見出し画像

病院食は不味いもの!?「病院のこの食事が、最期の食事になるかもしれない」

言語聴覚士として、
高齢者に元気な未来を届けている
八田理絵のこれまでのストーリーです。

第3回の記事は、こちら。

私を変えた「管理栄養士」さんの一言

広島で5年間言語聴覚士として勤務したが、
2012年、結婚を機に、再び京都に戻ってくる。
そして、256床の急性期病院に就職をする。
言語聴覚士になって6年目の春のことだ。

急性期病院ではあるが、
脳血管疾患よりは、ご高齢の患者さんが多く、
嚥下障害のリハビリや
誤嚥性肺炎のリハビリが主の仕事だった。

この病院で、私を変えた
「管理栄養士」さんの、この言葉。

管理栄養士さんに、
はじめに会った時にこう言われたのを
はっきりと覚えている。

「病院で食べるご飯がこの方の最期の食事になるかもしれない。だから、毎回、最高に美味しい食事を出したいんです。」

ハッとさせらた。

それまでは
「病院のご飯は不味くて仕方がない。」
と心のどこかで思っている節があった。

過去の自分を恥じる

そして、リハセンターに
勤務していた時の事を思い出す。

ある患者さんに、こう言われた事があった。
「なぁ。八田ちゃん。うまいもんが食いたい。」
「とろみが不味い。何とかならんか?」

脳梗塞の後遺症で、片麻痺の患者さんだった。
タオルで良く流涎を拭きながら、
いつもキコキコと車椅子をこがれていた。

時々、看護師さんのお尻に、
つい手が出てしまう事もあり、
怒られている姿を何度か目撃した事がある。


この方は、飲み込みが難しくなり、
ミキサーにかけた食事が提供されていた。
水分には、とろみ剤。
食事は、単にミキサーにかけただけでは、
「緑色のよくわからない何か」
「のりのようなお粥」

この方は、過去に里芋を窒息された事もある。
入退院も繰り返しておられた。

「いや〜〇〇さん、とろみをつけないと肺炎になりますよ。」「この間の検査でも、先生(医師)からも、そう言われましたよね。」


私は、当時の私に、言いたい。
「この対応は、間違っている。」と。
そして、この患者さんには、
心から申し訳ないことをしたと思っている。

この時の私は、患者さんの機能面にしか
目が向けられていなかった。
同じ内容を伝えるにしても、
他の言い方があったはずだ。

この患者さんとのやりとりから、
嚥下障害があっても、色んな工夫を考えて、
「最高に美味しい物を召し上がっていただく」
今の私は、そう、決めている。

自分が入院しても食べたい食事


さて、京都の病院の食事に話を戻したい。
ここの病院は、普通の食事も嚥下食にも
かなりこだわりがあった。

配膳を配る看護師さんや助手さんが、
「わ〜いい匂い!今日の〇〇美味しそうね。」
と配膳していく。この光景が当たり前の病院。

私も入院した時の楽しみは食事だったなぁと思う。
病院の食事が不味いって辛い事だな。

一方で、病院の食事作りは、
一筋縄ではいかないものだろう。
病院食にもコストがかかるから、
どこの病院も食事を作るのは大変だと聞く。

ここの管理栄養士さんたちは、
情熱の塊のような方で、
調理の工夫や食欲がわく工夫等、
たくさんの事をされていた。

嚥下障害のある方には、
ミキサーにかけるのではなく、
ゼリー固めにしたり、見た目も美しかった。

他にも、ありがたかったのは、
嚥下障害のある方にリハビリをする時。
全く口から食べていなかった方と
少しずつ食べる練習をする時。


いつも栄養科に相談すれば、
その方に合った物を直ぐにパッと
準備してくれた事だ。


また、こちらの病院でもNST
(栄養サポートチーム)の
一員として活動させてもらった。

リハビリをする上で、
COPDの患者さんや、
癌の化学療法をされている方、
食欲不振の患者さんの
栄養や対応ついても学ばせてもらった。


また、1番大事だと思った事は、
患者さんが、どんな物がお好きか、
今の身体の具合で、どんな物なら口に出来そうか、 
ご本人の気持ちを確認しながら関わることを
なにより、大切にしていた点だと思う。

京都の料理人さんと考案された嚥下食

また、ここの病院では、行事の時には、
京都の料理人さんと一緒に考案された
メニューの嚥下食が提供される事もあった。


この開発話だけで、
何話も記事が書けてしまうので、
今回は割愛させていただくが、
例えば、このような食事である。

(取材にこられました)

NHKの番組「サキどり」

食べ物をかむ力や飲み込む力が低下した方に
日本料理を味わってもらおうと、

京都府内の病院や介護施設の栄養士、
京料理の料理人さんが、
共同で新メニューの開発したものだ。


開発の話し合いにも
参加させてもらった事があったが、
色んな頭の中の根本が、覆された。
まるで黒いオセロが白いオセロに
ひっくり返っていくような感覚がした。


私も、このお食事を患者さんが
召し上がる時に同席する事ができた。
皆さん大変喜ばれており、
同じ時間を共有出来た事を嬉しく思っている。


長い文章をここまで読んでいただき、
ありがとうございます!
(第5回に、続く)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?