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vol.3 ゆっきーなのこと

結婚だったり、新しい住まいへの引っ越しだったり、転職だったり。
私はこれまで節目節目で、本当に運良く、とても良い人に巡り合うことが多かったように思う。

でも節目でいい人に会えて…と同じこと言う人が他にもいるんだな、と分かり始めてからというもの、節目でいい人に出会ってるんじゃなくて、いい人との出会いが、人生の節目節目を作っていくものなのかな、と思うようになった。

ウェディングプランナーのゆっきーなも、大事な節目を作ってくれたひとり。

私はそもそも結婚が決まる前からも、決まった後も、結婚式を挙げるということが全然頭になかった。

私のことをよく知る、以前の職場でお世話になった先輩に「結婚式をした」と話したら「うそだろ」と言われたくらい。「おまえどんな顔で結婚式したんだ」とも。ほんとにその通りだと思う。私が結婚式をするなんて、自分でも本当に意外だった。
ちなみに、その先輩も式は挙げていない。類は友を呼ぶ。

とは言え、いろいろ思案した結果、式を挙げようということで動き始め、式場選びを始めた中で早々に足を運んだのが横浜のとあるハウスウェデング。そこで案内を担当してくれたのがゆっきーなだった。

迎え入れてくれた時から笑顔を絶やさず、落ち着いていて、とても感じが良かった。言葉遣いも所作も綺麗で。いろんなことをとても丁寧に説明してくれる、でも一方的にはならず、こちらの話も聞きながら、ペースを合わせてくれるように思えた。

そんな人に早々に出会ってしまっただけに、それが標準的なウェディングプランナーではないんだということに気付いたのは後々になってから。

ゆっきーなの話を色々聞いていると、逆に何だか他の会場も見てみたいね、という思いが増してしまって、結局ゆっきーなに出会ったこの時には何も決められなかった。
むしろ、夫とただでさえ休みが合わない中で他の会場も検討するには、きょうという日も無駄にしてられない…という話になって、空いてる日程の確認や見積にもたどり着かないまま、「ちょっとこの後予定があって」と早々に切り上げて出てきてしまった。今思えば、茶化しにでも行ったようで、とても失礼な対応だったと思う。この時もゆっきーなは嫌な顔一つせず、最後も丁寧に送り出してくれた。
後に、この時の話をする機会があって、「こちらでは式を挙げてもらえないと思った」と話していた。私も同じ立場だったらそう思ったと思う。

その後、他にもいくつかの会場に話を聞きに行って、別のところで、ここにしようか、と決めかけたこともあったのだけど、ゆっきーな以上のプランナーさんはおらず、ほんとにここでいいのかなぁ?と何か引っかかるものがあった。
これから式を挙げるまで、毎回この人と顔合わせて打ち合わせをふるのか…と思うと、嫌気が差すとまでは言わないけれど、なんかちょっと気が滅入るなぁ、と思ってしまう人ばかりだった。

ウェディングプランナーって、響きは良いし、人生に1度(1度じゃなかったとしても数えるくらいしかない)晴れの日に立ち会えるとか、とても華やかなで幸せな仕事のように思えるけれど、実際は契約をとらなきゃいけない、数字をあげなきゃいけない「営業職」の役割が大きいし、とてもシビアな世界じゃないかと思う。
それを考えれば、ゴリゴリ営業するのも、今日成約すれば…!みたいな特典をつけて、契約を迫る人がいるのも頷ける。契約してもらえなかったとしても、その人たちのために割いた時間は戻ってこない。

結局、もう一度ゆっきーなところに戻って話を最後まで聞いて、それでどうするかを決めたい、と思うように。
またゆっきーなに案内してほしい、と無理を言って、週末の忙しい時間帯に何とか予定を空けてもらって、前回切り上げてしまって聞けなかった話を聞かせてもらうことにした。

あーやっぱり、この人だったら何もかも安心して任せられるな、と出会った中で唯一思えるプランナーさんだった。そしてもうどんなに時間をかけて他をあたっても、そんな人には出会えない気がした。そもそも、その式場だってたくさんのプランナーがいて、最初にゆっきーなが案内してくれたのも本当に偶然でしかない。
もしここで式を…となった場合には、ゆっきーなにずっと担当してもらえることも確認できて、こういう出会いもご縁だな、と思って決めることに。
この式場に決めました、と言うより、ゆっきーなにお願いすることを決めました、という気持ちだった。

式まであまり日がなくて、打ち合わせはかなり頻繁にぎゅぎゅっと日程がつまっていた。普通だったら2日に分けるものをまとめて1日で打ち合わせをしたりもした。
せっかくだからもう少しゆっくり時間をかけられたら良かったのかも、と今になって思ったりもするけど、毎回の打ち合わせはとてもスムーズで、本当に本当に頼れるプランナーさんだった。

4/20に無事に式をして、お客さまのお見送りも終えて控室に戻ってから。ゆっきーなが実は私たちの式を最後にプランナーを辞める、という話を聞いた。
ゆっきーな自身も結婚して、5月にその式場で式を挙げるということは前々から聞いていたのだけど、どうやらそれを機に、あくまで退職ではなく、プランナーから離れる、ということだった。
その式場での勤務は6月いっぱい、そして、そもそもプランナーとして担当する式は3月いっぱい、4月以降は担当しない、ということになっていたらしい。
何だかそれを聞いて、ゆっきーなに担当してもらえて幸運だったなぁと改めて思うと同時に、こちらが無理を言って、余計な仕事を増やしてしまったのかなぁと申し訳なくなった。
こちらもなるべくスムーズに…迷惑をかけないように…とは思ってたから、負担が最小限だったのなら良いのだけど…。

同じ年の12月。式を挙げた人を対象に、とクリスマスパーティーの案内があった。もうゆっきーなは別の式場に勤務しているのに、住んでるところとも逆方向なのに、わざわざ足を運んでくれた。しかも半休をとって。

ゆっきーなに会ったのはそれが最後で、も5年以上前のことになる。でも、今から1年ほど前に、ゆっきーなからの手紙を受け取る機会があった。式場のイベントに家族揃って参加した折に、スタッフの人から、ゆっきーなから預かってる、と渡してもらった。

そこには、一度プランナーから離れたけれど、出産を経て、またプランナーに復帰したことが書いてあった。
結婚式は土日や祝日に主に行われるだけに、子育てしながらだと、それまでとは違う大変さもあるだろうな、と思いつつ、ゆっきーなに伴走してもらって式の準備を進められる人、式を挙げられる人が私たちで最後にならなかったんだな、幸せな人たちがこれからも増えるんだからよかったな、と思った。

ここのところ、コロナ騒ぎで、結婚式は相次いで見合わせになってるとも聞く。なかなかこれまで通り、対面での打ち合わせは進まなかったりするのかもしれない。

もうすぐ、ゆっきーなが式をしてから6年を迎えるお祝いも伝えつつ、手紙でも書いてみようかな、と思う。書いていなかった返事も兼ねて。

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