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気を引き締めるところと気を抜くところ

慎始敬終(しんしけいしゅう)
→ 物事を始めから終わりまで気を引き締めてやり通すこと。

物事を始めから終わりまで気を引き締めてやり通すことが大切だということは、大半の人が理解しているし納得できることだろう。

でも、なぜかわかっていてもできないから、こうして四字熟語となり戒めのように言葉として語り継がれているのだと思う。

なぜ、なかなか気を引き締めてやり通すことができないのか。

そこに私は結論を出した。

それは「始めから終わりまで」という部分が良くないというものだ。

最初から最期まで気を引き締めてやり続けるから、途中で挫折して無理となってしまう。

つまり、適度に力を抜くことが大切だということを主張している。

もっと言うと、集中する場所をつくるということだ。

気を抜くことの重要性

よしやろう!と決めて動き出すことの重要性は何度も説いているので、改めてここではその意義を書かないでおこう。

動き出すことができる人はそもそも少なく、せっかく動き出したのに挫折してしまう、途中で頓挫してしまうというのはもったいない。

つまり、動き出した人へ向けてのメッセージとなるので、この時点で理解できない人はここで読むのを止めた方がいいだろう。

反対にここから先のことを理解できる人は、動き出せている自分を褒めてもらいたい。

そして、継続して動けるようになる一助になればいいと思っている。

そんな人たちに言いたいのが、気を抜くことだ。

どんなことでもいいので、自分だけの時間をつくることをオススメする。

くり返すが、ただただ時間をつくるのではなく「自分だけの時間」だ。

他の人など全く関係なく、自分だけが没頭できる時間を確保すること。

それを私は気を抜くところだと表現している。

なぜなら、余裕がなければなにをやっても上手くいかないことを誰よりも知っているという自負があるからだ。

気を引き締めることは動き出すことで既にできているので、それを継続していくには逆に力を抜くところを覚えなければガス欠する。

それが、三日坊主と呼ばれる最たる要因だと私は考えている。

力を抜くことが書かれている論文

力を抜くことでパフォーマンスが向上するというのは、様々な論文でも発表されている。

せっかくなので、いくつかを紹介していこう。

1)"The Power of Mind Wandering: Restoring Attention and Enhancing Creativity" (Jonathan W. Schooler et al., 2011)

この論文では、心が自由にさまよう(mind wandering)状態が注意力を回復させ、創造性を高めることが示唆されている。

研究者たちは、人々が集中していない時間に創造的なアイデアが浮かびやすいことに着目した。

実験では、被験者に集中的な作業を行わせた後に、心の自由な思考状態(mind wandering)を許す時間を与えた。

その結果、心がさまよう状態では、創造的な問題解決能力が向上し、注意力も回復することが明らかになった。

2)"The Benefits of Taking a Break: The Impact of Detachment on Energy Renewal and Job Performance" (Sabine Sonnentag et al., 2010)

この研究では、仕事の中での適度な休憩や気分転換が、エネルギーの回復と仕事のパフォーマンス向上に寄与することが示されている。

研究者たちは、労働時間内の休息の効果を探るために実験を行った。

実験グループでは、定期的な休憩や気分転換を取り入れ、仕事に完全に没頭することを避けた。

結果として、適度な休息をとったグループは、エネルギーが回復し、仕事のパフォーマンスが向上したと報告されている。

3)"The Role of Psychological Detachment in the Job Demands-Resources Model" (Eva Demerouti et al., 2012)

