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773外国の文化財に手を出すべからず

損保ジャパンはわが国の大手保険会社ですが、文化財をめぐるゴタゴタに巻き込まれました。同社が保有する絵画が「違法に入手されたもの」として元所有者の遺族を名乗る人から、「絵画の変換」とさらに「1000億円の損害賠償」を請求されたのです。
その絵画とは、損保ジャパンの前身である旧安田海上火災保険が大枚53億円払って購入した「ひまわり」。これはゴッホの代表作の一つとされる名画。1987(昭和62年)でしたが、話題になりましたよね。当時の絵画市場の相場を一挙に何倍にも釣り上げました。バブル全盛期の金満日本の購買力を示すと同時に「ほんとうに美術素養があるのか」とさまざま失礼な言葉を投げかけられたものです。ちなみにそれ以前の絵画取引の最高額はマンテーニャの「三博士の礼拝」の19億円でした。

なぜ保険会社が外国の絵画を保有する必要があるのか。同社は美術館を保有していますが、その宣伝ビデオで強調されているのはこの一作品のみ。ひまわり1枚を展示する目的で作られた美術館にも感じられます。一作品で西洋絵画をマスターできるのか、大いに疑問です。
バブル期でカネを浪費しなければならなかったということでしょうか。でもそのツケが回ってきています。

訴えた人の主張は「ひまわりの所有者はユダヤ人であったためにナチスによってタダ同然で没収された。その経緯を知っていながら購入した日本の会社はナチス同罪の極悪非道」ということです。感情に訴えます。損保ジャパンは購入手続きに違法性はないと主張していますが、仮に訴訟で相手を退けてもイメージダウンを避けられないでしょう。

ポイントはわが国とは違う文化系統の絵画を、相場を何倍にも釣り上げて購入する必要があったのか。しかもゴッホの「ひまわり」はほぼ同一の構図で少なくとも10以上あることが確認されているのに。

購入費の53億円は今でも大金です。これを文化庁に寄付すれば散逸しつつある国内の重要文化財を国が買い取り、修復し、国民の鑑賞に供することができたのではないか。そうしておけばナチスによるユダヤ人ホロコーストの争論に巻き込まれることはありませんでした。そして青少年に先祖伝来の文化を学ぶ機会を増やすことができました。
「歴史に学ばず、ゼニカネで判断する」日本のビジネスパーソンの悪い側面を象徴する案件です。

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