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白川郷のカゴ作家 お山からこんにちわさんのカゴ<材料編>

 私の働くトヨタ白川郷自然學校は世界遺産白川郷合掌集落から3kmほど林道を上った山の中にあります。訪れるお客様に白川郷や白山周辺で活動されている作家さんたちの作品をぜひご紹介したいと思い、自然學校のショップで販売させてもらっています。
 作家の皆さんそれぞれにものづくりに込められた思いや物語があって、とても店頭のPOPだけではお伝えできないので記事にしてご紹介させてもらうことにしました。

「お山からこんにちわ」さんのクルミのカゴ作りワークショップ

 今回ご紹介するのはカゴ作家「お山からこんにちわ」の大豆村沙里さんが作るクルミのカゴです。カゴ作りをワークショップにして体験希望者と素材を採るところから始めるというので、見学させてもらってきました。
 6月の台風一過ですっきりと晴れた爽やかな朝、大豆村さんと参加者の皆さんが自然學校へ集まりました。これから自然學校の森でカゴの素材を採るということで、皆さん長靴にノコギリ、剪定ばさみを携えて山仕事の格好バッチリです。

お山からこんにちわの沙里さん。山仕事スタイルも素敵です。


ワークショップの参加者の皆さんが集合。

 自己紹介と、沙里さんの「カゴ作りにはたくさん感動があります。いっぱい感動していってくださいね。」という言葉の後、いざ、山の中へ!と出発した道路から100mほど入った所でもう目的地のクルミ林に到着!私たちスタッフからしたらこんなに身近な見慣れた景色の中に素材になる木がこんなに生い茂っているなんて。正にここ白川郷の森の恵みでできている作品です。

森の中へ。

素材はクルミの若木の樹皮

 沙里さんのご主人のしんちゃんが日頃から材料調達を担当しているということでクルミの採り方をレクチャーしてくれます。「採るのは1~2年の若木です。木を伐ってしまうことに抵抗があるかもしれませんが、ここは人の住む場所のすぐ近くです。オニグルミの木は大きくなれば沢山実をつけてツキノワグマを誘引してしまうので、生き物と人の境界を保つためにここは伐採する予定です。遠慮なく伐ってください。」そう言ってノコギリの一引きでザザッと伐って樹皮に切れ目を入れると、手で樹皮を掴んで一気にベロベロっと剥いて見せてくれました。あまりの早ワザに参加者の方からはどよめきが起きていました。

この辺一帯がクルミの若木の藪です。
樹皮採り担当のしんちゃん。自然學校のコアファンはご存知。

 ここから参加者の皆さんも藪へ分け入って素材集めです。「しんちゃんはあんなに軽々と伐っていたのに」一生懸命伐った木も、「あ、それ違う木です。」「!」「・・・ノコギリ失くしたかも。」「!!」と苦戦しながらもおしゃべりを交えて皆さん楽しそうでした。というのも「私の分はしんちゃんに任せた!」宣言をした沙里さんがみんなに声をかけて笑顔が絶えない、とにかく明るいからです。(ノコギリは無事見つかりました!)

根本からザクザク伐ります。
藪の中、作業中でも笑い声が絶えません。
皆さん必要な量が採れたので場所を移動して皮剥き作業へ。

樹皮剥きに感動!

 早速樹皮を剥き始めると、「気持ちいい!」と歓声が上がりました。瑞々しい樹皮は面白いくらいにツルリと剥けます。たくさん水を吸い上げているのが分かります。剥いたばかりの樹皮は内側が薄い黄緑色をしていますが、乾燥すると黒く渋みのある色に変わり、白っぽいままの樹皮の表面と黒い裏面をどのように編むかや、どのような太さの樹皮で編んでいくかで、カゴの表情が変わってくるのだそうです。皆さんご自分のカゴをどんなデザインにするか、いろいろと思いを膨らませながら作業されていました。木が乾いていくと樹皮が剥きづらくなってしまうため、ここからは時間との勝負。そして樹皮を乾燥させてから編みたい太さに樹皮をカットして、後日また集まってカゴを編んでいき、完成は9月の予定だそうです。

伐ってすぐに樹皮を剥いていきます。
「これ最初はすっごい感動したんですよ」と沙里さん。そう言いながら今日も楽しそう。
バナナみたいに剥けるのは春のこの時期だけ。

手間と時間をかけた作品は宝物

 この森の植物を使って、こうやって素材を採るところから作家さんの手作業ということを知って、可愛いカゴに益々温もりが宿ったようで愛おしく感じられました。
 今回のワークショップは定員いっぱいで、去年から1年間待っていた方もいらっしゃいました。素材採りから手間をかけて自分のカゴを作っていく。時間をかけた分、宝物になりますね。何より皆さん楽しそうなので、私も参加者として体験してみたいと思いました。また編んでいくところも見せてもらいに行きたいなと思っています。ここまで読んでくださってカゴが出来上がっていくところが気になる方も樹皮が乾燥するまでひと月程、しばらくお待ち下さい。

 お山からこんにちわさんはクルミの樹皮等でピアスやイヤリングなど、可愛らしいアクセサリーも作ってらっしゃいます。白川郷へお越しの際はぜひショップをのぞきにいらしてください。

つづく

同じクルミの樹皮からできていても編み方で一つ一つ表情の異なる手作りのカゴ。


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