この論文では、心理的な切り替え(psychological detachment)がストレスの緩和と働きの回復に寄与することが示されている。

研究者たちは、仕事とプライベートの間に明確な境界を設けることが、ストレスの影響を軽減するのに効果的であると考えた。

実験では、仕事から離れる時間を設けることによって、ストレスレベルの低下と働きの回復が観察された。

心理的な切り替えは、仕事とプライベートのバランスを保つために重要な役割を果たすことが示されている。

いずれの研究にも共通することは、適度な気を抜くことや心の切り替えが、注意力の回復、創造性の向上、エネルギーの回復、ストレスの緩和に繋がることを示している。

そして、結果的に効率的な働き方や持続可能なパフォーマンスに繋がることも示唆されている。

そもそも研究というのは仮説があって検証するものなのだが、このあたりからの知見からも参考にできることがある。

それが、上述した、物事を始めから終わりまで気を引き締めるだけでなく、適度な気の抜き方や集中しすぎないことの重要性だ。

自分だけの時間

ということで、改めて「自分だけの時間」について書いておこう。

自分だけの時間をどう捉えているのか、どう過ごしているのか、それぞれ違う概念だろう。

だが誰にも共通して言えることが、自分だけの時間を過ごすという行為自体が、気を抜くこと、リラックスすること、そして自己と向き合うことに繋がる。

読書、映画鑑賞、散歩、瞑想、スポーツ、料理、絵画など自分だけの時間になにを選ぶかは、人それぞれだ。

でも、重要なのはそれがどれほどの高級なレジャーや趣味であるかではなく、自分の内面と繋がり、リフレッシュすることができるかという点だ。

それが「自分だけの時間」の最も重要な役割となるからである。

自分だけの時間を持つことで、日々の仕事や学業、家事や育児といった日々の忙しさから一時的に距離を置き、自己を再発見する。

そうすれば、それは自身の精神的な健康を保つための大切な時間となるだろう。

多くの人は時間が足りないと感じている。

だから、自分だけの時間をつくることに罪悪感を感じるかもしれない。

けれども、自分の精神的な健康を保つことは自身のパフォーマンスを保つためにも必要だ。

それを怠ると、結果的に仕事や学業、家事や育児といった日々の仕事の効率が落ち、長期的な成果を損なう可能性がある。

物事を始めから終わりまで気を引き締めてやり通すのは確かに大切だ。

ただし、全てにおいて常に力を入れ続けると、それは自分自身のパフォーマンスを下げ、逆効果になることもあるという点を見落としている。

何度もくり返しになるが、適度に力を抜くこと、自分だけの時間を設けることが、逆に継続的なパフォーマンスを支えることにつ繋がる。

そして、この自分だけの時間を、どのように過ごすかは、各自が自分自身を知り、自分がなにに幸せを感じ、なにが自分をリフレッシュするのかを理解することから始まる。

自分自身を知り、理解するというのは簡単なことではないかもしれない。

それでも自分を俯瞰で見ることの重要性を説き続けているのは、それは自分自身と向き合い、自分自身を発見するための重要なステップだからだ。

気を抜く時間の設定方法

ということで、具体的に気を抜く時間を意図的に設けるにはどうすればいいのか。

休息時間はついつい仕事の延長になってしまうといった人たちに向けて書いていこう。

簡単な例を挙げると、無理矢理でもランチタイムをつくることだ。

仕事のことを考えず、ただ食事を楽しむ時間を設ける。

自然と気持ちはリラックスし、仕事から解放される感覚を味わうことができる。

他にも、散歩する時間を設けると良い。

新鮮な空気を吸い、自然を眺め、ただ歩く。

これもまた心をリフレッシュする時間となる。

また、趣味の時間をつくることも大切だ。

自分が好きなものに没頭する時間は、心を休ませるのに最適だ。

本を読んだり、音楽を聴いたり、絵を描いたり、なんでもいい。

自分が心地よく感じることを見つけて、それを続けることが重要だ。

これらは全て「自分だけの時間」を設け、リフレッシュするための方法だ。

この時間を大切にし、気を引き締めて働く力を回復させる。

気を抜くときと気を引き締めるときのバランス次に考えるべきは、気を抜くときと気を引き締めるときのバランスだ。

気を抜くことは大切だが、そればかりでは物事は進まない。

目標に対して真剣に取り組むためには、一定の気の引き締めが必要だ。

それは、目の前の課題に集中し、解決するためのエネルギーを発揮するためだ。

一方で、あまりにも気を引き締めすぎると、逆にパフォーマンスが下がることがある。

緊張感が高まりすぎると、思考が固定化し、柔軟な思考が難しくなる。

それに、体力や精神力も消耗する。

だからこそ、気を引き締めるときと気を抜くときのバランスを見つけることが大切なのだ。

それぞれの人が自分自身を理解し、自分にとって最適なバランスを見つけることが求められる。

自分がどの程度気を引き締めることができ、どの程度気を抜くことができるのか。

そして、どのタイミングで気を抜くことが最も効果的なのか。

これは、自己理解と自己観察が必要となる。

自分の体調や心の状態、生活環境など、様々な要素を考慮に入れて、自分自身を管理することが重要となるわけだ。

まとめ

最期に、改めて伝えたいのは、自分だけの時間を持つこと、気を抜くことは自己甘や大切なことを怠ることではない。

それはむしろ、自己への投資であり、自身のパフォーマンスを維持し、向上させるための重要な手段だということだ。

人は限られた時間とエネルギーを持つ生物だ。

だからこそ、自分だけの時間を大切にすることで、それを最大限に活用し、自分自身を最高の状態に保つことができる。

何度も同じことを言っているが、気を引き締めるところと気を抜くところ、両方をバランスよく持つことが最良のパフォーマンスを出すための鍵となる。

結局、物事を始めから終わりまで気を引き締めてやり通すことも大切だが、それと同じくらい、適度に気を抜くことも大切なのだ。

そして、なにも自分だけの時間は1人で過ごすことではない。

そのバランスを見つけることまでできた人が、本当の「慎始敬終」を実現することができる人となる。


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植田 振一郎 Twitter

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