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みかん狩り

ハサミで枝から切り離されたみかんは
皮が硬くて指が入らない
無理やり親指を入れて剥くと
そこからは何故か素直に剥かれていく
二つに割ってそのまま一つを口へ
歯で一袋をちぎり噛み締める
まだ緊張したその果実を包む膜の厚み
力で破れば中から若い果汁が迸り
もぎたてなのに歯に冷たく滲みる
太陽の恵みを受け足りず
もっと育ちたかったと言う思いが伝わってくるような
熟せぬその酸味は舌に突き刺さる
その遠くから甘みが顔を覗かせて
柔らかに広がりすぐに消えていく
嗚呼
今日も生き急ぐつもりのなかった若き息吹が
中空に消えていく
僕は晴れ渡っているのに肌寒い空を見上げ
通り過ぎし昨日までの日々に思いを馳せる

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