雨模様6
店の仕事も一段落した頃、サイトに一件の書き込みがアップされていた。要は急いでチェックしてみた。
どうやらミヤオはどこかの親切な猫好きさんに引き取られたみたいだ。あたしはとにかくハンドルネーム「つばくろ」と名乗っているこの人に向けて感謝とお礼のメッセージを送ってみた。
良かった。ミヤオは元気で安全な場所に保護されている。
「お、要ちゃんニヤニヤしてる所を見ると、猫ちゃんの
目撃情報でも入って来たのかい?」
「ええ、あの子元気な上に大層大切に保護されているみたいなんです。」
「そいつは良かった。さあ、これで万事めでたしめでたし。今日からはもっと働いてもらうよ。」
「はい。色々な気遣い、感謝してます。」
店長は踵を返してさっさと仕事に戻って行った。それにしても、この「つばくろ」って人は何処に住んでいるのかしら。余り遠くではないことを願っていた。早くレスが付かないかしら…あたしはちょっと焦燥感に苛まれていた。
仕事も思うようにはかどらないから、スマホは制服のポケットにしまった。
早くミヤオに会いたい。
要の心にはこの台詞しか浮かんで来なかった。
ポケットのスマホがブルブルと着信を知らせている。思わず取り出して、顔認証でホーム画面を開いた。
けれども、着信は母親からの電話だった。ダメダメ仕事仕事。店長は遠くからそんなあたしの挙動不審な様子を見て、にんまりとしている。
「すみません!」
あたしは店長に向かって大声で叫んだ。他の従業員は皆外人で、あたしが何故、店長に叫んだのか分からず、心配そうに眺めている。
結局、仕事が終わり家路につくまでメッセージは来なかった。あたしは自室の猫グッズをひとつひとつ丁寧に観察している。
とにもかくにもミヤオは帰ってくる。
つづく