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622人的資源の自給は小資源国の宿命だ

「外国人労働者に特化した統計を新設へ」
 読売新聞のトップ記事です。政府(厚労省)が実施のための経費を来年度予算に盛り込むようです。外国人労働者に特化した統計を整備する目的として「①外国人労働者の待遇改善や就業支援、②専門性の高い人材と企業とのマッチング」を記事は挙げています。
 この二つ、明らかに方向が違います。わが国が再び経済成長力を取り戻すためには②の専門人材を導入が必要です。明治初期に高給・好待遇で招聘したお雇い外国人のように。しかし①の劣悪環境で働かされている外国人の待遇改善は必要なのでしょうか。そもそも外国人の国内居住は条件付き。低技能労働者は国内流入自体ができないはずです。
 合法的な外国人労働者は次のように分類されます。
A:身分に基づき在留する者
定住者、永住者、日本人の配偶者などで、日本国民と実質的に同等とされる者です。差別などが許されないのは当然です。
B:専門的・技術的分野で在留資格を持つ者
企業経営者や医師、教員など、高度な技能を持った人が該当します。その専門能力を活用している期間限定の在留です。単純労働への従事は許されないのですから、劣悪処遇はあり得ません。
C:技能実習
技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的です。習得技能を母国に持ち帰って伝播する使命を帯びています。労働者とみなすことが間違いです。技能指導を怠り、低賃金労働者扱いしている国内企業があるとすれば、わが国の国際的地位を危うくするものして厳しく処罰しなければ国の名誉が汚されます。違法就労者がいれば強制送還することになりますが、その費用を政府が立て替え、原因を作り出した受け入れ団体や企業から強制執行で取り立てなければ、納税国民が納得しません。
D:特定活動で在留している者
経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー利用者、外国人建設就労者、外国人造船就労者など、外交面での取り決めなどが根拠にあり、法務大臣が個別に認定します。
E:資格外活動
本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内で労働ができます。留学生のアルバイトなどで、就業時間が厳しく制限されます。違反すれば、即退学して帰国です。勉学費用をアルバイトで稼ごうというのは、日本人学生でも難しいのです。

わが国の法制度は、シンガポールや一部の産油国などと異なり、外国からの単純労働者を受け入れていないのです。途上国の貧しい家庭の青年が渡航費を借金して外国に行き、底辺労働で日夜働いてけなげに親に送金する。一部はなにかのきっかけでその地に溶け込むことに成功するが、他の者たちは体を壊すなどしてその地の土に戻る。よくある筋書きですが、わが国の法制度ではそういうことはあり得ません。そもそも出稼ぎ単純労働者の流入を認めていないのですから。

経営者の中には出稼ぎ外国人を安く働かせて利益を出したいと考える者がいるでしょう。でもそれは認められない。これがわが国の方針なのですから、そのことを徹底することが必要です。それでこそ法治国家です。現行法制度を厳格、徹底して実施する。それがなされていないから、本来存在しないはずの底辺労働外国人が存在するのであり、対策の順序が逆になっています。これが問題のすべてです。
出稼ぎ外国人労働者の受け入れ解禁の意見はあるでしょう。ただしその結果、国内に貧民窟のようなものができたり、周辺地域と軋轢を起こしたり、さらに日本人の労働処遇の引き下げにつながったりすることになりかねず、国民間に格差は分断をもたらします。
過去に大量に出稼ぎ外国人を受け入れた西ヨーロッパ諸国がもがき苦しんでいます。出稼ぎを終了しても帰国しない、あるいはできないからです。その結果、違法滞在になりますが、送還することができずに在留し、2世、3世と続いて行きます。その好例があるのに、あえて同じことをするのでしょうか。政治的にあってはならないことです。

 総務省によると、15~64歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない無業者数は244万人もいるとのことです。外国人労働者の総数172万人をはるかに上回っています。日本国民に働く場を提供せず、出稼ぎに頼ろうとする。そうした安易さが問題です。
 わが国は石油に代表される天然資源がありません。食料自給率も先進国で最低レベル。石油も天然ガスも小麦も大豆も輸入。昨今は工業製品も輸入です。コロナ初期ではマスクが手に入らず慌てました。昨年は給湯器がなくなり、今夏はエアコンの品不足が言われています。それもこれも国内自給の基盤が弱まっているから。これに加え、介護などの分野の労働力まで輸入するのでしょうか。国内でモノを作らず、サービス産業の労働力まで出稼ぎ外国人に依存する。では日本人は何をするのでしょう。
そして気がつけば、出稼ぎのはずだった外国人が国内に住み着き、年老いて福祉の対象になっている。分かっているのに破綻への道を歩んでいる気がします。

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