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「本当に必要なものだけを残す」顧客体験をアップデートするBAKE流EC改革の中身

思わずうっとりとしてしまう焼きたてのチーズタルトや、旬のリンゴをたっぷり使ったカスタードアップルパイ。BAKE INC.は、つくり方、見せ方、届け方、お菓子作りのすべてのプロセスに本気で向き合い、数々のお菓子を進化させ続けている。そんなBAKEの使命は、いつもそばにあって食べる人のしあわせへとBAKE (バケ) るお菓子をつくること。そのミッションを実現するためのEC改革について、BAKEでOMO推進を担当する宮里さんに話を聞いた。

お菓子を進化させ、食べる人のしあわせにBAKEる

—BAKEとはどのような会社ですか。 

「しあわせに、BAKEる。」をミッションに、BAKE CHEESE TARTやRINGO、PRESS BUTTER SANDなど、いくつかのお菓子ブランドを展開しています。オペレーションをシンプルにしながらも、徹底して「おいしいお菓子を追求すること」にこだわっています。

—宮里さんのお仕事内容について教えてください。

現在は、OMO戦略を担当しています。「おいしいお菓子をつくる」というと、店舗での取り組みをイメージするかもしれません。ですが、BAKEが目指しているのは、近くに店舗がない方にもおいしいお菓子を“いつもそばに”感じてもらうこと。その取り組みのひとつとして、ECやアプリをきっかけにお客様とBAKEの関係を築く仕事をしています。

宮里さん (BAKE INC. ブランド戦略室コミュニケーションチーム)

バラバラだった顧客体験を繋げるためのOMO改革

—ECをスタートさせたのはいつ頃ですか。

公式オンラインストアの「BAKE THE ONLINE」がオープンしたのが、2020年の6月です。ちょうどコロナが重なったのもあって、急ピッチでリリースしました。
それ以前からスマホアプリ (以下、旧アプリ) やLINEを運用していたのですが、会員情報の一元化ができていませんでした。お客様にとっても、店舗・オンラインストア・LINE・旧アプリなどのプラットフォームがバラバラな状態で、オンラインとオフラインの体験がうまく繋がっていなかったですね。BAKEをもっと身近に感じていただくためには、ECの基盤そのものを整理しなければという課題を抱えていました。

—実際にオンラインプラットフォーム改革を始めるきっかけはなんだったんですか。

オンラインとオフラインの顧客情報を一元化するための方法をずっと探していたんですが、新たに開発をするとなると膨大なコストがかかってしまう。そんなときにタイミングよく「Omni Hub」を運営している会社のフィードフォースさんからご連絡いただいたんです。そのことがきっかけになりましたね。

—具体的にはどのようにして、店舗とECの顧客体験を繋げていったのですか。

具体的にやったことは次の3つです。1つ目がShopifyに「Omni Hub」を導入して、店舗で導入していたスマレジとShopify上の顧客情報を連携したこと。これによって、お客様が店舗・ECのどちらで買い物をされてもポイントを共通化することができるようになりました。
2つ目に「モバイル」と「VIP」(提供:株式会社Appify) を導入して、スマホアプリをリニューアルしました。旧アプリでは、オンラインストアで購入してもポイントを加算することができなかったんです。このリニューアルで、新しくなったアプリとShopify・店舗間でシームレスに会員情報が連携できるようになりました。加えて、先行販売などの顧客ロイヤリティを上げるための具体的な施策もアプリを通じてできるようになりました。
3つ目は、「CRM PLUS on LINE」(提供:株式会社ソーシャルPLUS) を導入したこと。これによって、LINEから簡単に新規会員登録をすることができるようになりました。また、会員証の表示もLINEで簡単にできるようになりました。
これらの3つを並行して進めていくことで、バラバラだった店舗とオンラインでの体験が繋がるように改革を進めていきました。

PR TIMESより引用

—最終的にこの3つの会社のサービスを選ばれた理由はありますか。

他社のサービスも検討したんですが、店舗とオンラインショップのポイント機能を新たにカスタマイズすると何百万円もかかるということだったんです。
もともとオンラインストアにShopifyを使っていたので、Shopifyを起点にしてもっとシンプルにアップデートできないかと考えた結果、リーズナブルに導入・運用ができるものを選びました。

