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甘酸っぱくも恥ずかしい初デート

ワタクシの嬉し恥ずかし初デートは高1の時で、お相手はバイト先の大学生。

お姉さんから借りたという車で、ディズニーランドに行きました。

まだ正式な交際の申し込みはなかったのですが、男性と二人きりでほぼ1日過ごすのは初体験。

縄文式並みにドキドキしましたよ(弥生式でもいいけど)。

心配していたアトラクションの待ち時間も、会話が途切れるコトはなく、あっという間に閉園時間になりました。

パークを出る頃になって、トイレに行きたくなりましたが、うら若き乙女だったワタクシ、恥ずかしくて言い出せず、そのまま車に乗り込みました。

すぐに帰れると思ったからです。

ところがどっこい、ものすごい渋滞にハマってしまったのですよ。

ワタクシ、あまりトイレが近いタイプではなかったので、始めのうちは

(家までなんとかもつでしょ)

と、あまり深刻に考えていませんでした。

それどころか、大学生の彼が買ってくれた缶コーヒーを、飲み干す余裕すらありました。

…今にして思えば、渋滞を完全に舐めておりました。

まず、パークの駐車場を出るのに、渋滞。

高速に乗るまでも、渋滞。

高速に乗ってからも、渋滞。

遅々として進まない車に、徐々に高まるトイレへの欲求。

初デートで頭の中は隣の彼のことでいっぱいになるべきところが、トイレのことでいっぱい。

徐々に口数も減って行きました。

しばらくして、ワタクシの異変に気付いた彼、

「どうしたの?疲れちゃった?」

「ううん…そうじゃなくて」

「俺、何か気に障ることとかしちゃった?」

「そうじゃなくて…」

「じゃあどうして急に無口になっちゃったの?言いたいことあるなら言ってよ」

「…トイレ」

恥ずかしさでいっぱいで、蚊の鳴くような声でそう呟いたワタクシでしたが、聞き取れなかったようで。

「えっ?何?」

と聞き返され、我慢の限界になり、大きな声で

「ゴメン!トイレ!!」

「えっ?トイレ?トイレ我慢してたの?」

「ゴメン!」

「あとどれくらい我慢できそう?」

「いや…もう相当ヤバい…」

「じゃあ高速降りて、一般道に出るから!どこかでトイレ貸してもらおう!」

そんなこんなで高速を降り、近くにあったファミレスのトイレを借りて、事なきを得ました。

(ああ…きっと呆れられてるだろな…)

と、重い足取りで車に戻ると、意外にも彼が

「ゴメンね、気付かなくて。『トイレ大丈夫?』って、パーク出る前に訊けばよかったね…」

(この人、なんて優しいんだろう!)

それと同時に、自分が情けなくて恥ずかしくなりました。

(赤ちゃんじゃないんだし、生理現象なんだから、パーク出る前に言えばよかったよね…)

思ったことを素直に言えないままで、家の近所まで来てしまい、

「今日はありがとう。それじゃ…」

と言って、そそくさと車を降りたのでした…。

「今日は楽しかったね。最後に迷惑かけてゴメンね。またどこかに行こうね。送ってくれてありがと!気を付けて帰ってね!」

と、なぜ言えなかったのだ自分!?

大人になった今でも、ふと思い出すくらい、この出来事は印象深くて…。

それ以来、気まずくてバイト先で彼と休憩時間が一緒になっても、以前のようには盛り上がらなくなり、ワタクシが先に辞めてしまいました。

あれから30数年…もしもう一度、会えるなら。

あの時はゴメンね、好きだったから恥ずかしくて言えなかったんだよ、と伝えたいですね。

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