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カンボジアのカジノと北朝鮮

カンボジアと北朝鮮は、かなり親密な関係を維持しています。

カンボジアが北朝鮮とのつながりを深めたのは、カンボジアの国父として慕われているノロドム・シハヌーク前国王(故人)が、中国に亡命していた時代(1970年代)にしばしば北朝鮮を訪問し、当時の金日成総書記と親しい関係を築いたからだとされています。

こうしたつながりのためでしょうか。カンボジアには、北朝鮮が関係しているビジネスが展開されていました。そのうち有名なのが、北朝鮮レストランでしょう。首都プノンペンや、アンコール・ワットで有名な観光地シエム・リアップに、多い時で6店舗が営業していたようです。私も以前、そのレストランに行ったことがあります。美味しい朝鮮料理に加え、北朝鮮人ウェイトレスが、歌や踊りを披露してくれました。値段は高めでしたが、店内は韓国人団体客で賑わっていた記憶があります。

しかし、2016年1月、北朝鮮が4回目の核実験を行い、さらに翌月、大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施したことから、国連が北朝鮮への経済制裁を決議(決議2270号)。その後も北朝鮮が強硬な態度を続けたため、2016年から2017年にかけて、国連が制裁を強化。特に2017年の決議2397号では、「加盟国の管轄内で利益を得ている北朝鮮人と海外の北朝鮮人労働者を監視する北朝鮮政府の安全監督員の24ヶ月以内の国外追放」という内容も含まれたため、カンボジア国内にあった北朝鮮レストランも、次々に撤退せざるを得なくなりました。

とはいえ、それは表向き。

レストランは目立ちますので、さすがに営業は許可できないものの、見えない部分ではカンボジアはまだまだ北朝鮮に便宜をはかっています…いや明確な証拠がないので断言できませんが、少なくても便宜をはかっていると疑われています。

アメリカの情報機関は、カンボジアのカジノ・ビジネスに北朝鮮が関わっているとみています。なるほど、たしかにカジノを絡めれば、おカネの動きが把握しづらくなります。

カンボジアのカジノ・ビジネス。

国連が介入してカンボジア内戦が終わり、復興が始まって間もない1995年。中国系マレーシア人が資本を投じた Naga Corpがカジノ事業を始めました。同社はその後、2006年に香港に上場。中国の資本もかなり入るようになっています。

※下の写真はプノンペンの一等地にある Naga World Hotel and Resortのホームページから転載。

この Naga Corpに北朝鮮が関係しているという報道はありませんが、この Naga Corpがおおぜいの外国人観光客を呼び寄せ大成功したことから(そしてカンボジア政府高官にとっては、カジノ・ビジネスはカネヅルとしての旨味が増すばかりだったことから)、外資によるカジノ・ビジネスが積極的に誘致されるに至りました。この流れの中で、カンボジア南部のビーチリゾート、シハヌークビルには、中国資本のカジノが乱立。その中に、北朝鮮の工作員が関係しているビジネスも横行している、というのがアメリカの主張です。

もちろん、カンボジア政府はそれを全否定。国連加盟国として、制裁に全面的に協力していると訴えています。

で、ついにアメリカ政府が自国の企業に警告を発しました。

「東南アジアで活動している中国系マレーシア人の Wan Kuok Koiという人物は、北朝鮮の工作員、Kim Chol Sokと協力して、カンボジアのカジノ・セクターで複数の違法行為を行い、その収益の一部を北朝鮮に送金している。よってこの人物が関係している企業との取引は、アメリカの法律によって罰せられる」。

この Wan Kuok Koiは、かつてマカオを拠点とするマフィアの有力者でしたが、当局に逮捕されて14年間服役。出所後、カンボジアやミャンマーを舞台に、カジノ・ビジネスに関わって富を築いているようです。そしてその背景に、北朝鮮の影がチラホラと。

最近も北朝鮮は。ミサイルの発射実験を繰り返して世界の注目を集め、経済制裁緩和につながる交渉の糸口をつかもうとしているようです。その活動の背景に、カジノのカネが回っているとは…。しかも、カンボジアに投じられている中国資本の陰で。

こういうのを、「巧妙化」というのでしょうね。

平凡な一般市民である私たちにとって、この世界は複雑に感じられるばかりです。こんなことから、戦争のための軍備に費やす資金がつくられてはたまりません。

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