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オタク × ストリートで独自路線を突き進むBAITとは何者か?

BAIT(ベイト)というショップに訪れた経験がある方は、その時の強烈な印象が記憶に刻まれているのではないでしょうか?外観からはまるで「おもちゃ箱」のようであり大人でも童心に帰って楽しめる。アメリカ発のセレクトショップでありながら日本の文化の息吹を感じさせるような空間。

まさにBAITが掲げる“HYPE(中毒性)”、“FUN(面白さ)”、“UNIQUE(唯一無二)”を体現している同ショップには、日本上陸からわずか4年で熱狂的なファンが常に押しかけています。今回はショップ・EC双方で熱狂的なファンを創り上げるBAITの仕掛けについて、株式会社TSIホールディングス傘下、株式会社スタージョイナスでBAIT事業を統括される三浦さん・田山さんにお話をお伺いしました。

スタージョイナス BAIT事業部 事業部長 三浦さん(右)
同 店舗運営マネージャー 田山さん(左)

BAITとはどんなブランドなのか

— セレクトアイテムに雑多なイメージがありますが、ショップの背景となるカルチャーは何なのでしょうか?

BAITは元々、スニーカーのリセールショップからスタートしていますから、スニーカーのイメージが強いのはそれが要因ですね。そこにアパレルとトイを、コンセプトにもある“HYPE”・“FUN”・“UNIQUE”なアイテムでミックスしていますが、どれも創業者が好きなカルチャーである、というのが理由です。日本のスタッフが好きで取り扱うアイテムもありますから、国内のショップは日本独自の世界観が構築されているかもしれません。

— 世界観が重要なショップだと思われますが、構築していくのに重視している点はありますでしょうか?

アメリカ本国にはBAITが8店舗ほどあるのですが、そこのVMD・ディスプレイをベースに指示が来ます。アニメ・漫画などのコンテンツを活用しているアイテムは、基本的には本国が企画している事が多く、本国のフィルターを通して日本のコンテンツをアイテムに落とし込んで展開している、所謂「逆輸入」な商品になりますので、国内で流行しているコンテンツとはややタイムラグがあります。インバウンドのお客様に人気があるのも、それが要因ですね。

ですが、日本のショップは本国に倣うだけでなく、同時に日本独自の見せ方も大切にしています。例えば、ショップには木箱を詰んだようなディスプレイがあるのですが、ひな壇にして写真を撮りやすいよう工夫をしてみたり、トイ・アパレル・スニーカーをカテゴリーごとに配置したりと、お客様の回遊導線や習慣に合わせてローカライズしています。カラーリング一つとっても、どの組み合わせが商品を魅力的に見せるか?検討しています。ECも同様の考え方で運営していますので、UIは本国より優れたものを構築できているという自負はありますね。

BAIT 公式サイト:https://baitme.jp/

— 商品に利用されているコンテンツを見ても年代・ジャンルがばらばらなイメージがありますが、選定の基準はあるのでしょうか?

店舗スタッフは比較的若く20代中心なのですが、その世代の方々の好きなコンテンツも取り入れ、ショップが構成されています。

店舗スタッフは、主にファッション・スニーカー好きな方が多いのですが、中にはアニメや音楽が好きという理由で入ってくる方もいたりと、様々なカルチャーが交差する場所になっています。そのような若者の文化がクロスオーバーして、店舗のイメージが出力されている感覚はあります。

一方で本国は社内に40代半ばの方が多く、それが理由で日本の古いアニメコンテンツが多く採用されています。オタク気質であり、アニメやスニーカー・ファッション好きが集まっています。そのような国籍や文化、年代の差を超えた集合体から具現化されたのがBAITというショップなのです。

オタク × ストリートカルチャー

— 日本のアニメ・漫画のキャラクターの製品が店頭・ECに並んでいますが、創業者が日本の文化に影響を受けているのでしょうか?それとも、戦略としてローカライズしての展開でしょうか?

両方ありますが、比較的新しいコンテンツは日本独自で仕入れています。BAITのコンセプト・世界観を日本独自に解釈してバイヤーが仕入れるのですが、若いスタッフの新鮮な感覚を取り入れつつ、世代間で感覚の乖離が起き過ぎないよう調整しています。

日本企画の商品ではありませんが、例えばこちらの「NIKE ICON FLIP COLLECTION」のようなキャンペーンは日本独自のプロモーション企画です。NIKE・BAIT・atmosでしか販売されない商品展開がありましたので、それなら「日本独自でプロモーションしたい」と社内で決断。NIKEジャパンと本国のBAITの許可が必要でしたが、アニメーターのアサインなど全て国内のスタッフで対応しました。「目玉商品の展開」のようなフックがあると、ローカライズした企画をするケースがよくありますね。

— 本国のインスタグラムで日本の漫画・アニメのキャラクター製品も見ますが、反響はあるのでしょうか?

海外のコミコン(comic book convention)では、日本のアニメ・漫画コンテンツの商品が出ると長蛇の列ができる事も珍しくありません。BAITでも遊戯王のアパレルを海外で販売した際に行列ができています。また、遊戯王コラボアイテムの販売の際に店内でトレーディングカードをディスプレイし、実際にゲームもするというイベントは大きな反響がありました。特に東南アジア・アメリカ・中国・韓国の方からが日本のショップでも反応が良いです。今後、このような国内のコンテンツは日本フォーカスで進めていき、本国で展開できるような企画をもっと増やしたいですね。

BAIT本国のインスタグラム

— オタク×ストリートファッションというジャンルは他には無いスタイルだと思われますが、ベンチマークはありますか?

