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【行政書士試験失敗記】21話 超直前期に潜む罠

 10月の第3日曜日は宅建試験の日である。Xでもポストしたが、受験された方に良い結果が出ることを陰ながら祈っています。

 私は毎年、この日を迎えると思う。

 ああ、行政書士試験まであと1ヶ月。

 そう、今まさに行政書士受験生にとって、超直前期と言われるシーズンである。

 この時期になると各予備校やら、講師系ユーチューバーやら、noteの有料記事やらでネット界隈は大いに盛り上がる時期だ。

 ネットを開けば「これだけやっておけば大丈夫!」だの「出題完璧予想!」だの「絶対受かる!!」だの苛烈な言葉が舞う。受験生の諸君らにとって魅惑的な言葉に飛びつきたくなる気持ちは痛いほど分かる。

 というか実際私は飛びついた。

 もし不合格なら(実際不合格になったが)、来年もまた同じ勉強しなきゃならない(実際にした)! だったらここで多少お金を払ってでも今年受かった方が得じゃないか!!!

 こんな思考が駆け巡った私は、買えるものは全て買うという暴挙に出て、少ない財布の中身を大いにぶちまけたものである。

 これを失敗と言わずになんと呼ぼう。

 言わせて欲しい。

 まずは冷静になってくれと。

 そして冷静になった頭で考えて欲しい。

 その1記事1万円以上する直前期完全講義は自分にとって本当に必要なのかと。

 行政書士試験はあなたが今まで勉強した範囲の問題しか出ない。万が一、あなたが一生懸命に勉強したのであれば、自分の勉強している範囲外から問題が出ても、他の受験生も答えられない問題でしかない。こういう問題は正解できなくても仕方がない。

 あなたが買おうとしている講義、記事、動画はあなたが苦楽を共にしてきた参考書、問題集にも載っている情報じゃありませんか? それを投げ捨てでもそっちに飛びつきますか?

 まずはそれを検討していただきたい。当然のことながら、それを手に入れるだけで行政書士試験に合格するような夢のような教材な存在しない。

 しかしながら、私はここで全ての直前期用の教材が悪だと論じているわけでは無いことも併せて理解していただきたい。

 数ある教材の中には受験生のこの時期弱りがちなメンタルを的確に突き、高い金を出して購入したものの、中身を見てみれば、全て参考書に載っていることを文字や語順やフォントやらをあの手この手で変えたものだってある。

 我々は教材の中に新情報を求めるべきではない。
 我々がやるべきことは、今まで手に入れた知識が身についているのかの「総点検」なのである。

 そう、直前期の教材の上手な利用の仕方は、この「総点検」にあると思っている。

 直前期の教材をザッと見る。

 多くは今年に出題されそうな範囲を簡単にまとめているものが載っている。それを自分が正しく理解できているのかを確認する。この教材の役割はそれだけだ。

 間違っても「こいつが行政書士試験の裏技だ!」とか「行政書士試験の出題サイクルから出題範囲を予想しました!」なんて言葉を信じてはいけない。

 あくまでも参考にする程度にとどめておくべきだと私は思う。

 出題範囲を徹底的に予想してくれる人も中にはいるが、その出題範囲が外れたとしてもその人は責任を取ってはくれない。あくまでも予想でしかないからだ。

 試験惨敗後にどれだけ恨んでも、どうすることもできない。甘んじてその結果を受け入れるしかない。

 直前期の教材は、出題範囲をザッと確認することに長けている。それはここまで「ちゃんとやってきたか?」の確認という役割だけであり、受験生の得点を飛躍的に向上させるものではない。

 結果的に飛躍的に伸びたという人は、そこにたどり着くまでに基礎が出来上がっていただけであって、秘密の講義を受けたからとかそのようなことではないのだ。

 特に直前期でありうるのが、記述問題の予想だ。
 私の経験上、

 「今年はこの論点から出題されることが濃厚です!」
 「そろそろ、ここから出ると思うんですよね! 間違いない!」

 なんて自信たっぷりに言う輩がいるが、そんなもの信用するべきではない。出る時は出るし、出ない時は出ない。

 第一、彼ら彼女らは受験生に比べて気楽なのだ。なぜなら、賭けているのは自分の首などではなく、救いを求めて彷徨う受験生の首だからだ。

 当たれば救世主としてあがめられ、外れれば受験生の首が飛ぶ。ただそれだけのことなのである。

 繰り返しになるが、あくまでもこれらは全て参考程度に聞く。このスタンスを崩すべきではないと私は思う。

 出題予想される論点はいずれにしても、重要な論点であることは間違いないわけだから、そこの論点と周辺知識についてちゃんと自分が理解しているかの確認をしておく。これに尽きる。

 記述の重要論点は択一においても重要であるわけで、私も直前期に各種記述予想についてある程度は対策を行った。

 結局、それらの論点については本番で記述問題として出ることは無かったが、択一ではその知識が随分と役に立ったことを覚えている。

 結論を言えば、直前期の教材はあなたを劇的に変えてくれるものではない。

 直前期の教材は、あなたの知識の確認を促すものだと考えていただきたい。

 決して私のように、不安に駆られて、片っ端から買い漁り、時間と金を無駄に浪費しないでいただきたい。

 試験会場であなたを支えるのは、直前に手に入れたものではなく、あなたが苦楽を共にしたボロボロの参考書。ボロボロの六法。ボロボロの問題集。これらがあなたを支えてくれるのだと私は思う。

 受験生諸君。

 私のような失敗はしないでくれ!


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