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スタートアップの法務支援サービス「Startup B」ウェイティングリスト登録受付開始のご報告と事業紹介


1 はじめに

 はじめまして。京都大学法科大学院 / 株式会社Startup B 代表の中野雅司と申します。
 「スタートアップが法律で減速しない社会を」というミッションのもと、若手弁護士がスタートアップ企業に週1日~の部分出向という形で参画するための仲介プラットフォームを構想しています。
 ウェイティングリストの登録受付を開始いたしましたので、ご興味を持っていただけましたら、下記フォームよりご登録いただけますと幸いです。

 この登録をもって契約が確定したり、予約が保証されるわけではございませんが、ご登録いただいた企業の方から順に整理番号を発行し、希望されるタイミングで優先的にサービスをご提供できればと考えております。

2 スタートアップ企業の方々からお聞きした法務課題

(1)課題

①事業内容を相談した際に、「それは○○法に抵触して違法ですね」とだけ回答されることが多く、そのビジネスの根幹を理解した上で、それを適法に実現するための座組まで検討してくれる弁護士に出会うのが難しい

②法務チェックを後回しにした結果、IPO・M&Aのタイミングでバリュエーションが低下するというケースを見て、早い段階で法務対策をしたいと考えているが、そもそも何をどこまで相談すべきか分からない

③出向という形で弁護士に参画してもらうことで、内部に法的知見を持ちたいが、フルコミット(週5日勤務)してもらうにはオーバースペックである

④プライバシーポリシー・利用規約の作成に40万円かけたものの、適正価額だったか分からない

(2)解決方法 ~次世代の法務インフラを~

①事業内容を相談した際に、「それは○○法に抵触して違法ですね」とだけ回答されることが多く、そのビジネスの根幹を理解した上で、それを適法に実現するための座組まで検討してくれる弁護士に出会うのが難しい

     ↓
 外部にいても、単にブレーキをかけるだけではなく、ビジネスサイドを理解した上で適切なアクセルの踏み方を一緒になって考え抜いてくださる方もいらっしゃいますが、そのような方とのがあるスタートアップ企業は必ずしも多くない上、そのような方と巡り合うを引き寄せるための行動量を増やすだけのリソースがあるスタートアップ企業は極めて稀であるように思います。

     ↓
 このような現状を踏まえ、制度的担保により上記不確実性の払拭を目指すのが、Startup Bです。
 すなわち、外部において関わる際には過度にブレーキを踏みがちな方についても、出向という形で内部に参画してもらうことで、挑戦しようとしている事業に対する解像度が上がり、その事業の価値や理念を前提に、一丸となって適切なアクセルの踏み方を考え抜く、唯一無二の相方になってくれると考えています。

②法務チェックを後回しにした結果、IPO・M&Aのタイミングでバリュエーションが低下するというケースを見て、早い段階で法務対策をしたいと考えているが、そもそも何をどこまで相談すべきか分からない

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 BUSINESS LAWYERS様の『ベンチャー・スタートアップ法務の特徴と業務の効率化』という記事にも、以下のような一節があります。
 「スタートアップ企業等において完全に外注することが難しい業務として、論点(対応が必要な業務)の抽出作業が挙げられます(念のため論点抽出の段階から外部の法律事務所に協力してもらうことも可能ですが、外部の法律事務所は基本的には相談を受けてからでなければ動き出せず、また、相談の窓口となる法務担当者を通してしか事実関係を確認できないため、その意味では完全に外注することは難しい業務といえます)。…(中略)…論点の設定がなければそもそも手段の議論も出てきません。」

 この点について、ヒアリングスキルが格段に高く、外部にいながら潜在的な法務リスクまで解消し切ってくださる方もいらっしゃいますが、そのような方とのや、巡り合うを引き寄せるための行動量を増やすだけのリソースについては、①の場合と同様であることと思います。

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 このような状況を踏まえ、制度的担保により上記リスクの低減を目指すのが、Startup Bです。
 すなわち、外部からでは把握することのできない、スタートアップ企業自身が気付いていない法律問題についても、出向という形で弁護士が内部に参画することでこれを発見することができ、早期解決に向けた手段を講じることもできると考えています。


