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765『オードリー・ヘプバーンの生涯』と加藤タキ、そして岸田総理の異次元少子化対策の欠陥

「世界で愛された女」「永遠の妖精」。オードリー・ヘプバーンの生涯を聴く会に行った。元宝塚スター、真琴つばささんによる朗読音楽会。
 
オードリーといえば『ローマの休日』。ある王国の皇女の設定。記者役のグレゴリー・ベッグと恋に落ちる。ローマのトレビの泉で獅子像の口に手を入れた空が「手を噛み切られた」フリをする。その直後の彼女の反応に「可愛い」と世の男みんなが「こういう娘とデートしたい」と思ったのではないか。
 
朗読の脚本を書いたのは真琴さん。宝塚時代からオードリーを自分に重ねていたらしい。憧れであり、人生の指南役。よく勉強していた。オードリーはコンプレックスがあった。背が高い、首が長い、エラが張っている、足が大きい、声が歌向きでない、、、。それも真琴さんに関心を持たせたのか。
 
朗読会はオードリーの没後30年の命日という。葬儀とともに忘れられる凡人とは違う。
 
そのオードリーと生前深い親交があった加藤タキさんが対談で登場した。ネットで確認して驚いた。戦後期の女性国会議員である加藤シヅエさんの子どもですって。ボクはずっと孫だと思っていた。タキさんは1945年生まれ。シヅエさんは明治女、1897年生まれ。算数すると48歳で産んだことになる。
 
加藤シヅエさんが国会議員として活躍したのは産児制限分野。妊娠調整、中絶合法化、優生保護法制定。現在の人権派が眉を吊り上げて糾弾する分野だが、シヅエさんの言動は当時の国民の支持を得ていた。敗戦後のわが国は人口過多、子どもの生まれ過ぎが国難であった。「多子は貧困の原因」が唱えられ、人工中絶や優生思想を推進するのが女性の人権だったのだ。今から見れば別社会のようだが、そうした時代背景で戦後の政策体系が出来上がっているという本質はいまだ変わっていない。
 
「少子化対策」が叫ばれている。本気で取り組むのであれば、その前に戦後の少子化を志向する政策体系を根底から見直さなければならないのだ。
 
岸田総理の「異次元の対策」は発想の切り替えであるはず。「兄弟姉妹は多くても二人」というのが政府の推奨である限り、少子化社会は変わらない。
 
兄弟姉妹は多いほどよい。兄弟姉妹のバスケットチーム(5人)、ソフトボールチーム(9人)、サッカーチーム(11人)ができたら楽しい。そういう世間ムードを作り出すのが政府の旗振りであるはず。世間がそう思うようになって初めて、児童手当をしっかり提供するとか、子育て世帯への税額控除とかの具体策を求める声がうねりになるのだ。国民の考えが変わらないのに単にバラマキ金額を倍増するのでは、兄弟姉妹は二人止まり。人口減少が止まるはずがない。

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