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563憲法前文で読解力試験 憲法学者は何点取れるか?

日本国憲法は世界最古との見方がある。制定・改正含めて、最後に文言に手が入れられた時点からの年数では、一度も修正がないことで、わが憲法が最古になるわけだ。憲法は国法の最上位。だからといって不磨の大典ではない。解釈では補えないような環境変化が起きれば、国民的議論を経て改正していく。そうしてそれでも対応できなったときには、新たに新憲法で置き換えることになる。日本国憲法でも考えは同じで、改正の手続き規定が置かれている(96条)。
「絶対に手を触れてはならない」と叫ぶ勢力は、改正権を無視する点で、憲法遵守義務に反している。改正は必要だ。そのことは絶えず念頭に置いておかなければならない。
 ただし必要もないのに、そろそろ改定期だからと、議員の任期のような感覚で改正すべきものでもない。憲法規定は抽象的あることをもって旨とする。できるだけ解釈で対応するためであり、アメリカにおいてもそう理解されている。それでも同国では制定(1787年)以来、27回の改正がされている。平均すれば8.7年に1回。下院議員(任期4年)では3期やっていれば、上院(任期6年)では2期のうちに一度改正に立ち会ってきたことになる。
 日本国憲法には103箇条あるが、そうした個々の条項よりも重要なのが「前文」。ここに現行憲法の趣旨理念が尽くされている。ただしGHQとの折衝やらいろいろあって、スッと理解できない悪文の見本と評される。いわゆるお役人文章でも、ここまで構文がクネクネして難解なのは珍しい。そうした悪文を読みこなす能力を試すのが、入試での現代国語の問題だ。
 ボクの理解するところにしたがって、憲法前文を素材にした問題を作ってみた。5分で終えると思うので、挑戦してみてください。

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出題 日本国憲法前文は4つの段落で構成されている。段落ごとに設問に答えなさい。
設問1 前文の第一段落の最初の文は「日本国民は」で始まる。これを主語とすると、述語は「この憲法を確定する」であるが、それにかかるものとして意味的にもっとも結びつきが強いのはどれか。
ー 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 ー
A: 正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,
B:われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、
C:政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、
D:主権が国民に存することを宣言し、

設問2 第2段落は3つの文で構成されている。その後の第3段落、第4段落へのつながりを考えた場合、最も重視すべきはどの文か。
ー 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 ー
A: 第1文
B: 第2文
C: 第3文

設問3 第3段落では「普遍的である政治道徳に従うことが各国の責務である」とするが、前文中で別の表現をしている箇所を第1段落中から70字以内で抜き書きしなさい。
ー われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 ー

設問4 第4段落では「日本国民は、国家の名誉をかけて普遍の政治道徳の理想と目的を達成する」としています。今回ウクライナ戦争では民主主義の存亡がかっていると政府は分析しています。国民として政府にどう行動すべきと促すべきでしょうか。
ー 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 ー
A: 世界の世論はウクライナにある。他の民主主義国の様子を見ながら、ウクライナに対して応分の支援をする。
B: 日本国憲法に基づき、主体性をもって率先してウクライナを支援する。他国にも民主主義の意義を説き、外交手段を行使して支援の協働を働きかける。
C: ウクライナは遠方であり、関わらない方がよい。ウクライナ人には戦闘をやめて降伏することを勧め、難民になった人を人道的に受け入れる。
D: 特に中国とのビジネスが重要であり、それを第一に行動するのがよい。民主主義の理念よりも、経済利益を優先させるのは当然だ。
E: その他

お疲れさまでした。

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