梅毒の治療について

この記事では、梅毒の治療についてまとめます。
※神経梅毒や先天梅毒(赤ちゃんの梅毒)の場合は治療内容が変わってきますが、この記事では扱いません。

さて、梅毒治療の基本はペニシリン系の抗生物質です。ペニシリンは70年以上前から梅毒の治療に使われていますが、今もよく効きます(これまでにペニシリンが効かない梅毒は報告されていません)。そのため、アレルギーなどの理由で使えない場合以外は、ペニシリン系の抗生物質で治療します。

日本以外のほとんどの国ではペニシリンの注射で治療するのですが、日本では注射薬が認可されていないので内服薬(飲み薬)で治療します。
プロベネシド(商品名 ベネシッド)を一緒に飲む方法もありますが、一緒に飲んでも飲まなくても治り方に大きな差はないと考えられていますので、これはそんなに気にする必要はありません。

治療の期間は、梅毒のステージによって変わってきます。日本の学会のガイドラインには
1期:2~4週間
2期:4~8週間
3期:8~12週間
と書いてあります。かなり幅がある書き方なので、実際に処方される期間は病院や医師によって結構変わってきます。ただ、これ以上の期間だらだらと飲み続ける必要はないでしょう。

アレルギーなどの理由でペニシリンが使えない場合には、別の種類の抗生物質を使用します。飲み始めは問題なくても、飲み続けていると蕁麻疹などの症状が出てくることがあるので注意が必要です。梅毒治療の場合は、飲み始めてから1~2週間で薬による発疹が出やすいため、このくらいの時期に発疹が出た場合は担当医と相談することが大切です。発疹の原因が薬の場合、無理して飲み続けると悪化していく可能性があります。

ちなみに性病治療でよく使われるアジスロマイシン(ジスロマック)ですが、効かない菌が増えてきたので梅毒の治療には使用しません(よほど特別な事情があれば使うかもしれませんが、そういう特殊なケースはほとんどないでしょうし、これまで経験したこともありません)。
実際に「梅毒と診断されてアジスロマイシンを飲んだけど治らない」と言って受診される方も時々います(皆さんペニシリン系の薬で治りました)。

「抗生物質が効かない梅毒の菌が出てきた」という文章をネット上でたまに見かけるのですが、「アジスロマイシンが効かない梅毒」のことではないかと思います。最初の方に書きましたが、ペニシリンなどの薬は今もよく効きますので、その辺は心配しなくて大丈夫です。

ここから先はおまけの話ですが、上で書いたように、日本以外のほとんどの国では注射での治療が基本です。一番多い1期や2期の梅毒であれば、なんと注射1回で治療は終わりなんです。週1回とか月1回ではなく、1回だけです。たった1回。1回だけなので、飲み忘れなどの心配もありません。
※3期梅毒など、感染してから時間が経っている場合にはもう少し多めに注射する必要があります(それでも日本の治療よりは圧倒的に楽です)。

ペニシリンの注射薬は別に特別なものではありません。海外では普通に使われています。日本でも昔は使えていたようですが、アレルギーによる死亡事故が起きて使えなくなってしまいました(かなり昔の話なので、詳細は分かりません)。最近梅毒が増えて、日本でも注射薬を復活させようとする動きがありますが、まだ具体的な時期などは決まっていません。1日でも早く注射で治療できるようになってほしいものです。

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