③出向という形で弁護士に参画してもらうことで、内部に法的知見を持ちたいが、フルコミット(週5日勤務)してもらうにはオーバースペックである

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 従来の企業出向は、主要なクライアント(大手企業)とのアライアンス強化のために行われることが多く、近年見られるようになったスタートアップ企業への出向も、シリーズB以降のフェーズでの上場支援等が主目的となっているため、いずれもフルコミットが前提になっていました。
 他方、新しい領域に挑戦するスタートアップ企業が増加し、より早いフェーズから知財戦略やルールメイキングに向き合っていく必要性が高まる中で、フルコミットに限らない、柔軟な企業出向のオプションが求められるようになっていくと考えています。

     ↓
 このような状況を踏まえ、週1日~の出向仲介プラットフォームを提供するのが、Startup Bです。
 これにより、業種・フェーズ等により複雑多岐にわたる法務ニーズそれぞれに対し、適切なソリューションを提供することができると考えています。

④プライバシーポリシー・利用規約の作成に40万円かけたものの、適正価額だったか分からない

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 もちろん、当該企業が始める事業において、個人情報の収集・活用方法が格別複雑であるといった場合に、十分なヒアリングを踏まえて、オリジナリティの高いプライバシーポリシーを作成したということであれば、40万円という費用についても、適切であったといえるかもしれません。ですが、このような事情がなければ、類似企業のプライバシーポリシーや雛形の微修正に過分なコストをかけたことになってしまいます。

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 このような状況を踏まえ、スタートアップ企業がJカーブの成長曲線を描くために、本来かけるべきところにリソースを注ぐことができる環境の整備を目指すのが、Startup Bです。
 上記事情がない中で、同額を使用するのであれば、仮に半日あたり3万円で出向してもらうような場合であっても、13回の勤務の中で、自然に事業の解像度が高まった状態でプライバシーポリシー等を数時間で作成し終えた上に、許認可の取得検討やSOの設計、知財戦略の立案や労務体制の整備など、他の法的課題の解決さえも期待することができます。

3 法科大学院の友人とよく話しているキャリア課題

(1)課題

(2)解決方法 ~脱運任せ・脱縁任せ~

 このような状況を踏まえ、週1日~の部分出向という選択肢を創出するのが、Startup Bです。

4 サービスの詳細

(1)適法性

 有料職業紹介事業 / 無料職業紹介事業を行うためには、厚生労働大臣の許可が必要(職業安定法30条1項 / 同33条1項)であり、前者については、「資産…の総額から負債の総額を控除した額…が500万円…以上であること」(※1)が許可基準になっています。そのため、エクイティで500万円の資金調達を行うまでは、令和3年11月22日に公表されたグレーゾーン解消制度の回答(※2)や厚生労働省が公開している基準(※3)等を参考に、許可が不要となるスキームで募集情報等提供事業を行うと共に、令和4年の法改正を踏まえ、届出(同43条の2第1項)を行います。
 また、令和3年2月12日に公表されたグレーゾーン解消制度の回答(※4)等を参考に、弁護士法72条に違反しない態様でプラットフォームを運営いたします。

※1:https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001081053.pdf
※2:https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/211122_yoshiki.pdf
※3:https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
※4:https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/210212_yoshiki.pdf

(2)よくある質問

若手弁護士に任せても大丈夫なものですか?

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 たしかに、必ずしも専門性が高いとは限らないのですが、従来のフルコミット出向とは異なり、週1日~の部分出向であれば、若手弁護士は、日々の大半を所属事務所で過ごすことになり、経験豊富な先輩弁護士に適宜助言をいただける状況にあります。(Startup Bのような新しいプラットフォームを活用して能動的にキャリア形成を試みる若手弁護士は、将来的に所属事務所に多大なる貢献をする蓋然性が高いので、上記お力添えが回り回って還元されていくというサイクルが生まれるのではと夢描いています。)

 また、ある案件について、包括的に1000万円で外部委託するよりも、同案件のうち専門性の低い8割を200万円で内部処理した上で、残る2割について800万円で外部委託した方が、先方にとっての同案件価値も4倍となるため、対応の速度や質の向上も期待することができます。このように、一部専門性が高く自身で取り扱えない部分がある場合であっても、それがどこなのかを棲み分ける能力は有しているため、若手弁護士が法務部的な役割を担うことも期待することができます。

顧問契約との違いは何ですか?