実は競合となるショップ・ブランドは全く無いんです。細かいカテゴリーで見るとあるのですが…。例えばスニーカーだけにフォーカスするとatmosさんだったり。ショップ全体で見ると、強いて言うならXLARGEさんですかね。今でこそ日本のローカライズしたイメージが混在していますが、元々は創業者の趣味をそのままショップにしたのがスタートですから。そのせいか、お客様の趣味嗜好もバラバラです。日本の顧客様はスニーカー好きの人が割合としては多いですが、進撃の巨人が好きでコラボの時だけリピートする方もいらっしゃったりします。

— 既存のファッションブランドとはカテゴリーが異なるように思えますが、どのように認知拡大しているのでしょうか?

そこまで大々的に認知を取る為のプロモーションは打っていないんです。目玉となる商品展開があれば、細かくプレスリリースは出しているのですが。スニーカーの展開ならスニーカーウォーズやスニーカーダンクが報じてくれますし、聖闘士星矢のコラボの際はHypebeastが報じてくれました。この動きが一番認知度を上げました。
BAITの場合、レアなスニーカーの取り扱いがあるからというのも強いです。

SNSではX(旧Twitter)が拡散性に強く、サブカル系のコンテンツはXで認知が取りやすいですね。あとはSNS広告をinstagram・Twitterで出稿しているくらいでしょうか。BAITの場合、コンテンツ軸で出稿するのでターゲットが非常に明確なのです。本当はこのような取り組みから、アニメや漫画、映画好きにも今以上に認知して欲しいです。

— どのようなお客様が来店・または購入されるのでしょうか?

先述しました通り、好きなコンテンツによって顧客層が大きく変わりますし、渋谷や心斎橋など、出店場所によって来られる方が全く違います。渋谷店で20代後半の女性が突然フィギュアを買っていくこともあり、ここが非常に読みにくいのです。

とは言え、良い影響もありまして、スニーカーを買いに来た人がついでにアニメ関連のグッズ・フィギュアを購入したりと、カルチャーを横断したセット販売が生まれています。取り扱いアイテムが年代別・ジャンル別で多種多様なので、来られたお客様からすると過去に何かしら触れていたものがあるようで。改めてカテゴリーを限定する必要が無いと感じましたね。

創業者も、ストリートファッションが好きですが、威圧的・排他的ではなく、フレンドリーなショップにしたいという思いが強く、多様なお客様を幅広く受け入れる事ができるショップになっていけたら嬉しいです。

理想のロイヤルティプログラム

— お客様に店舗とECの両方で購入して頂く為に注力している事は何なのでしょうか?

簡易な取り組みですと、モバイルアプリをインストールして頂いたお客様には、店舗とECで使えるクーポンを1枚ずつ発行しています。「ウェルカムクーポンを1回だけ使って終わり」という事は回避したいですし、店舗とEC双方でお買い物して頂く事でBAITの良さが伝わると考えています。

大局的なところでは、「ロイヤルティプログラム」の提案を強化する事です。その為にShopifyに変更したという背景もあります。これは日本独自の文化ですが、特に抽選販売の部分ですね。抽選販売のロジックを適正化し、上手く回す事は社内の至上命題でもありましたし、お客様の購買実績に基づいた抽選ロジックにする事で店舗・EC双方でのお買い物を促進する、という方針です。市場を見てもスニーカーの熱が徐々に下がっているのはわかりますから、なるべくその前に手を打ちたいという気持ちが強かったです。

BAIT公式アプリ

 — BAITが目指す理想のロイヤルティプログラムはどのようなものでしょうか?

会員ランク限定の取り組みは更に増やしていきたいですね。例えば人気アイテムの購入券や限定セールなどでしょうか。BAITはロイヤルティプログラムを導入する前から会員が10万人以上いましたので、急激な変更は混乱を招きやすく、シンプルな形でスタートしています。やりたい構想はあるのですが、まだまだ実現できていないのが実情ですね。

BAIT CLUB(今後ブランド独自の取組が増えていく)

アイテムとしてはやはりスニーカーが強いので、会員ランク上位の方の母数が非常に多いのですが、中には転売目的の方もいらっしゃいます。BAITとしては、本当にその商品が好きで着用したいと求められるお客様に商品をお届けしたいですから、将来的にはそこも適正化していきたく思います。このような機能が過去より安価に、よりスピーディーに実行できるのはAppify×VIPの優れたポイントと言えます。

編集後記

これだけ多種多様な文化が入り混じった空間を構築すると「本当にこのようなショップが成り立つのだろうか?」と考えてしまいがちですが、凝り固まった固定観念を良い意味で覆してくれるようなお話を聞く事ができました。

本来、人間のライフスタイル上には多様な文化が混在しているはずですが、マーケティングに慣れてしまった私たちは「このジャンルが好きなユーザーは同ジャンルのこれが好き」と思い込みやすい。我々がその対象物を好きになる時にルールなど存在せず、行動規範も無いという当たり前の事を強く感じさせられます。

そのような自由な発想から生み出された強いコンテンツ・企画があれば、自ずと拡散力を持ち、熱狂的なファンが生み出される。こだわるべきはコンテンツ・企画力であり、世代・ジャンルを超えてお客様が楽しめる空間をどう生み出すのか。WEBはあくまで拡声器であり、そもそもの商品力は現場の方々の「お客様を楽しませたい」という強い想いから始まっている事をBAITという「文化の交錯する場所」が率先して体現しているように思えました。

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