流行りの曲を歌いながら、楽しくロシア語の発音練習

ロシア語の発音は、日本語にとても近いものがあると私は思っている。少なくとも英語よりは近い。しかし、なかなか英語教育で叩き込まれた『子音発音の癖』から抜け出せないと、ちょっと難しく感じるのかもしれない。

『外国語と言えば英語的な子音発音!』と思い込んでいる自分の口を、一旦リセットさせるためにおすすめするのはこちらの一曲。
Ольга Серябкина  «Дядя Гена»

Ольга Серябкина - Дядя Гена (Премьера клипа, 2022) / YouTubeチャンネル『Ольга Серябкина』より

Заходит утром в кабинет
Он крутой бизнесмен
Ну, кто не знает дядю Гену?
Он почти супермен
А вечером душа компаний
Все так любят его смех
До дна он рюмку выпивает
За здоровье и успех

[Предприпев]
У дяди Гены нет Шенгена
Вот такая вот проблема
У Парижа и у Вены
Нет такого дяди Гены

[Припев]
У дяди Гены нет Шенгена
Грустит Париж, скучает Вена
Но для Гены не проблема
У него всё tutto bene
А а а а а
У у у у у
Е е е е е
Охуенно

[Аутро]
Гена, Гена, no проблема
Море, море по колено
Гена, Гена, no проблема
Море, море по колено

genius.comより

Ольга Серябкина(オリガ・セリャプキナ)がどんなアーティストなのかというと、元々Максим Фадеевという音楽プロデューサーが立ち上げたMALFAというレーベルにて、СЕРЕБРОという三人組ガールズグループとして活動をしていて、2016年頃に大ヒットを飛ばしていた。珍しくアジア市場を意識したプロモーションであったからか、よく中国のテレビ番組にも出演していた。

特に人気の高かったメンバーの一人Елена Темниковаがチームの人気絶頂期に脱退した時には、『もしかしてセリャプキナは、彼女の方が人気だということが気に入らなくて追い出したのでは?』という噂が立つこともあったが、当時のСЕРЕБРОの楽曲と現在の彼女の楽曲を聴き比べればなんとなく見えてくるところがある。СЕРЕБРОというプロジェクトは、Ольга Серябкина作曲の楽曲をベースにМаксим Фадеевがビジネスパートナーとして二人三脚で運営していたというのが実情であったのかもしれない。
MALFA所属の個人アーティストMOLLYとして活動もしていた。


それでは、歌いながら楽しくロシア語の発音練習をしてみよう~

まず、この曲の歌詞をみると、日本語の『あいうえお』的なはっきりした発音がロシア語にもあるのだと分かる。ロシア語の女性形の単語や格変化をして『- а』で終わっている場合には、かなりしっかり『あ』と発音していいのだ。

歌詞も曲調も単純なので、口の中をマッサージするようなイメージで一つ一つの単語の発音を真似ていくと基本のロシア語の発音のイメージが分かってくると思う。

ロシア語の『у』は、日本語の『う』よりも強く深い『う』の音になる。ありがとうと言う時の『う』はほぼ消えかかった音。日本人がロシア語を話すときには、意識して『у』の音を出すとちょうどいい具合になる、とロシア人の先生から言われたことがある。

次に注目したいのがロシア語で『このような』という意味の『такой』。その生格あるいは対格形にあたる『такого』が歌詞の中に出てきている。

Нет такого дяди Гены
『~が(存在してい)ない』という意味であるから、ここの文法構造は、Нет +生格をとっている。
(例)Там нет меня.  そこに私はいません。Тут нет бумаги.  ここには紙がありません。

読み方としてふりがなをふるならタコイ、タコヴァ。
しかし私も含め、日本人は日本語の癖でどうしても『タッコ!イ』『タッコー!ヴァ』と発音してしまいがちだ。小さいツ、余計な抑揚が入らないように、落ち着いて穏やかに『タコイ』『タコーヴァ』と発音できればいいと思う。

Ольга Серябкинаの楽曲は、初心者でも、たとえ歌詞の意味が分からなくても、ロシア語の音の出し方を感じ取るには参考になると思うため、おすすめしたいところである。
ちなみに、今回の歌詞に出てくるОхуенноという単語はきれいな言葉ではないため、発音練習のためだけにご活用あれ(笑)



余談

ミュージックビデオの始まりの会話

Геннадий Викторович (дядя Гена)に秘書から電話が来る。
『投資家たちが来ました。』『分かった、今行く。』
運転手にビジネスセンター・モスクワシティへ行くよう指示するが、うまく聞き取れない。
『どこへですか?』『В стеклянную шаурму.』『あぁ、モスクワシティですね、分かりました。』

Шаурмаというのはロシア定番のファストフードで、日本語ではシャワルマと呼ばれている料理のこと。どんな街角にもシャウルマのお店は必ずある。
ガラス張りの高層タワーを『ガラスのシャウルマ』と表現したところから、ゲーナおじさんが本物のエリートビジネスマンであり、東京の六本木ヒルズならぬ、モスクワのモスクワシティが彼のいつもの仕事場であることが分かる描写である。


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