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いよいよコロナワクチンも正念場。株は売るべき?買うべき?ホールドか?態度を決めるタイミングが近づく。

さて御無沙汰してしまいましたがアメリカのコロナワクチンに関する話題です。先月末に書いた記事では「アストラゼネカのワクチンがFDAの緊急使用の承認を受けるかも」というところでした。しかしすぐに「治験の結果をすっ飛ばして拙速に承認するなんてとんでもない!?」という反動に遭い、FDAは火消しに走り、ファイザー・モデルナ・ジョンソンアンドジョンソンなど大手製薬会社は「ワクチンは安全を最優先させる」という共同声明を発表するに至りました

それからアストラゼネカの治験で副作用が確認され治験は一時ストップ。今週はFDAがワクチン認可の審査を時間をかけると言ったり、トランプ大統領がFDAの審査長期化を認めないと発言したりして毎日のようにニュースは供給されています。(細かいニュースの経緯はツイッターなどをご参照ください)。
ここでワクチン治験をリードするバイオンテック $BNTX とモデルナ $MRNA の1ヶ月の株価推移を例に見てみましょう。

バイオンテック

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モデルナ

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両社ともこの1ヶ月下値を一度掘っただけでほぼ株価は変わっていません。70ドルを超えようかという水準で跳ね返されているのがわかります。
今までとの違いは、良いニュースが出ても上放れするパワーがないことです。この1ヶ月で世の中は「コロナワクチンがもうすぐ出る」という期待が既成事実化しましたが、反面、両社の株価とも7月中旬に一瞬100ドル付近を付けたものの、その後1ヶ月で60ドル台まで下がり停滞しています。

政治的介入が嫌気されると同時に株価も反応しなくなった?

元々、コロナワクチン銘柄が脚光を浴びるきっかけとなったのは
 1. 新型コロナのパンデミックとともに解決策としての期待
 2. ワープスピード作戦に伴う国家主導での予算を伴ったワクチン開発

この2段階でした。1はまあ当然のこととして、2によってブーストして国家プロジェクトとしてのワクチン企業の株価が人気化しました。ワープスピード作戦に選ばれたとか予算が付いたとか。
しかし最近の状況はどうでしょう、トランプ政権によるワクチンの政治問題化とそれに対する現場サイドとメディアの反発で、
ワクチン開発=国家的なプライドをかけた戦い、から
ワクチン開発=皆が納得のいく透明で安全な運用
というテーマに替わった部分はないでしょうか。

今までこのブログでも「ワクチン全滅はほぼ無い、アメリカは国家というプライドにかけてワクチンに取り組む」というトーンで記事を書いてきましたが、トランプ大統領が落選するかもしれないという現状、政治的影響力の低下が影を落としていると思っています。前回の記事で下記の3つの軸でコロナ問題は動いていると書きましたが、

1. 医学的な見地からの検証。治験のフェーズ。
2. 政治的な判断からのプロセス。主に国のリーダーの意向。
3. メディアが望むシナリオ。

2の部分が弱まり、1と3が力を持ってきた結果、株の投資という意味では先の見えないリスクの高い銘柄になったという判断はできるかと思います。またこの流れにより、ロシアや中国などトップが強い国のワクチンに対し、国際的に後れを取る可能性も否定できません。

加えて現在アメリカの株式市場は、トランプ大統領の落選を含めた株価の暴落要因に多くの人が備えています。相場師は空売りを仕掛けた上で「相場の下落に備えよ」と煽り、機関投資家はポジションを整理しています。その時に「FDAの承認に失敗したら半値になるかも」という銘柄にあえて突っ込んでいく人は多くありません。むしろポジションを落とすでしょう。
これらの情報を鑑みればコロナワクチン銘柄の不振もやむを得ないかなと、考えざるを得ません。
しかし一方、元々ギャンブル色の強かった小型銘柄などには投機資金が入って強いものもあります。

これからの戦略

今までワクチンの認可を軸にブログを書いて来ました。株価のことなどわかる訳がないので、まだ予測可能な政治の動きを追っていた訳です。それは取りも直さずワクチンの認可=株価の高騰を意味していたからですが、状況は複雑化しておりいよいよ株をどうするかという判断が迫ってきていると思います。
楽観論(鈴木君)と悲観論(佐藤さん)に分けて根拠を書きますので、ご自身が賛成できるかどうかを考えてみてください。

