見出し画像

病院の待ち時間に、おじさまが放った言葉は重かった。

病院の待ち時間、予約をしているにも関わらず、なかなか呼ばれずイライラすることがありますよね。

毎月定期的に通院している私も、例外ではありません。

先月はゴールデンウイーク明けだったからか、激混みで座るところもないくらいでした。

たまたま空いていた椅子に腰をかけたのですが、先に隣の椅子に座っていた70歳前後のおじさま、イライラとした様子で何度も時計を気にしていました。

(この混み具合じゃイライラもするよね…)

そう思いつつ、いつものように文庫本を広げて順番を待っていました。

しばらくして隣のおじさまが、すっくと立ち上がり、ツカツカと受付まで歩み寄ったので、

(ああ、文句を言うのだな)

と思いました。

案の定、受付の事務の女性に

「いつまで待たせたら気が済むんだ!いい加減にしなさいよ!」

よくそういう場面に遭遇するので、最初はあまり気に留めていなかったのですが。

「こっちは9時半に来なさいと言われたから来たんだ!今何時だと思ってるんだ!」

それを聞いて私も時間が気になり時計を見ると、12時を回っておりました。

(9時半から今まで待ってたのか!そりゃ文句の一つも言いたくなるよね…)

「お待たせして大変申し訳ございません。今しばらくお待ち下さい」

事務の女性はそう言いましたが、申し訳ないとはあまり思っておらず、むしろ「面倒な患者だな…」と思っているのがありありでした。

気になり始めて二人のやり取りを聞いていると、おじさまはただ感情にまかせて怒っているのではないことが伝わってきました。

「混んでるのはあんたのせいじゃないよ?みんな我慢して待ってるのも分かるよ?でもね、せめて診察がどこまで進んでるかくらいは説明できるでしょ?」

「ではお調べしますので、少々お待ちいだけますか?」
 
事務の女性が、まさに事務的にそう言うと、おじさまが、

「私が言いたいのはね、こうして私みたいに聞きに来る人だけじゃなく、待ってるみんなが分かるようにしてほしいんだよ!定期的にアナウンス流すとか、できるでしょ?」

事務の女性、そこまで言われても表情ひとつ変えず 

「申し訳ございません」

それでもおじさまは諦めず、続けてこう言いました。

「事務的なことこなすだけが仕事じゃないでしょ?何のためにそこにいるの?待ってる患者のこと考えたことないの?」

おじさまの言っていることはもっともですが、事務の女性も自分の判断で勝手にアナウンスはできないということも、理解できます。

どうなるのかな…と思っていたら、奥から男性の事務の方が出てきました。

「誠に申し訳ございません!今、担当医にも状況を説明してまいりましたので、3番目にお呼びいたします!」

それを聞いたおじさま、

「それじゃ文句言ったら診察を早めてくれるってことになるね?それおかしいでしょ?私が言ってるのはね、みんなが分かるようにアナウンスを…」

すると事務の男性が、慌てた様子でカウンターの中から待合室に出てきて、

「お話は詳しく伺いますので、どうぞ、こちらのお部屋へ!」

と、空いていた診察室へ誘導しようとしました。

受付で大声を出されては困ると思ったのでしょう。

するとおじさま、口調を和らげ

「もういいよ。言いたいことは言ったから。どこで話そうと私の考えは変わらないしね。ただ、アナウンスの件は検討して下さいよ。診察の順番は変更しなくていいから。気長に待ちますよ」

そう言って、他の空いた席に着席。

おじさまのことを、最初はただイライラして怒鳴り散らすような、よくいるタイプだと思っていたので、そんな自分が恥ずかしくなりました。

おじさまは自分のこととしてだけではなく、患者側の気持ちをきちんと伝えてくれました。

その姿勢に頭が下がる思いでした。

おじさまの声が届くようにと、帰りに総合受付の脇にある『患者さまの声』に投書してきましたよ。

進捗状況のアナウンスが流れるようになれば、患者側も職員側も、ストレスが軽減されるのではないかと思いました。

みんなが気持ちよくいられるような病院になることを、切に願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?