見出し画像

病院を退院後、リハビリを専門家から受けられない!?

 言語聴覚士として、
高齢者に元気な未来を届けている
八田理絵のこれまでのストーリーです。

第4回の記事は、こちら。

月日は流れ、2019年の6月
私は、2児の母になっていた。

一人目は8ヶ月、二人目は3ヶ月で
迷うことなく、フルタイムで復職した。


1人目出産前後の時、
病院は土曜日も勤務があり、
6連勤になる事もあった。


土曜日にくたくたになって
ギリギリに保育園にお迎えに行くと、
ベテランの先生に
「お母さん、そんなに頑張らんでも。」

「(赤ちゃん)頑張らさせ過ぎちゃう?」
と言われて、暗い気持ちで思った事だけ、
記憶している。


必死過ぎて、当時のことは思い出せない事が多い。
親の入院やら、色んな事も重なって
大変な時期だった。
色々考える余裕がなかったんだと思う。


新たなるスタート


そんな中、私はある
入院患者さんとご家族との出会いで、
考えさせられる事があった。


病院に勤務する中で、入院中の患者さんが、
退院後リハビリの専門職がいない、
他の支援体制も少ないという理由で、
「食べること」や「話すこと」のリハビリを
継続して受けられないという問題に気づいたのだ。


少しでも現状が変えたいと、
それならば、私が退院後の受け皿になればいいと、
2019年の7月に訪問看護ステーションに
転職を決めた。

訪問でのリハビリが始まる


訪問でのリハビリを支えてくれたのは、
言語聴覚士の先輩であった。
この先輩の指導があったからこそ、
新しい環境でも、スタート出来たのだと思う。

そうでなければ、仕事と子育ての両立は
出来なかったと思う。 

訪問先での出会い

訪問では、色んな方に出会った。


神経難病のご利用者さんも多く、
病院では余り使った事がなかった
透明文字盤や、視線入力装置について
急いで学んで、導入できるようにした。


また、ある神経難病のご利用者さんは、
徐々に口から食べる事が難しく
なってこられていた。

そんな中で、ここでも頼りになったのが、
やっぱり、管理栄養士さんだった。
ベテランの訪問管理栄養士さんが、
お家で色んな調理の工夫をして下さった。

言語聴覚士は、口や飲み込みの力を評価し、
どのように食べていただくのが良いか、
食べ方や姿勢のを調整行なった。

歯科の先生や歯科衛生士さんも加わり、
歯科、栄養、リハビリは、
「食支援チーム」と名付けられた。
何とも、心強いメンバーであった。

胃ろうでも経口摂取の可能性はある

ある方は、病気と加齢で
飲み込みの機能が落ちて、
口から食べ物を食べることが
少しずつ難しくなられた。

その後、誤嚥性(ごえんせい)肺炎になられ、
病院で、食事を口から取るのは難しいだろうと
判断があり、胃ろうを造られた。
(胃ろうとは、胃に穴をあけて専用のチューブを挿入し栄養補給をする方法のこと)

介護に熱心な娘さんが、
「口から美味しいものを食べて元気になって欲しい。」と希望され、私が訪問リハビリが開始となり、お家でのリハビリでの食べる練習を始めた。

ご利用者さんには認知症もあり、
発話はほぼ難しく、
時々不明瞭な言葉の連なりを話される。
また、感情を抑制する事が難しいこともあり、
大声や手が出てしまう事もあった。

私は、口や喉の様子をきちんと確認し、
今までのご様子を聞くところから始めた。

体を触られたりすることに
拒否があることもあったので、
その日のご本人の気持ちの様子を拝見し、
言葉がけ等も工夫していくうちに、
やり取りがスムースにいく日が増えた。


そして、食べるリハビリも進んでいく、
ゼリーやプリンを食べられるようになり、
1日のうちに1️食はムース食も
召し上がられるようになった。

娘さんは、いつも色んな物を準備して下さった。


私は、介護に熱心な娘さんに
お疲れが出ていないか心配になり
お声掛けした事があった。
その時にこうおっしゃった。


「私は大丈夫です。
今、父がこうして食べられる事が
嬉しくて仕方がないんです。

ただ、こうなる前に、もっと早くに誤嚥の事を
知っておきたかったかな。

取り組めた事があったかも知れないし。
ぜひ、多くの方に、こうなる前の
早いうちから誤嚥のこと、
肺炎のことを伝えて下さい。

私自身も、元気でいられるように、
教えていただいた口と喉のこと、
自分の健康にも気を付けていきますね。」と。


病気以外にも、加齢や老化によっても
飲み込みの機能は落ちていく。

娘さんだけでなく、
多くの方から聞いたのが、
「もう少し早く知っておきたかった。」
という言葉。


私の願いは、

「専門家でない人もできることがわかり、誤嚥性肺炎で苦しむ人が減る」 

「誰もが元気で豊かで、大切な方と一緒に食事をしながらありがとうの気持ちで満たされて過ごせる。」


多くの方に早い段階で
嚥下障害や誤嚥性肺炎について
知っていただけるよう伝えていきたいと思っている。


長い文章をここまで読んでいただき、
ありがとうございます!
(次回で最終回!第6回に、続く)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?