見出し画像

雨模様5

あたしが目覚めると、すっかり陽がさして、窓硝子にはキラキラと宝石のように雨粒が輝いていた。

小さな硝子窓から望む雨上がりの空は、抜けるような水色だった。あたしはあくびをしながら冷蔵庫を開けたけど、ろくに食べる物も無く、缶ビールが2本と卵が3つ、それにミヤオにやりかけだった餌だけがポツポツとあり、まるで「売れ残りの品ばかりのショーケース」みたいだった。

今日は遅番だから、ミヤオ探しのポスターでも作ろうかなあ。よく電信柱に貼ってあるような、ね。と言ってもスマホにある画像が全て。

そうだ、ネットか何かでそういう迷い猫のサイトがあるかも!ググったら出てくる出てくる…。あたしは片っ端から書き込んで、画像を貼り付けていった。

ミヤオのいない部屋はやっぱり殺風景で、あたしは落ち込んでいた。けれども「そんな落ち込んでる場合じゃない」と自分に発破をかけて、バイトへ行く支度を始めた。

店長は、ちゃんと憶えてくれていたみたいで、腫れものに触る、と言ったら大袈裟だけど、かなり優しく接してくれた。

「要ちゃん、大分元気出て来たみたいだな。何か手掛かり、というか良い情報は入って来た?」

「ここに来るまで、迷い猫サイトに書き込みをしてました」

「そうだよなあ、今やネットの時代。歩きスマホで、貼り紙なんて見てないよな」

「あたしも最初は、捨て看板みたいな貼り紙を使ってみようとしました」

あたしは苦笑いをしながら頭を掻いた。

雨は一段落して、雲間からは時折、優しい陽射しが差して来ている。冬の雨は精神的に良くないみたい。あたしは店の入り口から差し込む、わずかな光を眺めながら、ミヤオが冷たい雨を自力で凌いで元気でいるように、頭の中でお祈りの言葉を繰り返した。

そして、仕事中だけど、やはり「探し猫サイト」に何か返信が無いか、ちょくちょくスマホを眺めていた。店長は見て見ぬ振りをしてくれていたみたいで、心底ありがたく感謝した。

「本当に優しい人だから」

あたしは店長にも感謝の気持ちを込めて、頭の中でお祈りをした。

つづく