—開発や運用していく際に、困ったことはありましたか。 

開発をするにあたって、今回お願いした3社の方たちと私たちでSlackのチャンネルをつくっていたため、困ったことや、疑問点はそこですぐに共有できたのでとても助かりましたね。どの会社に聞けばいいか分からないことでも、Slack上で各社のご担当の方がすぐにリアクションしていただいたので、スムーズに進めることができました。

—実際に運用してみて、コスト面での変化はありましたか。

もともと運用していた旧アプリだけのときと比べて、運用コストはそれほど変わっていないです。ただ、旧アプリでは出来ることがかなり限られていたので、費用対効果は確実に上がりましたね。

—LINEとアプリのすみわけはどのようにされていますか。

初めて店舗で買い物をしてくださった方が、その場でアプリをダウンロードして会員登録をするとなると少しハードルが高かったんです。そこで、LINE経由で簡単に会員登録ができるようにしました。店舗で会員登録をしてくださった方は2回目の購入に繋がりやすいということも分かっていたので、最初のハードルはできるだけ下げたかったんですよね。
LINEに対してアプリは、お客様のロイヤリティを上げるためのプラットフォームだと考えています。現在だと、アプリでの先行販売などの取り組みをしています。今後は、ファンでいてくださるお客様のリピートにつながるような施策をもっとしていきたいですね。

公式LINE (左) とリニューアルしたアプリ (右)

OMO改革からわずか5カ月で5.6万人の新規顧客を獲得

—ECのプラットフォームをリニューアルして、実際にお客様からはどんな反応がありましたか。

新しくなったアプリやポイントプログラムをリリースしたのは2021年12月でした。それまでにリーフレットなどで事前に案内はしていましたが、アプリの仕様がガラッと変わったので、旧アプリを愛用してくださっていた方からは問い合わせがたくさんありましたね。
別の見方をすると、旧アプリを使っていただいたお客さんがそれだけBAKEに愛着を持っていただいていたんだということも分かりました。今では、問い合わせは落ち着いて新しく登録してくださる方が増えてきましたね。

—リニューアルの前後で会員数はどのように変化しましたか。

2年以上使っていただいた旧アプリのときの会員数は8万人弱でしたが、アプリやLINEを2021年12月にリニューアルをしてから今年の4月末までの5カ月の間に5.1万人のお客様が新たに会員登録をしてくださいました。
アプリ限定の先行販売などを実施したこともあり、お客様が増えてきています。

「新しさ」ではなく「お客様が使うもの」を残す

—旧アプリからリニューアルするとき、どのようにしてアプリの仕様を決めていったのですか。

できるだけシンプルに顧客体験をアップデートしたいと考えていたんですよね。たくさんの機能が盛り込まれたアプリを開発するのって時間も労力もかかる。それに、使われてるかどうか分からない機能に対して、ずっと費用を払う必要はないんじゃないかと思って。進化していくためにも、お客様にとって本当に必要なもの以外は切り捨てることを選びました。
ちょっと前、実験的に店舗でのモバイルオーダーができるようにしてみたんです。ただ、実際はお客様からの注文はそれほどなくて。当たり前ですが「新しい機能 = お客様が必要としているもの」ではないんだなと。
私たちにとって一番重要なのは「おいしいお菓子をつくって、届けること」であって、オンライン関連のアップデートもその一部。その軸をぶらさずに、お客様にとって最高の体験になるような設計にしていかなきゃいけないと思っています。

—最後に、今後の展望について教えてください。

店舗もECも、どちらも気軽に行き来していただけるような環境をつくっていきたいですね。お客様にとっての選択肢が増えることで、BAKEを身近に感じていただけると嬉しいなと思います。
あとは、わざわざアプリをダウンロードしてくださる方にどうやって還元していくか。そしてその先に、ファンでいてくださるお客様が周りの方にどうやって広めていただくのか。そのための仕組みをつくっていくのがすごく重要なんじゃないかと考えています。
一時的なポイントキャンペーンで会員数を伸ばしていくというよりは、長期的にBAKEのファンでいてくださるお客様との出会いをつくっていきたいですね。


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