小説妄想 占い編1

(キャラクター名 小森涼<すず>と佐竹広樹)
(男百合キッツな人はブラウザバック)

桜前線は例年より早めに北上し、もう関東周辺では葉桜の時期。それでも横浜の人々はまだ上着に軽めのコートを着込んでいる。
 「ここまで出てくれば横浜すげー人多いな!」
 札幌から友人の広樹が住む横浜まで旅行に来た涼は、人混みで賑わう横浜中華街に歓声を上げた。
 今朝羽田で仕事終わりの広樹と一緒に彼の家まで帰宅して荷物を置いたばかりの涼は、すぐに広樹と家を飛び出して横浜中華街までやって来ていた。
「僕も中華街まではあんまり観光してなかったからびっくりだ」
 広樹はさっきまで夜勤明けで頭が鈍かったことが嘘のように、遠くまで続く人混みの波を見通して目を輝かかせていた。
「ヒロ、とりあえず歩いて色々見てみよ!」
「うん」

 横浜中華街の中でも人の少ない細道にある『醉楼』という中華屋でお腹を満たして、二人はまた中華街へ繰り出していた。
「中華街って中華料理店のイメージしか無かったけど…」
 楽しげに歩きながら涼は辺りを見渡した。
「占いの店も結構あるよね」
 胡散臭い占い師の顔写真が並んだ店を見て広樹は苦笑いした。
「職場の先輩は、横浜中華街行くなら中華食べて、占い行くまでをオススメしてたよ」
「そんな評判良いんだ!」
 涼は占いは好き。自分では占いに関して全く分からないが、占い師に授けてもらう言葉には大きな魅力を感じている。
「じゃあどっちの方が結果がいいか、勝負しようよ」
「いいよ、ちょっと何言われるか分からなくて怖いけど…。僕の手の生命線、凄い短いんだ」
「知ってる。逆に俺めっちゃ長いの!もう手首に届きそうなくらい」
「あとスズの手のひらって凄いいっぱい線があるよね」
 お互いの手を見比べたり触ってみたりして、広樹はまじまじと手の形の違いを実感していた。涼の指は細くて長め。そして触ってみると、見るだけでは分からない皮の厚さを感じられる。でも、とてもしなやかで綺麗な手。よく見るとちょっとだけ中指が薬指側に反っている。当たり前だが本当に骨から反っているようだ。
 「ここ入ってみよう」
 広樹が涼の手に集中して前も見ずに歩いていた間に、涼は先導して丁度いい占いの店を見つけてくれたらしい。
 広樹はまたやってしまったと自戒しながら、涼が見つけてくれた店に2人で並んだ。

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