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ライオン前で逢いましょう

大半の方は最初からオチがわかると思いますが、ワタクシの恥ずかしい体験談を、想像して面白がりながら読み進めてくださいませ。

高校時代に、先生から指定された三本の映画のうち、いずれか一作品を観て感想文を提出するという、課外授業がありまして。

仲良しグループで待ち合わせをして、一緒に観に行くことになりました。

グループのまとめ役的な子が、

「待ち合わせ場所、銀座のライオンでいいよね〜?」

と提案し、満場一致で決定。

しかしですね、ワタクシ内心

(銀座のライオン…って、どこのことだ?でもみんなそれで通じてるし、銀座駅で降りて誰かに訊けばわかるでしょ)

そう、いわゆる知ったかぶりをしたのでございます。

課外授業ではありますが、当日は制服を着て行くよう指導があり、銀座駅まで電車に揺られて行きまして。

地下鉄を降り、改札を出てすぐの出口から地上に出ましたが、手掛かりは『銀座のライオン』という、謎のワードのみ。

どちらの方向を目指せばいいのか皆目見当もつかず、道行く人に訊いてみることにしましたよ。

ちょうどスーツ姿のサラリーマンと思しきおじさまが通りがかったので、勇気を振り絞り、

「すみません、ライオンって、どっちでしょうか?」

するとそのおじさま、訝しげな顔をして

「ライオン?」

「ハイ、銀座のライオンって言われたんですけど…」

「ああ、ライオンね、こっちこっち!」

と言いながらおじさまが連れて行ってくださったのは、シャッターの降りた、営業時間前の飲食店でした。

「ライオンって言ったらここだから!」

おじさまはワタクシにそう言って、足早に去って行きましたよ。

確かに黄色の塗装の看板に茶色い文字で

『銀座ライオン』

と記されておりました。

(妙なところで待ち合わせするなあ…)

と思いながらも、そのライオンの前でひたすら友人たちが来るのを待ちました。

道行く人々が、飲食店の前に一人、制服姿で突っ立っているワタクシをチラ見している気がしましたし、待てど暮らせど友人は一人も現れず、30分経過。

その頃は携帯電話はおろか、ポケベルすら持っている子は少なく、連絡手段はありません。

諦めて来た道を戻り、電車に乗って帰宅しました。

すると自宅の固定電話が鳴り、お友達のAちゃんからよと母上に言われたので、代わりました。

「せきちゃん?どうして来なかったの!?みんな待ってたんだよ〜?」

いきなりそのように責められ、カチンと来たワタクシ、反撃に出ましたよ。

「え?行ったよ?なんであんなところで待ち合わせなんてするのよ?目立って仕方ないし誰も来ないから帰ってきたんだけど?」

「えー?ライオン前だよ?せきちゃん、ホントに来たの?」

「行ったってば!制服で飲み屋の前で待たされて、恥ずかしかったんだから!」

するとAちゃん、予想外にゲラゲラ笑い始めたのです。

「それ、ビヤホールのライオンじゃん!ウチらがいたのは三越のライオン像の前だよ!『銀座のライオン』って言ったら普通そっちでしょ〜!」

というわけで、知ったかぶりをしたワタクシ、とんだ赤っ恥をかく羽目になったのでございます。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とは、まさにこのことですね。

以来、わからないことはわからないと、素直に訊くことにしています、ハイ。

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