表紙は同じでも中身は?リプリント版の原版について
ビゼーのオペラ「カルメン」をオーケストラだけで演奏できるようにした組曲版という有名なものがありますが、第1組曲・第2組曲が出版されています。多くのオーケストラはKalmusのものを買って昔から使っているのですが、ある時指揮者からこんな指摘がありました。第2組曲に入ってるハバネラについて。「私の持ってるスコアにはトランペットパートは休みになっているのにパート譜には音が書いてある」
そこで私はオケが持っているスコアで確認したところトランペットパートに音が書いてあります。つまり指揮者が持ってるスコアと、オケが持ってるスコアはどちらも同じKalmusなのに中身が違うのでした。
指揮者が持ってきたKalmusの該当箇所、メロディーは1stヴァイオリンだけが演奏していて弦楽器以外は休みです。
オーケストラで持っていたスコアの該当箇所、トランペットにも音が。
同じKalmusっていってもそもそもスコアのレイアウト自体全然違うし...これは.IMSLPを見ればすぐにわかるのですが( https://imslp.org/wiki/Carmen_Suite_No.2_(Bizet%2C_Georges )、トランペットが無いほうはChoudens版、あるほうはBreitkopf版のリプリントだとわかります。この2種がなんの注釈もなく同じKalmusとして販売されていたことがわかりました。
そこで他のいくつかのオーケストラにどんなKalmusか中身を訊ねてみると、1.スコアもパートもChoudens、2.スコアはChoudensでパートはBreikopf、3.スコアもパートもBreitkopf、という様々な状態があることが判明しました。
これは一体どういう経緯なのか楽譜出版に詳しい楽譜屋さんにきいてみたところ、KalmusはまずChoudens版のリプリントを作っていたがその後にBreitkopf版の著作権が切れたのでそちらに切り替えたのではないかと。スコアとパートに両者が混在してるのは切り替え時期に購入した可能性が考えられます。
指揮者に出版社を事前に確認してもまったく油断できない事態ですが、さらに第1組曲の新しいKalmusはさらにセギディーリアにarr.McAlisterという独自のオーケストレーションが違うものが加わっているということも判明し、版の違いはますますオーケストラライブラリアンの仕事を難しいものにしています。
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