建設業界の問題点その①(構造設計の視点から)

業界の問題点と謳っているが、業界全体に精通しているわけではなく、他の会社のことも詳しくは知らない。そのため、その①で自分が所属する会社の問題点をまとめつつ、その②で業界に対して思うところを書く。

僕は建設業界の構造設計業務に携わっている。所属している会社は中堅ゼネコンと同等程度の規模だ。扱っている建築物は規格品や型式認定などの決まりきったものではない。

建設業界の2024年問題が差し迫っているにもかかわらず、具体的な対策について僕の会社ではあまり触れられていない。そのあたりにも少し触れたいと思う。


会社の問題点①

社内マニュアル等が整備されていない。一般的に構造設計には、構造計算一貫プログラムを用いると思われる。そのマニュアルがない。

古いマニュアルはあるが、最新の内容ではないのと、なぜその設定なのかの理由が不明だ。設計の人間なので自分の頭で考えるのは非常に重要ではあるものの、作業効率がメチャクチャ悪い。

曖昧な規準関連が多いので統一するのは確かに難しい部分もある。

しかし、多数あるルールをいちいち確認しながらというのは煩雑だし、OJT等で教える側の負担もかなり大きく、残業につながるので世の流れに逆らう結果になってしまう。

僕の会社では課長クラス以上に中途社員が多く、各々が昔の会社の名残やこれまでの経験に基づき構造設計をしているので、色々混在していて部下となる若手社員が混乱している。

また、プログラムの設定だけでなく、例えば片持ち部分の指示方法(片持ち梁を設けるのか、スラブだけで受けるのか)など明確にルールが定まっていなく、架構計画が人によって微妙に違う(違ってもいいのだが)ので意匠設計から、なんで人によって違うのとか質問される始末だ。

ただ、構造だけでなく意匠も平面計画を進める上での構造ルールを知らないので、片持ちをかなりとばしたり、これどうやって支持するんだという計画を平気でやってくる。(構造内でもルールが統一されていないのでなんとも言えない。)

また、入社した直後に業務研修がなく、いきなり設計をするわけではないが、習うより慣れろで業務がスタートする。

会社の問題点②

業務量が多い。

主なものだと、a.企画設計、b.基本設計、c.実施設計、d.現場監理(構造のみ)がある。ものによっては企画設計段階で一貫構造計算プログラムに入力して、躯体数量を出すこともある。

企画設計と基本設計は、積算用の資料をまとめる必要がある。長くて一週間ぐらいの作業期間が与えられる。大体他の業務との兼ね合いで時間がない。過去物件の歩掛はあるのだが、ややこしい物件も多く、それなりの精度が求められるため、企画設計でも一貫構造計算プログラムを使用する場合がある。基本設計も一週間でプログラムを用いて、ほぼおさめるところまで検討する。基本設計ってこういうものなんだっけか?

実施設計は、内製だけでなく外注する場合もある。確認申請や適判申請自体は、基本的に社内で行う。外注していれば、質疑回答部分のやり取りは、自分では行わない場合もあるが、必要書類を作成したり申請自体の作業は社内対応だ。バイトもいないので印刷したり、時間がないので、申請機関に直接持って行ったりすることもある。これはブルシットジョブだと思う。

a~dの業務を並行しているので、基本的に何かの締め切りに追われている。
一人が担当する作業負担がとにかく大きいと感じている。

会社の問題点③

上で挙げた業務内容の中に現場監理(構造のみ)がある。試験杭や配筋検査、中間検査などに立ち会う。加えて、施工中の現場質疑の対応を行う。

この現場質疑が問題だ。現場で出る質疑は基本的に設計図書や標準仕様書等に記載がない部分に関するものか、ヒューマンエラーや単純ミスで間違って標準から外れた施工をしてしまったので是正方法指示が欲しいかなどが大半だ。

各担当者が質疑回答書を作成して現場に送付するのだが、構造の部署内で各現場の質疑をまとめたデータベースというものが無い。物件特有の質疑はもちろんあるが、大部分は標準から外れて施工してしまった場合の対応に関するものだと思う。

その場合、基準となる納まりがあるので、大体似たような間違い方をするのではないかと感じている。基礎梁、柱梁接合部、逆梁、鉄筋の定着要領等、部位ごとや重要度ランクみたいな形で、今までの質疑回答をまとめて構造部署や現場の人間は閲覧できるようにするべきだと考える。あるランク以下の質疑は構造監理に確認するまでもなく現場権限で対応するとか、似たような質疑はデータベースを確認して迅速に回答を作成するとかそういった対応をしないと、時間だけが取られ残業が増える一方になる。

会社の問題点④

営業の力が強い。社長が営業上がりなので、これはどこもそうかもしれないが時間がない中での無茶ぶりがとんでくる。営業がとってきた仕事が僕らにまわってきているにしても、営業と設計(意匠、構造、設備)のパワーバランスが明らかに営業に寄っている。

また、コンスタントに仕事はあるので、VIPの建築主であったり、無理してでも後の会社の成長につながる予測を立てているなどでなければ、敷地や道路が狭小で高低差があるなど明らかに設計や施工の負担が大きい物件を無理して受注しようとしなくてもいいのではないかと思う。戦略的撤退も時には必要なのでは。

そういったことも踏まえ、社長がエンジニア上がりの会社の方がいいのではないかと常々思っている。

会社の問題点⑤

構造(の人間)が舐められがち。ほかの会社はわからないが、実施設計の後半でも大きめの変更が度々ある。基本設計で何してたっていうぐらい。建築主の要望とかではなく、単純に納まっていないので変更せざるをを得ないものもある。スケジュールは、もちろん動かせない場合も多い。

以前、社内でも意匠と構造がお互いキレたり、逆ギレしたりと揉めていることがあった。どうしても工程上、意匠→構造の流れになる。意匠には悪いが、図面を少し修正するだけの意匠と違って、安全かどうかを何らかの方法で確認したあとに構造設計図書に反映するのに構造は時間がかかる。

それを時間がない中で急かされながら対応するのは揉めても仕方ないと思う。意図的でなくともやったもん勝ちみたいになって、構造が変更するしか選択肢がないのは割に合わない。

会社の問題点⑥

あまり詳細には書けないが、設計関連業務ではなく、会社の動向を知るための会議や研修のようなものが全社員を対象に高頻度ではないものの行われている。

僕は正直、こういった類のものはいらないと思っている。こういうのも地味に積み重なって後々の残業時間につながる。

会社の問題点をまとめたが、結構出てきた。まだまだ書ききれない部分もあるが、今回はこれぐらいにしておく。

会社の問題点は、会社を変えれば改善される部分もあるだろう。

次回は、今回の内容を踏まえ業界の問題点についてまとめたいと思う。

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