『存在の耐えられない軽さ』の131p抜き書き

 フランツは首を振っていう。「社会が豊かであれば、人びとは手を使って働かなくても済み、精神的な活動に専心できる。大学はますます多くなっていき、大学生の数も多くなる。大学生が卒業するためには、卒業論文のテーマを考え出さなければならない。この世にあるものすべてについて、研究論文を書くことさえできるので、テーマの数は多く、無限にある。書かれた紙は記録保管所に積み上げられるが、その保管所は死者の祝日にさえ誰も来ないので墓地よりも寂しい。文化は生産過剰、活字の洪水、量の多さの中で消えていく。これがなぜ君のかつての祖国での一冊の禁書が、われわれの大学で次から次へと溢れ出てくる何十億ものことばとは比較にならないくらい多くのことを意味しているかという理由なんだ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?