雨模様7
冬の夕暮れは早い。水銀灯の街灯が冷たい影を作る中、あたしは家路を急いだ。途中で何度も立ち止まり、スマホを眺めてみたが一向に変化は無かった。
いつもの長い階段を登って部屋の中に入ると、ヤキモキする心を抑えきれず、あたしは「つばくろ」さんにもう一度メッセージを送ってみた。
すると、どうだろう。返信が返ってきた。
「良かったらチャットでお話ししませんか?」
あたしはもちろん、お願いしますと返信した。
「初めまして、つばくろです。恐らく阿修羅さんの飼い猫のミヤオ君は僕が預かっています。」
「初めまして、阿修羅です。本当にありがとうございました。一刻も早くミヤオを抱きたいです。」
暫く返信が無かった。
因みに阿修羅というのはあたしのハンドルネームで、ちょっとふざけて「何だか強そうだし…でも阿修羅なんて、顔も知らない人はどう思うかしら」と思いつつ、いたずら心でいつも固定で使っている。
と、チャットが始まるような画面に切り替わった。
「つばくろさんがシークレットチャットルームを作り、あなたの参加を待っています。」
何でシークレットにしたのか
見当もつかなかったが、そのチャットルームに「全てをお読み頂き、同意するという所にチェックを入れ、参加するというボタンをクリックして下さい」とやや大きなフォントで書かれている。
何だか悪い予感がしなくもないけど、あたしは参加するボタンをクリックした。
画面は真っ黒に暗転し、何だか一昔前のコンピュータのようなグリーンの文字で「ようこそ」とだけ書いてあり、カーソルが点滅している。
つづく