虎、自分の尾を踏む。著:並兵凡太

SSR合同、第1稿を書き上げ挑んだ初めての批評会
イメージとしては僕は文芸部とかで部誌を作る時の添削に似たものを予想していまして、事実ほとんど形式は同じでした。なんというか、「あぁ、本気で話し合いするんだな」と思ったのを覚えています。
進行としては各作品を順番に見ていく形だったんですが、気が抜けない。何故かというと、自分の番じゃなくても耳が痛くなる言葉がバンバン飛び出すんですよ。手癖とか、テンポとか。僕が言われてるわけじゃないんですけどメモが止まらない。他人事じゃないんです。平均レベルを叩き上げてやるって気概を肌で感じました。
僕の作品の番は二番目で、その中で一番言われた言葉がこれでした。

「中途半端じゃない?」

読んだ各人の感想が真っ二つに分かれる中途半端さ。心情も分かりにくくてのっぺりした印象。構成がつまらない。素材はいいのに料理が下手。……散々な言われようです。
ただここの人たちのちゃんとしてる点として、指摘と同時に解決策も一緒に出すんですよね。言うだけ言って、じゃないんです。

「俺はここがこうダメだと思った。だからこんな風に変えたらいいと思う」

がセットで出てくるので話し合いやすかった。しかもこの話し合い、ボイスチャットで行われたのもすごく良かったんです。作者側も「いやそれだとここが……」って言いやすいですし、作者の直し方が違ったらその場で「そうじゃなくて」と指摘した側も言いやすい。ついでに第三者も「私はそうは思わないな」って意見しやすい。もちろん最後は作者に任されるので、作者側は色んな意見を同時に貰えて改稿に望めるんですよね。船頭は一人だけど船員が多いから船は山に登らない、みたいな感じでした。

9月頭に行われた第1回の批評会の目標は「話の方向性の決定」。
内容はもうこの時期に決めてしまおうということだったので、僕の原稿もここで方向性を定めました。僕の場合は主に構成の見直しと補強が課題になりました。
また批評会で一番よく叫ばれたのは「読後感」
その作品を読んで作者が読者にどう思ってほしいのか。そう思わせるためにはどうしたらいいのか――その辺をSSR合同は特に重要視しているように感じました。

第2稿の提出は10月中旬。本当に冬コミ原稿か?(二度目)
秋を感じながら僕もまたこの原稿に向き直ることにしました。ここで僕の原稿は結構大きく変わります。いや、次回の改稿もめちゃくちゃに変わるのですが。自分で言うのも何ですけれどSSR合同の中で第一稿から一番変わったのは僕の原稿で間違いないと思います。

ただ指摘点が多かったので最初はどこから変えたもんかなって感じでした。これ最初から書き換えた方が早いのでは? と思いましたね。
まず第1稿を眺めながら数時間。

「……どこから手を付けたものかな」

山積みのタスクというのはそれだけで気が滅入ります。気持ちとしては夏休みの課題に近いものがありました。なのでそのノウハウを転用、僕は一番具体的ですぐ改善できそうなものから取り掛かることにしました。
その指摘は「並び方がのっぺりしている」。先述の料理と素材云々の時に言われた指摘でした。なるほど、これは解決しやすいと思いました。要するに並び方を変えればいいんですから。パズルみたいなもんです。同時に、似たような指摘として「意外性がない」がありました。これはクライマックスへの指摘だったんですが、これも同時に構成の問題として解決できるな、と。我ながら冴えています。
第1稿ではクライマックスを冒頭に据えるものにしていましたが、それをやめました。意外性がないのはひとえにこれのせいだろ、と思ったのです。慣れない手法をカッコつけて使うとボロが出ますね。しかしこれでもまだのっぺり感は拭えない。そこで、回想の入れ方を変えることにしました。ここで参考になったのはまた別の意見、「テンポ感」でした。

第1稿の構成は
【現在(クライマックス)→回想①→回想②→回想③→現在(クライマックス)】

ここに、テンポ感の時に言われた「緩急をつける」を意識してみようと思いました。のっぺりしてるのは、緩急がないからじゃないかと。幸い、回想は大きく分けて3つだったので、それぞれをバラバラに配置することに。

そして出来た構成が
【現在①→回想①→現在②→回想②→現在③→回想③→現在(クライマックス)】

現在にいる主人公の語りが起点となって過去が想起される……みたいな構成です。
これがすごい。自分でもわかるくらいに一気に『読ませる』展開になったんですね。内容は変わってないのに面白くなったというか。ただ並び順を変えただけでここまで劇的に変わりました。意見が重要だということも学びましたが、何よりそれらの意見を組み合わせる重要さを学んだ瞬間でした。

ここまで変われば後は吸収は速かったです。回想と現在の構成はこれでいいので、そこに切り替えや現在であることの指標となるキーアイテムを据えました。僕の作品、クライマックスを描くにあたって一つ『道具』が必要だったのですが、それが上手く充てられる! と思えたんですよね。

道具や構成が決まれば、主人公の語りも変わってくるのでそれに応じて回想で使うエピソードや主人公のキャラ性も変わりました。主人公のキャラ性も意見の多く出たところでしたので、その意見に答えを提示するように修正していきました。個人的にはこちらを先に弄る方が作業順としては楽なんですが、それでも構成が決まっていると地図がある状態なのでむしろ今回の場合はこの作業順で正解だったと思います。
複数の意見を分類して、それを組み合わせていく。SSR合同の改稿においてはこれが一番重要だったな、と今でも痛感しています。

もちろん、作者から考えて「それは違う」と言いたくなる意見もありました。そこはお互いに人間ですから、仕方ないことなんですけれど、SSR合同ではここでも容赦ないんですよね。
「お前の意見は違うから聞かんわ」
……とまでは言いませんが、ただ違う意見にはハッキリ言っていました。しかもこれが、言うと更に進展するんです。

「その意見は僕の書きたいものと相反するから受け入れられない」
「じゃあどんなものが書きたい?
「~~~~な感じで」
だったらこっちを直すべきで……」

のような感じでした。どう転んでもためになる。もちろん引くときは引いてくれます。
しかも今回の原稿だけではなく他の原稿にも転用できるような汎用的なものや考え方も出てくるので参加しただけ得だなと思ってしまうくらいのものでした。

そして10月中旬。第2稿を各々が引っ提げて再び行われた批評会。
……こう書くとなんか少年漫画の武闘大会みたいな趣がありますが、事実それぐらいの格闘戦ではあります。そして2回目の批評会の後、僕は大変な目に遭うのですが……それはまたの機会に!
以上、並兵でした!

・並兵凡太(@namiheibonta031
通称「虎。」
代表作に「16歳って魔法少女として結構ギリギリじゃない?」
小説投稿サイト『カクヨム』でも絶賛連載中。
連載中の小説『流され(元)王子と幼妻ドラゴン』ではキャッチ―でポップな文体が印象的だが、今回は重厚な語りと話運びが特徴的でいずれにしても非常に個性の強い文体を駆使する。
本合同では天空橋朋花と彼女に神性を見出した男という刺激的なテーマを描いた「神の証明」を担当した。

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