのがめちゃくちゃリアルで、腹の底の何かを刺激された気分です。どうか二人の恋が、悲しみが、穏やかになりますように。

水落さま 『泡と亀裂』

成人式。地方都市に生まれ育ち、外で得てしまった視点をもって、故郷を振り返る。主人公や登場人物たちを取り巻く環境と似た場所で育った身としては、とても分かるなあと思って読みました。最後の段落がとても好きです。日常には些細な絶望が潜んでいて、あの頃の存在と今の自分たちとの乖離がどうしようもなく横たわっていて、それらを共有できる友人がいる主人公は幸運だったんだろうなと思います。冬の深呼吸は肺がちょっとだけ痛くなります。あの感じと似てるのかもしれません。

鴉乃宗樹さま 『モラトフレニア』

最初読んだ時は、うわぁロリだの、ペドだの言ってごめんなさい。面白かったです。
自分は特別な人間と思って生きてきたのに、正解だと思った選択肢を選び続けたら、結果手元に残ったのは「普通」の人生だった。それが嫌で、逃げて、破裂した肥大化した自尊心が“口”だとするなら、その消滅は諦めなんでしょうか。最初に読んだ時は美由とのあれこれに意識が向いていたけれど、多分主題はそっちじゃなくて、本当のテーマは喪ったもの、己が特別という自尊心、それへの執着、ってことなのかなと思います。

水汽淋さま 『感情機関』

めちゃくちゃ面白かったです。JKの思考方法とか、言葉の選び方とか、そういうのがめちゃくちゃ懐かしくて、もしかして女子高生だった過去がおありなんでしょうか……。染まりたくない、という否定的な自己表現ではなく、やりたいからやる、という意志で行動する。それが私達が喪ったものである、という発想をとても興味深く思いました。あとクール系美人のケイ、好きです。

カムリさま 『宇宙人へのシミュラクラ』

元カレの母親の遺骨をダシに脅してくる女とかヤバすぎる……。冒頭に渡会くんが旅行に行きたい、と言っていたのは月のことだったんでしょうか。ヒーローになれなかった人は、大人になるしかない。そうかもしれません。ラストシーンの画を想像して、あまりの美しさに息も忘れました。ある意味残酷なシーンのはずなんですが、それでも美しいと私は思います。

キノ猫さま 『小惑星』

思い出の話。特別なオチや伏線があるわけではないんですが、その一瞬を思い出と思えたことに価値があった、ってことなんだと思います。
ネットの繋がりを親に言いにくくて、なんとかお茶を濁そうとする感じ、そして困る描写がすごい共感できました。ちなみに僕はいまだに親にネットで友達作ったとか一切言えません。

腕さま 『僕たちは灰になれない』

最高に好きです。社会や人生、世界そのものもに疲れてしまった大学生と吸血鬼の恋、めちゃくちゃ美味しかったです、絶品です。本の貸し借りって子供の頃はよくやりますけど、大人になるにつれてやらなくなりますよね。多分自分で手に入れられる金銭的能力の会得と未知のものへの興味が薄れるからなんですからねえ。
主人公とエミリの逃避行がすごい好きでした。普通の人(?)だったらきっと吸血鬼になれませんでした、死ねませんでした、ってとこで話を終えると思うんですけど、その先が見れることでなんとも言えぬ絶望感がありました。きっと次第に社会に迎合していくであろう主人公、切ないです。

名取雨霧さま 『叶わぬ夢の在処』

アンソロの最後を飾るのに相応しい作品だと思いました。界隈の人は多分他のコミュニティよりも夢を追いかけている人が多いと思うんですが、転換期を迎えつつある我々がどちらを選ぶか、その先の希望を願うくらいはしてもいいんだなって思える作品でした。あと、生の鶏肉食べたってことにする言い訳もチャーミングで好きです。
タイムリープしたことで現代の二人が共に、また先へと進んでいく未来に思いを馳せたいなと思います。


以上になります!
結構雰囲気で書いちゃったので、解釈違いとかあったら教えてくだい。
表紙も海中時計ってサークル名も大好きです。

また皆さまの作品がどこかで読めますように!



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