     ↓
 日本弁護士連合会(日弁連)が全国の弁護士に行ったアンケート調査によると、中小企業を対象とした顧問料の最頻値は5万円であり、その業務範囲についてのアンケート調査では、「月3時間程度の相談については月額顧問料の範囲とする」という答えが59.9%、「調査を要せずすぐに回答できるものまでを範囲とする」という答えが34.5%となっています。すなわち、契約書レビュー等、個別の案件については、別途費用が必要になる場合が多いということになります。

 そして、スタートアップ企業では、月ごとの法務ニーズにバラつきが大きく、顧問料は支払ったものの、弁護士に実働してもらわなかったという月も多くなってしまいがちです。 
 これに対して、Startup Bでは、報酬を支払ったものの実働はないといった状況は生じず、法律家の立場から、事業推進にも寄与します。

 Beyond Next Ventures様の『スタートアップで働く弁護士のまなび場』という対談記事でも、「スタートアップの中で弁護士ができることは?」という趣旨の質問に対して、以下のような回答がなされています。


タイムチャージとの違いはなんですか?

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 タイムチャージとは、着手金・報酬金方式とは異なり、弁護士の稼働時間に比例して費用が算定される料金体系のことをいいます。
 大手法律事務所から独立し、スタートアップ向けの法律事務所を立ち上げられた勝連先生は、noteにて、以下のようなご意見を述べておられます。

 「企業法務の弁護士は『タイムチャージで1時間何万円です』という報酬設計が多いのですが、それだと弁護士に効率化するインセンティブが出づらいので、イマイチだと思っています。これは、弁護士にとっても、クライアント企業にとっても良くないことです。」

 タイムチャージでは、制度上、業務効率化のインセンティブが働きにくい分、外部で弁護士が何にどのくらいかけているか分からない状況が不適切であるという見方もあるのに対し、Startup Bでは、内部で弁護士がスタートアップの一員となって活動する環境を提供することで、上記問題の解決を試みています。

 また、ビジネス+IT様の『「まったく儲からない」、トップ弁護士がスタートアップ支援に情熱を注ぐ理由』という記事でも紹介されている通り、「スタートアップ支援は法律事務所の案件としては儲からない…(中略)…というのが定説」とされる中で、敢えてStartup Bに登録した弁護士は、

・今後の日本を支えるスタートアップの力になりたい
・代表の理念に共感した
・その業界に対する解像度を高めて同業界の力になりたい

といった強い思いを持っているため、能動的に選択したスタートアップにおいて、高い熱量をもって活動することが期待できます。


5 おわりに

 人口が日本の約3分の2であるはずのドイツにGDPを抜かれ、GDP成長率も165位(171位とする見解もある)となり、国内で社会課題が増加・深刻化することが明らかな中、これを解消するための希望の光はスタートアップにあると考えています。
 そして、下記ⓐ~ⓒの背景に鑑み、本当の意味でスタートアップに理解のある法律家がもっと増えていく必要があると感じています。

ⓐ国内スタートアップへの投資額は、2013年から2022年にかけて10倍になっており(※5)、岸田政権も「スタートアップ育成5か年計画」の実現に向けたロードマップを敷いている(※6)

ⓑ生成AIの影響で業務効率化が進み、少人数でも高い業績を叩き出すスタートアップが多数出現することが予測される

ⓒ技術革新の加速に伴って、国がトップダウンでルールを決めるガバナンスモデルが限界を迎え、アジャイルガバナンス(※7)実装の機運が高まりつつあり、少なくとも、部分的にルールメイキングが民間に外注されるようになる(≒高度な専門性を要するスタートアップの、有識者会議等における役割の重要性が高まる)

※5:https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/meti_startup-policy.pdf
※6:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/sdfyplan_roadmap2022.pdf
※7:https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220808001/20220808001.html?from=mj


 7月に司法試験の受験を終えた後、スタートアップコミュニティに足を踏み入れてから、1番多く頂戴した言葉がこれでした。
 スタートアップが法律で減速しない社会を、何なら法律家がスタートアップを加速させられるような環境を、少しでも早く実現できるよう、若輩者ながら、全力で取り組んで参る所存です。応援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


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