[買い推奨・鈴木君の意見]
「今の株価は6月の水準まで後退している。フェーズ2のヤマを越えられるかドキドキしていた当時と比べて、フェーズ3まで順調に進んでいるし治験の結果はパーフェクトです。売っているのはポジションを機械的に整理しなければいけない機関投資家と、じりじりして短気で売ってしまった個人でしょう。ワープスピード作戦からの確実な売上はワクチンの認可にかかわらず決まっているし、ここから下押しするとしても限度がある。また少なくとも60ドルを切る水準では反発しており押し目買いは期待できるでしょう。私たちは個人ですからポジション整理の義務はない。株価の下落に一喜一憂すべきではありません。
リスクは大統領選挙ですが、バイデンが当選したとしてもワクチンをぶった切る訳はなく、むしろ国威高揚に繋げるに違いない。新大統領就任とともにワクチン全滅なんてシナリオがあると思いますか? 全力でワクチン開発のサポートと、経済再開への力強さをアピールするはずです。リーダーがフラフラした今の状態から脱し、製薬メーカーやファウチ所長などと勝利宣言をする絵が目に浮かびます。
ワクチンのFDAの結果が大統領選挙後にずれ込むのは、時間が稼げてむしろ好材料です。今のままでは急いでもトランプ色のいわくつきワクチンになり迷惑なだけです。新大統領を織り込む市場の回復とともにワクチン相場が再度到来し、今の株価水準が底値だったといえる日が来るでしょう。もちろんトランプ再選ならワープスピード作戦賛辞になりそれも良し。
またワクチン承認前にこれらの株から降りるにしても、マーケットが一段落してもうワンチャンスは少なくともあるはず。むしろ最後の買い場ではないでしょうか。
今は弱気な人間が下りている状態。株価が跳ねるのは疑心暗鬼から確信に変わった時なのです。皆が否定的な時に降りるということはすなわち底値で売ることに繋がります。私は下落時に買い増しこそすれ降りるつもりはありません。」
[売り推奨・佐藤さんの意見]
「マーケットに不確実性が多すぎます。大統領選挙、ワクチンの承認、予算の攻防など。バイオ・ワクチン株は売上がまだないという点でギャンブルです。マーケット全体がリスクオフの危険がある時に抱いていて良い銘柄ではありません。残念ながらアストラゼネカの件で副作用に対する世論の目も厳しくなっています。
また現場が権限を持ちすぎると大局的なジャッジが出来なくなる恐れもあります。その証拠に今コロナによる感染者・死者は過去マックスに跳ね上がっているのに、皆自分の立場しか考えてないではないですか。ワクチンを巡る議論はどっちに転んでも株価にプラスが見えません。そしてメディアやFDA・医療専門家は、もしワクチンの副作用などを発見した場合、警鐘を鳴らすことが手柄になるというバイアスがかかっている可能性もあります。つまりバイオンテック・ファイザー連合にしてもモデルナにしても、もちろんその他の企業も、ネガティブニュース1つで株価が葬り去られるリスクがあり、それはいかにもありそうなことです。
もしワープスピード作戦による売り上げの確実性が根拠として株価に反映されるのなら、エマージェントバイオソリューションズ $EBS は右肩上がりでないといけません。しかし実際は1か月前から20%下落しています。ギリアド $GILD はどうでしょうか。レムデシビルが緊急認可を受けた後、薬価が高いとか効き目がイマイチとか言われて株価は滑り台です。つまり期待されているうちが花で後は減点主義になるのです。織り込み済みという便利な言葉と共に資金が抜けていく訳です。
ワクチンが承認されて上昇する一場面はあるかもしれません。しかし企業の時価総額・過去の上昇率と、期待売上を照らし合わせてみてください。モデルナのような既に時価総額の大きい企業では、たとえワクチンが承認されたとしても値上がりは期待できないという記事もあります。大統領選挙の結果株が盛り上がるというのも希望的観測に過ぎません。
つまりワクチン相場は来たとしても長続きしないことを心配します。リスクとリターンを天秤にかけた場合、普通勝ち目の低い勝負はしません。今のまま行くと株価が既に高値であるか少なくとも上値は限られる気がしますね」
※個人の感想です。

鈴木君、佐藤さんどちらも一理あると思っています。
10月22日にFDAがミーティングをします。結論が出るかはわかりませんが、今のところ1つのターゲットイベントと見られています。
いよいよラストスパート、この先の数週間が大事です。盛り上がっていきましょう!

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